「昔々、ハワイキという場所から4人の兄弟がアオラキと言う島を見つけてね…」

マオリ族に伝わる昔話。パチパチと燃える暖炉の前を陣取り、キャプテンの話にまどろみながら耳を傾ける。

 

日本人のわたしの耳に入る異国の言葉の異国の物語。

直前まで、ナイトスイミングをしていた身体は冷えてきていて、あたたかいお湯につかりたいと思ってはいるのだがこの場所から離れるのが心もとなくて、勿体なくて、動けない。

ここは、深夜23時のパイヒアの海の上だ。

 

さて、出航です。

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photo by  kerikeriholidaypark.

ニュージーランドは、北島と南島では前者の方が「星空がキレイ」だという意見がありますが、まずは、その噂を検証して参りました。

(どちらも美しいことに変わりはないのですが。)

 

北島の北東部分・The bay of rockへ。

ここは、瀬戸内海のように無数の島が陸を離れずして点在する湾。太平洋と面しており、肥沃な栄養分を蓄えた大海が横たわっているきもちよいプチリゾート地。

 

世界で唯一の海上クルージングユースホステルThe Rock Adventure Cruise

その湾内で一夜クルージングを楽しめる世界初のユースホステルこそが「The Rock Adventure Cruise」。今回ご紹介する宿です。

ポパイのような船長、アイルランドから旅する途中、この海に魅せられてしまった若副船長、そして生活の大半を海に揺られるクルーたち、そして10名ほどの宿泊者とともに出港!

 

こじんまりとしたクルーザーだからといって侮る事なかれ。

フィッシングにシュノーケリング、小島巡りから船上バーベキューに素潜りウニの解体ショーと乗船時間いっぱいイベントが目白押しです。

なかでも、その瞬間にこそクライマックスがあると強く主張したいのが、夜カヌーなのです。

 

ここがわたしの宇宙の真ん中

言うまでもなく、ニュージーランドの夜は限りなく人工灯の影響を受けず、一寸先は吸い込まれそうな闇。

そのなかで、水平線から天辺、そしてもう一方の水平線にまで、す、と伸びる北極星・南十字星・ミルキーウェイ・日本と逆向きの北斗七星…。

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ひとつ盗んでもばれなさそうなほど、あふれて、こぼれ落ちそうな星・星・星。

それを、ゆらゆらと揺りかごのように心地よく身体を揺らすカヌーに仰向けになるだけ。ただ、上を仰ぎ見るだけです。

 

自分の足が、地面についていない状態で、フラフラと心もとない水面で、チカチカ瞬く夜空を眺める間、身体が宙にぼっかりと浮いたように感じるはずです。

二足歩行で地上から首だけもたげて見る星空よりも、宇宙を、頭上に遥か遥か無限にも感じる広がりを想うのではないでしょうか。

 

海中に輝く星々

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photo by yuria koizumi

そして、この近辺の海には、振動を受けて発光する夜光虫の生息地でもあります。

夜の海に、手をちゃぷ、と浸せばそこから逃げるようにチロチロと線香花火のような光が散り散りになるはずです。

 

下も上も、満天の星空。そして、たまらない浮遊感。あなたも、宇宙の一ピースなんですよ、と語りかけられている、おもわずスピリチュアルに身を委ねたくなる不思議な夜がそこには横たわっているはずです。

 

暖炉を囲んでマオリの昔話に耳を傾ける

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photo by A.Davey

と、ここで冒頭に戻る訳です。

いくら夏とは言え、夜の海に漂い、解放さから夜間水泳を堪能しようものならば凍えるような寒さが肌を刺します。

水から上がっても、逃げ場所はなく、冷気がこもる海上をゆらゆら。そんなところに丁度良くありますは、薪式暖炉なのです。

 

皆でタオルをかぶり、パチパチ、パチパチと弾ける火の粉を前に異国の言葉で語られていく伝説のマオリの話。海を知っている、キウイを愛している人間が紡いでいくそれは、まるで口ずさまれた歌みたいに耳に届くのです。

異国の言葉だからか、程よく曖昧で、程よく理解できるようなできないような、まどろんでしまうような心地よさがあるのです。

 

音と匂いは、どんなメディアでもあなたに、届けることができません。

漆黒すぎる、呑み込まれてしまいそうな暗闇も、生き物のように蠢く夜の海の底知れぬ暗さも、その中にあってこそなお一層目映く見える手で掴んですくいあげられそうな沢山の星々も全部、届けることができないんです。

 

あなたが、まるごとその空気を、その時の感覚で持ち帰ってきてほしい。そのことを伝えたくてこの文章を書きました。

なんとなく、日常から目を背けたくなると、目をつむって帰っていける景色があること。その心地よさの風景が一人でも多くの人に届きますように。

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