ハチドリの地上絵

ペルーの世界遺産であるナスカの地上絵。この壮大なスケールの地上絵は西暦1年から800年にわたり栄えたナスカ文化の時代に描かれたと言われています。地上絵は動物や植物、直線、幾何学図形などさまざま。

なぜ古代ナスカ人は上空からしか全体像を把握できないような巨大な絵を描いたのでしょうか? 今回は、そんなナスカの地上絵の謎に迫ります。「どのようにして、何のために描かれたのか?」を有力な仮説からトンデモな仮説まで幅広くご紹介!

ナスカの地上絵はどのように描かれたのか?

古代ナスカ人は地表の酸化した砂利(黒っぽい)を取り除き、その下の明るい粘土質の土を露出させるという方法で1000点以上もの地上絵を描きました。以前は、ナスカの地上絵を描くためには、気球などに乗って上空から手助けを行う必要があると思われていたそうです。しかし、ウィニペグ大学の考古学者であり、地理学の専門家でもあるDr.Persis B.Clarksonは「難しい技術はいりません。必要なのは意志です」と言っています。

現在、ナスカの地上絵の描き方には2つの有力な説があります。そのひとつが「種まき応用法」です。複数の人たちが横並びになって、歩幅を合わせながら前進していき、歩幅によって距離を測定しながら均等に絵を描くというものです。しかし、この方法では50メートル以上の地上絵を描くのは難しい・・・。

そこで、もうひとつの有力な説が登場します。それが「拡大法」です。まずは地上絵のモデルとなる原画を描き、それを元にさらに大きな絵を描きます。モデルの絵には支点となる木棒を打ち込み、拡大したい長さの紐と絵を描くためのもうひとつの木棒を取り付ければ、原画とまったく同じ線を描くことが可能になるのです。この方法なら小学生でもナスカの地上絵を描けるとのこと。

ただし、拡大法は紐を真っ直ぐ張った状態でなければ描写できないため、200メートル以上の地上絵を描くのは難しく、200メートルを超える地上絵の詳しい描き方はわかっていません。

ナスカの地上絵は何のために描かれたのか?

「カレンダー説」

ナスカの地上絵を構成する直線には、意図的に太陽と星の動きを表しているものがあり、農業用のカレンダーとして描かれたという説です。ですが、この説だと、他の地上絵の線はいらないですし、何のためにあれほどまでに大きな絵を描いたのかも謎になりますよね。

「雨乞い儀式説」


クモの地上絵

ナスカは地球上で有数の乾燥地帯なので、雨乞いのために描かれたという説です。地上絵の中にクモを描いたものがあり、クモは雨を象徴するものだったと言われています。また、古代ナスカ人が雨乞いの儀式に使っていた貝殻(エクアドル産)が地上絵周辺で多数発見されているんです。

ナスカの地上絵には「水源を確保する」といった実用的な機能はないので、古代の人たちが宗教的な意味合いで地上絵を描いた可能性はありそうですね。ただし、この説だと雨とは関係のない植物や動物などの地上絵をなぜ描いたのか? という謎は残ります。

「巡礼に関する役割説」

古代の人々はナスカの地上絵を歩いて渡り、聖なる場所に向かったという説です。もしかしたら、巡礼地に向かうための目印としてや途中で儀式を行うポイントとして地上絵が機能していたのかもしれませんね。この説もありえそうです。

「水のありかを示していた説」

ほとんど雨が降らないナスカでは、地下水に頼って生活する必要がありました。そのため、水脈や水源を示す目印としてナスカの地上絵を描いたという説もあります。この説もありえなくはないでしょう。

「権力者の埋葬説」

ナスカ文化では権力者が埋葬された際、地上絵をひとつ描いたという説です。ナスカ文化では死者は太陽に帰るとされていて、太陽に向けて地上絵を描いたのだとか。

「UFOの発着場説」


宇宙飛行士(宇宙人)の地上絵

ナスカの地上絵は宇宙人によって描かれ、UFOの発着場になっていたのでは? という説です。ナスカの地上絵のひとつに宇宙飛行士(もしくは宇宙人)を描いたような絵もあります。確かにこの説なら、たやすく200メートルを超える地上絵を描くことができたでしょう(笑)。地球を訪れることができるほどの科学技術を持った宇宙人ですからね。トンデモ説ではありますが、個人的には嫌いではありません。

現時点では、有力な説はあれど、決定的にこの説が正しいと証明されたものはありません。おそらく、ナスカの地上絵はひとつの目的でつくられたのではなく、複数の目的でつくられたのだと思いました。また、時代の移り変わりや気候変動によって、ナスカの地上絵を描く目的が変わった可能性もあるでしょう。

ナスカの地上絵は消滅の危機

降水量が少なく、硬い土壌に土砂が積もるような地形の構造をしているナスカ。地上絵が何千年も残っていて、私たちが目にすることができるのは、この特殊な地形と降水量の少なさのお陰なんです。しかし、年々、トラックの侵入やグリーンピースのパフォーマンス(環境保護を訴えるためにナスカの地上絵を踏み荒らしたりした)によって損傷が激しくなり、消滅の危機に見舞わられています。

余談になりますが、ペルーの先住民は私たち日本人と同じく赤ちゃんの頃、お尻に蒙古斑があります。日本から遠いペルーですが、ペルーの先住民と日本人の原点は同じ民族なんだそうです。そう考えると、古代ナスカ人へ特別な思い(親しい仲間に対する気持ち)がわいてきて、ナスカの地上絵を何としても守りたい気持ちになりました。

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参考
[Archaeology Online/The Nazca Lines: A Mystery on the Plains] [ナショナルジオグラフィック/ナスカ 文明崩壊の謎] [ナショナルジオグラフィック/ナスカの地上絵にトラック侵入、絶えない損傷] [io9/This Greenpeace Stunt May Have Irreparably Damaged Peru’s Nazca Site] [All photos by Shutterstock.com]


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