絵画のような絶景に出会う。長野県阿智村「富士見台高原」 の青と白の稜線へ
こんにちは、トラベルライターの土庄です。近頃ではもっとも積雪の多い今シーズン。冬の絶景を求めて、登山や旅行に飛び回ってきましたが、4月も近くなり、次第に暖かさも出てきましたね。
しかし「まだまだ冬が終わってほしくない……!」と思う自分がいます。そこで、せめて冬の余韻を楽しむように、過去の雪山登山をレポートしたいと思います。
ご紹介したいのは、中部地方の冬の名山「富士見台高原(ふじみだいこうげん、標高1739m)」。中央アルプスの最南端、恵那山(えなさん)に隣接している、たおやかな山です。
雪山登山に適した中部地方

山についてご紹介する前に、少し広い中部全体のお話から。まず雪山登山は当然ながら、雪のない時期の登山と比べると、求められる体力やスキルが上がります。
リスク低く登山を楽しむためには、山の難易度を下げるのがもっとも有効。その観点で見たとき、中部地方はとても魅力的です。

中部地方には、標高が高すぎず低すぎない、ちょうど良い山が多くあり、個々の表情も豊か。積雪量も選ぶ山域によって異なるので、直近の積雪状況を考慮しながら登山計画を立てられます。
雪山入門者のころから今まで、30座以上は中部の雪山を登ってきましたが、まったく飽きることのない奥深い自然も魅力のひとつだと感じます。
ロープウェイでアプローチ!美しい恵那山に出会う

バリエーション豊かな中部地方の雪山の中で、今回ご紹介する「富士見台高原」は入門者から高い人気を誇っている山です。その理由のひとつが、アプローチのしやすさ。
冬にはスキー場として営業する「ヘブンスそのはら」が運行している富士見台高原ロープウェイとリフトを使って、登山口までアクセスできます。登山口の標高は約1400m。

ロープウェイとリフトを使えば、山頂までのラスト350mという標高差まで楽々たどり着くことが可能です。そして山頂近くまで、冬期閉鎖となっている林道を使って進んでいくため、遭難する心配もありません。
12月〜3月には積雪があるので、ズボズボと足を取られますが、誰も歩いていない場所を踏みしめているこの感触が雪山の醍醐味でもあります。

リフトを降りて林道へ接続すると、そこには冠雪した「恵那山(えなさん、標高2291m)」の山容が。日本百名山のひとつに選ばれている、優美なたたずまいを見せてくれる山です。
圧倒的な迫力と青空に輝く白銀の姿に、思わず息を呑んでしまいました。これから続いていく「富士見台高原」の絶景への伏線になっています。
絵画のような霧氷の絶景が続く!神坂峠へ

林道が終わる神坂峠(みさかとうげ)までは片道約3km弱の道のり。早朝の静寂な道を一歩一歩進み、標高を上げていきます。
半分ほど来たでしょうか、ふと頭上を見上げると驚くべき光景が広がっていました。
なんとカラマツの木々が真っ白な化粧をまとい、視界全体に見事な霧氷(むひょう)が。霧氷とは、空気中の水分が木々に着氷する、雪山の風物詩と言える現象です。

青空と樹氷の色彩の鮮やかなコントラストと、幾重にも重なる繊細な雪枝に思わず見惚れてしまいました。ハードルが高いと思われがちな雪山ですが、一歩踏み出せば、綺麗な白銀世界が待っています。
また霧氷は限られた条件下でしか形成されません。自然との一期一会な出会いも、筆者が山に通う理由です。これほど素晴らしい絶景を見せてくれた、山の神様に感謝!

神坂峠が近づくと、カラマツ林の樹林帯から笹原へと、一気に植生が変わります。山の世界で言うところの「森林限界」。高木が生育できず、森林を形成できない限界線です。
峠から登山道へ入り、山荘の萬岳荘(ばんがくそう)を通り過ぎると、いよいよクライマックスを迎えます。空に手が届きそうな山岳情緒もたまりません。
リトルモンスターも!劇的な「富士見台高原」の稜線へ

稜線までのアプローチの途中には、リトルモンスターの樹氷を発見!奥羽山脈をはじめとして、限られた場所でしか見られない巨大樹氷も鑑賞することができます。
長野県阿智村と岐阜県中津川市の間の、ちょうど風雪の通り道となるこの場所。この辺りでも一段と厳しい気候条件を物語っているようです。雪山に登っていると、自然の美しさと荒々しさを、表裏一体に感じることができますよ。

避難小屋・神坂(みさか)小屋を越えるとラストスパート!360度の大展望が広がります。南アルプスや中央アルプスなどの白銀の峰々、中津川の町並み、そして背後にどっしり座る、雄大な恵那山。
「富士見台高原」は、林道からゴールの山頂まで実に景色変化に富んでいて、冬の情緒が詰まった素晴らしい雪山でした。雲から覗く青空も、山の上の壮大な臨場感を高めてくれます。

山頂付近の景色の特徴は、どこか”メルヘンチック”ということ。ゆったりと広がる笹原と、どころどころ点在するカラマツ。ともに雪化粧することで、まるで物語の中に迷い込んだような世界観を見せてくれます。
それでは、ひと休憩したら下山を。行きには歩いていない、恵那山へトラバース(山の斜面を水平に移動)する谷ルートを選択しました。
野趣あるトラバースを楽しむ。雪山の景色変化

幅の狭い登山道は、雪が積もると急斜面の道へと変わります。なかなかスリリングですが、適度に足が埋まって固定されるので安心しましょう。より冒険感のある登山を楽しめるのも、雪山の魅力と言えるでしょう。
トレース(先行者の足跡)もなく、積雪後は誰も歩いていないようです。このまっさらな道を、自分たちが開拓者のような気分で進んでいきます。
午後に入ると少し曇りがちになってきましたが、それはそれで水墨画のような景色を楽しむことにしました。

その道中、最後に晴れた風景がこちら。凛と立ち並ぶカラマツ霧氷と、雲の彼方の中央アルプスの山並み。やはり最後まで絵画のような面持ちで、思わず歩みを止めてしまいました。
「山の世界はなぜ、これほど心を惹きつけるのだろうか?」そんな問いがいつも頭をよぎります。まだ確固たる答えは出ていませんが、山で出会う宝物のような一期一会の景色が、次の登山の原動力となっているのは間違いありません。

再び展望の良い稜線へ出てきたところ、本格的に景色が崩れてきました。山の天候は変わりやすいもの。しかし、それゆえの表情変化を楽しめるので、案外嫌ではありません。
午前より冷え込んだ気温のなか、少し舞う雪を眺めながら、登山道を後にしました。
シンプルながら奥深い「雪山登山」

今回は地元ハイカーに人気の長野県阿智村「富士見台高原」をご紹介しました。
展望が良く、清々しいハイキングが楽しめる山として夏にも人気が高い「富士見台高原」ですが、冬には一段とファンタジックで、つい見惚れてしまう風景の連続でした。
季節によって、山はガラッと趣を変えます。そして冬にはいっそう美しい姿を見せてくれる山も多いものです。
日本は小さな島国でありながら、一生かけても通いきれないほど山の宝庫。今季はもうすぐ終わってしまいますが、「次はどんな雪山との出会いがあるだろう?」とすでに来年の冬へと思いを馳せています。
・名称:富士見台高原
・住所:長野県下伊那郡阿智村智里
・地図: ・アクセス:園原ICを降りてスキー場まで車で約15分、ゴンドラとリフトを乗り継ぎ、登山口から山頂まで徒歩往復3〜4時間
・営業時間:8:15〜15:30(富士見台高原ロープウェイ ヘブンスそのはら)
・電話番号:0265-44-2311(富士見台高原ロープウェイ ヘブンスそのはら)
・料金:ゴンドラとリフトを合わせて大人往復2700円、小中学生1500円
・公式サイトURL:https://mt-heavens.com/
All photos by Yuhei Tonosho