3月、デンマークの首都コペンハーゲンから鉄道に乗って、南スウェーデンを訪れました。スウェーデン人のご主人と結婚した友人・エンニがルンドという街に暮らしていて、泊めてもらえることになったのです。

そこで、実に興味深い話を聞くことができました。

16時から始まる帰宅ラッシュ

エンニの家に到着した日、16時頃に旦那さんが仕事から帰ってきたのでビックリしました。

「いつもこんなに帰りが早いの!?」

「16時は早いほうだけど、16時半か17時くらいには帰ってくる。うちはいつも17時から夕食だから」

スウェーデンでは16時頃から帰宅ラッシュが始まるらしく、17~18時には家で夕食、という家庭が一般的だそう。

この国の労働時間が短いことは以前から聞いていましたが、実際にこの目で確かめて、本当に驚かされました。サラリーマンが16時に帰ってくるなんて、信じられません。

「残業する人=仕事ができない人」という認識が強く、経営者などを除けばほとんど残業する人はいないそう。

北欧の税金が高いのは、福祉の充実以外に、「富を再分配するため」でもあります。

所得がある段階を超えると、収入の約半分を国に納める必要があるため、「家族との時間を減らしてまで働こう」という気持ちにはならないようです。

エンニのご主人も、育児や家事を積極的にこなします。ぼくが滞在中の夕食も彼が得意料理を振舞ってくれました。

生産性の高さの秘密は「」にあり?

北欧諸国の労働生産性の高さもよく取り上げられますが、それに関しておもしろかったのが、スウェーデンの「(Fika)」という習慣の話。

フィーカは、「お茶すること」を意味します。スウェーデン人は頻繁に「フィーカしよう」と言います。お菓子をつまみ、コーヒーを飲みながら談笑する生活習慣が、この国のスローライフを支えています。

この習慣は、職場にも根付いています。産前にスウェーデンの企業で働いていたエンニはこう話します。

「多くの企業では、毎日10時と15時にフィーカの時間が設けられていて、15分くらいのコーヒー休憩があるの。一度作業を中断して、雑談とか仕事の話をする。ミーティングするほどじゃないけど、ちょっと話したい、という類のことを話したりね」

「フィーカの習慣が仕事の生産性を高めていると感じた?」

「それは確かに感じた。コミュニケーションが活性化するだけじゃなく、15分の休憩でリフレッシュもできる。あとはオン/オフのメリハリも生まれるね。スウェーデン人は休むときは休むけど、やるときはものすごく集中して短時間で終わらすの」

「このコーヒー休憩は強制というか、絶対にみんな仕事の手を止めるの?」

「うん。私一回、すっごく怒られたの(笑)。こっちの会社に入ってすぐの頃、フィーカの時間に作業を続けていたら、『何してるの!今は休む時間よ!』って」

かつて日本の企業においては、「同僚と飲みに行くこと」がフィーカの役割を果たしていたと思います。

それはスウェーデンでも同じでしたが、しかし夜の飲み会はお金もかかるし、それぞれの家庭の事情も異なるし、みんながみんな飲み会に行けるわけではありません。

とくにスウェーデン人は家族との時間を大切にするので、日本人の感覚とは異なります。だから「業務時間内のコーヒー休憩」でコミュニケーションを図ろう、となったようです。

日本企業も真似したらいいのにな、と思う習慣です。ぼくもかつては会社員でしたが、「ミーティングするほど大袈裟なことではないけど、ちょっと話して確認したいこと」って結構ありました。

この点に関して上司に尋ねたいけど、仕事に集中しているからどうも聞きづらい、とか。話せば一瞬で解決するのに、タイミングを掴めず後回しになってしまったり。

大企業でいきなり導入するのは難しそうですが、スタートアップなどでは、ぜひ試しにフィーカを取り入れてみてほしいと思います。

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