※2020年8月3日、新型コロナウイルスの影響で、観光収入が経たれたためにハット・リバー公国は解散を宣言。国は消滅しオーストラリアの領土となりました。

皆さんは「未承認国家」という言葉をご存知でしょうか?未承認国家とは、独立宣言をしたものの、他国から正式な独立国家として認められていない国のことです。

世界にはこういった未承認国家が数多く存在しますが、そのほとんどは治安面が悪かったり、アクセスが困難だったりすることも。

今回はそんな未承認国家の中でも断トツに治安が良く、その上ちょっと面白くマニアックかつ気軽に行ける「ハットリバー公国」をご紹介します。

謎の未承認国家「ハット・リバー公国」とは

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハット・リバー国旗 photo by SHIHO

ハット・リバー公国とは、西オーストラリア州にある小麦農家・レオナード・ジョージ・ケースリーが、オーストラリアからの独立宣言をした小さな国です。オーストラリアを含む1ヶ国もこの国を独立国家とは認めていない 「未承認国家」となっているので、その存在を知る人はあまり多くはないでしょう。

 

そもそもの始まりは1969年、西オーストラリア州政府が、小麦の販売量の割り当てを決定した際、ケースリーが経営する農場に割り当てられた小麦の販売量が不十分だったことから始まります。

ケースリーは他の農場主とも結託し、政府に法案撤回の請願書を提出したのですが、請願書は無視され、更に政府は地方の農地を取り消す法案の審議を進めたのです。これを遺憾に思ったケースリーは、1970年、自身が所有する農場を含む土地を「ハット・リバー公国」として、オーストラリアからの独立を宣言しました。

 

簡単にまとめると、州政府の政策に納得できなかった農場主のおっちゃんが、「そんなんなら独立しちゃうから!」と、勝手に独立宣言した何とも豪快な国。

普通の農場主が怒ってやったことなので、特に戦争などは勃発しておらず、治安もいいです。というか、本当にただの田舎を想像してください。

 

現在は、西オーストラリア州の知る人ぞ知る、観光名所。続いて、私が実際に訪れたハット・リバー公国の全貌とアクセス方法などをご紹介します。

 

ハット・リバー公国入国!インパクトが凄い石像(頭だけ)がお出迎え

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

ハット・リバー公国の門をくぐると、まずインパクト大の石像に出迎えられます。

石像と行っても、全身ではなく、頭だけ!どうやら国王・レオナード公の石像のようです。全長130cmくらいだったと思いますが、ちょっと怖い……。像の後ろに立っているオブジェは衛兵代わりでしょうか。

※ 「公国」なので正確には「君主」ですが分かりやすいように「国王」と表記させて頂きます。

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

石像後ろの小屋に、誇らしげに飾られていた紙は、オーストラリア政府(税金事務所)から送られてきた書類をプリントしたものでした。「あなたはオーストラリアの居住者ではありません。税金はゼロです」といった内容のことが書かれています。

 

イミグレーションオフィスで国王自ら入国審査

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

奇妙な石像を過ぎ、「Government Offices」と書かれた赤煉瓦の建物に入ると、そこにはおじいちゃんがぽつんと一人。何を隠そう、このおじいちゃんこそ、ハット・リバー公国の国王「レオナード公」なのです!そして国王自ら入国審査をしてくれます。

ビザ代という名の入園料を支払い、パスポートを出すと、おもむろに私のパスポートにブラックライトを当てる国王。日本のパスポートは偽造防止のために、ブラックライトを当てると自分の顔写真や桜の模様が光る仕様になっています。

 

しかし、国王が私のパスポートにブラックライトを当てるも、なぜか桜の模様が浮き上がりません。「あれ?模様が出ない!これは偽造パスポートだ!」と言う国王。

いやいや、国王、ライトの電源切ってるや~んとツッコミたくなりますね。もちろんわざと。そんなちょっとオチャメな国王なのです。

無事入国スタンプも押してもらい、ハット・リバー公国を観光します。

 

ハット・リバー国王自ら国を案内

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

ハット・リバー公国の面積は約75平方キロメートル、東京都大田区より一回り大きい程度の広さですが、その国土のほとんどは農場です。そのため、観光できる場所はごくわずか。それでも、国王自らが国を案内してくれます。

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

イミグレーションオフィスには、国王のコレクションなのか、日本の昔の紙幣などが沢山飾られています。

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ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

こちらはかつてハット・リバー公国が日本の雑誌で紹介された時のもの。当時は「国民30人」でしたが、現在は20人程度だそうです。

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

立派な教会もあります。

国王は他にも色々説明してくれたのですが、オーストラリア訛りの英語かつ田舎のおじいちゃんというのもあり、私の英語力では全く理解することが出来なかったのが残念でした。

 

お土産にハット・リバー通貨を購入しよう!

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

こちらはお土産屋さん。こんな小さな国にも関わらず、お土産はTシャツ、帽子、ワッペン、キーホルダーなど意外と充実しています。

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

上の紙幣はハット・リバー50セント紙幣。

国王に紙幣がいくらかと聞くと「ハット・リバードルはオーストラリアドルと等価だ」と言うので、とりあえず50セント紙幣を50セントオーストラリアドルで買いました。

1ドル・5ドル・10ドル・20ドル、計4枚36ドル分のハット・リバードルのセットが4ドルで販売されていたことには深く突っ込まないでおきました。

 

ハット・リバー公国から日本にハガキを出そう!

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

 ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

ハット・リバー公国からは、なんとエアメールも出せます!切手も消印もハット・リバーオリジナルのものなので非常にレア。

私はてっきりハット・リバー公国の消印が押された後に、オーストラリアの消印が押されて届くものだと思っていたのですが、いざ日本に届いたハガキにはハット・リバーの消印だけだったのでとても驚きました。

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

ハガキはお土産屋さんに売っているので、ぜひ日本にいる家族や友達に出してみましょう。良い記念にもなるので、自分宛に出すのもいいかもしれません。

 

ハット・リバー公国へのアクセス

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

 ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

日本からハット・リバー公国のあるオーストラリアへ飛行機の直行便は、成田または大阪から、ケアンズ、ゴールドコースト、シドニー行きがあります。

ハット・リバー公国に一番近い空港は「ジェラルトン空港」ですが、国際空港ではないので日本からの直行便はなく、その3都市からも結局、パースなどでの乗り継ぎが必要です。日本からLCCのエアアジア利用するならパース空港へはマレーシア・クアラルンプールなどで最低一回の乗り継ぎになります。

 

日本→クアラルンプール→パース→ジェラルトン、となると乗り継ぎが面倒でもあるので、私はパースからレンタカーでハットリバー公国へ行くのがおすすめです。

オーストラリア ピナクルズ

オーストラリア ピナクルズ

ピナクルズ photo by SHIHO

パースからハット・リバー公国(ジェラルトン)までには、野生のカンガルーが見られる「ヤンチャップ国立公園」、奇岩群のある砂漠「ナンバン国立公園(ピナクルズ)」、透明度の高い青い海が見られる「ジュリアン・ベイ」など、見所も多いのが魅力。

パースからジェラルトンまでは距離としては約420km、どこにも寄らない場合、車で約4時間半です。ジェラルトンからハット・リバー公国までは車で約2時間半かかります。

 

私は朝9時にパースを出発し、先に挙げた3つの観光名所を巡り、18時前にジェラルトンに到着、翌日ハット・リバー公国に行き、パースに戻りました。全走行距離は1,082kmで、行きは海岸沿いの60号線、帰りは1号線で帰ります。

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

こちらはハット・リバー公国でもらえる地図ですが、ハット・リバー公国公式ホームページからもダウンロード可能。

レンタカーを利用しない場合、パースやジェラルトンの旅行代理店では、ピナクルズなどへ行くツアーの一貫で、ハットリバー公国へ寄るツアーもありますが、最少敢行人数に満たない場合は催行されないようです。

■詳細情報
・名称:Principality of Hutt River(ハット・リバー公国)
・住所:Principality of Hutt River Via Western Australia 6535
・営業時間:9時~16時
・定休日:クリスマス
・ビザ代:4ドル(オーストラリアドル)
・公式サイトURL:http://www.principality-hutt-river.com/

 

B級・穴場好きな方に特におすすめのハットリバー公国

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

ハットリバー公国 オーストラリア 未承認国家

photo by SHIHO

実際ハットリバー公国は「未承認国家」と言うよりも、田舎のちょっとした「観光名所」という雰囲気の場所です。しかしながら、石像や国旗があったり入国スタンプや切手があったりと、国王の国に対する熱意はただならぬものがあり、実際行くと非常に面白いのが大きな魅力。

 

残念ながら、私が訪れた際には王妃は既に亡くなられており、今回登場した国王(おじいちゃん)も、2019年2月に亡くなられました。現在は息子である皇子(新国王)がその意志を引き継ぎ、国を案内してくれます。

本当にいつまで存続するのか分からない国なので、ぜひ皇子が元気な間に訪れてみましょう!

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