旅をしていると抜群に美しい場所にもかかわらず、どのガイドブックにも記載されていない穴場に偶然行きあたることがあります。

今回紹介するのはスペイン南部。地中海とシエラネバダ山脈に挟まれた、アルプハラと呼ばれる地域にある村です。村の名前はソルビラン。

アルプハラ地方と言えば美しい山々と、山間に白い家が建ち並ぶ村で有名です。トレベレズやカピレイラは多くのガイドブックにも紹介されていますが、なぜソルビランは紹介されていないんだろう?と思うくらい良い場所でした。

 

ソルビラン?誰も知らない絶景の村はどこにある?

photo by Tomoya Yamauchi

ソルビランはスペイン南西部のアルプハラ地方にあります。食料品や日用品が買えるようなショップもなく、村にはバーが2軒のみ。時代に取り残されたような、のどかな場所です。

ソルビランまではグラナダから簡単にアクセス可能。グラナダのバスターミナルから1日1本バスが出ており、90kmほどの距離を3時間20分かけて到着します。

グラナダを出発したバスは、しばらくすると高速道路から離れ、グネグネした道を上がったり下がったりしながら、どんどん山の奥のほうに入っていきます。山間部に白い家が建ち並んだ集落が見えてくると、そこはアルプハラ地方。

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そして、車窓から見える山の向こう側に地中海まで見えてきます。きれいな場所だなあとうっとりしている間にソルビラン村まで到着します。

標高750m近くにあるソルビランからは美しい地中海が見え、村から山側にしばらく歩いていくと、シエラネバダ山脈が顔を出します。

村には、ソルビランの美しさに魅了された移住者(ポルトガル、イギリス、オランダ)もいるほど。それにも関わらず、ここは全く旅行者には知られず静かに存在しています。

 

まるで中世時代にタイムスリップしたようなソルビラン

photo by Tomoya Yamauchi

山の斜面に這うように白壁の家が建ち並ぶ。ソルビランは白く輝く美しい村です。標高約750mの山間部に位置しますが、地中海岸から12kmしか離れていないこともあり、村からは地中海が見えます。

車が1台通れるぎりぎりのサイズの通りが、迷路のように入り組んでいます。山の斜面に村があるので、ソルビランを歩き回るには急勾配をアップダウンしなければなりません。そのせいか村人たちも健康そう。

photo by Tomoya Yamauchi

ここでは「スペインにもまだこんな暮らしが残っているの?」と思うほど、今でも昔ながらの生活が残っています。村人は馬をつかって土を耕し、畑でとれたブドウで自家製ワインを作ります。

白く塗られた家が建ち並ぶ狭い通り、馬を引いて仕事に行く人々。この村に暮らしていると、中世時代にタイムスリップして迷い込んだみたいな錯覚に陥ることがあります。

村の自慢はアーモンドとワイン。村の周辺にはブドウ畑があり、アーモンドの木がたくさん植えられています。

photo by Tomoya Yamauchi

ソルビランは美しいだけでなく、住民もフレンドリーで温かい人々でした。通りを歩いていると、「Hola!」と声をかけられ、「どこから来たの?ソルビランは静かで良いところでしょう?」と。

気に入ってしばらく滞在していましたが、何度も家に呼ばれて自家製ワインを飲ませてくれたり。夕食に誘ってくれて、海で獲ってきた魚をグリルして食べさせてくれたこともあり。

スペイン語があまり話せなくても、何とかコミュニケーションをとってくれようとする優しい村の人たち。そんな村のどこかでは毎日のようにパーティーがあり、仕事終わりに村の男たちが集まり飲んでいます。

photo by Tomoya Yamauchi

こんな風に村人の生活に入り込めるのも、ガイドブックに載っていない場所(ほぼ観光地化されていない)に長期滞在する楽しみの1つです。

 

散歩すれば絶景がすぐそこにある暮らし

photo by Tomoya Yamauchi

ソルビラン周辺には、気持ちよく散歩できるところがたくさんあります。

村から地中海側に10分ほど歩いたところに大きな十字架のモニュメントがあり、そのビューポイントからソルビラン村や地中海を眺めることができます。村のおばちゃん達にも人気で、みなさま午後8時ごろになるとぞろぞろと散歩していました。

反対側から海の方へ少し下っていけば、アーモンドとフィグの木の隙間から地中海が見えます。アーモンドの木の陰に座り、海を眺めながら音楽を聴いたり、読書をしたり。まるでリゾートにいるよう。

車もほとんど通らないので、耳を澄ますと鳥の鳴き声がどこからともなく聞こえてきます。こんな丘から地中海を眺めていると、なんだか海まで飛んでいけそうです。

photo by Tomoya Yamauchi

反対に山の方に上がっていけば、ブドウ畑が広がる丘から壮大なシエラネバダ山脈を眺めることができます。ソルビランから北に丘を上がると、シエラネバダ山脈の頂上部が顔を出しました。

シエラネバダ山脈の全景を見たい人は谷を1つ越えて、アルフォルノンに向かって丘を登っていくと良いです。アルフォルノンまではソルビランから北に7kmほどで、徒歩で1時間30分ほど。ここにもソルビランのように美しい白壁の家が建ち並んでいます。

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この村から青と黄色で色分けされたトレッキングルートに沿って丘を登っていくと、シエラネバダ山脈と、麓の美しい村の絶景が。まるで絵画のようでうっとりしてしまいます。

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バルセロナからも参加者が!村が一番盛り上がる「チョト」祭り

photo by Tomoya Yamauchi

いつも静かな村に、賑やかな話声が響き渡っています。あれ?こんなにたくさんの人が村にいたっけ?と思って村人に尋ねてみると、どうやらこんなにたくさんの人がいるのは、明日ソルビランでお祭りがあるためらしい。

お世話になっているホストのギエルモに聞くと、「明日はお腹いっぱいおいしいものが食べれるから楽しみにしていな」とのこと。このお祭りのため、普段は仕事で村を離れて別の町に暮らす人々も帰郷しているようです。村の至る所で家族が再会を喜びあっており、この村出身の人々が集まる良い機会なのだとか。

翌日は、待ちに待っていたソルビラン村でのお祭り。村の小さな広場にはたくさんのブースが並び、地面に組まれた薪には火がくべられ、その上には大きな鍋が。

子羊丸ごと一頭がどこからともなく運ばれてきて、細かく切断され、鍋の中へ入っていきます。

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村で生産されたワインが飲み比べられるブースもあり、20種類ぐらいの赤、白ワインが並べられています。5ユーロのソルビランマグカップを買えば、そのワインが飲み放題になりました。

お祭りのメインのイベントはチョト(子羊肉のシチュー)のコンテストです。チョトはこの地方に伝わる伝統料理だそう。30チームがそれぞれチョトを調理し、一番おいしいチョトを決めます。

多くの人はソルビラン出身の人たちですが、バルセロナやグラナダなど他の都市からはるばる参加している人々もいました。

 

ビールやワインを飲み、おつまみを食べ、談笑しながら楽しんでチョトを作っています。

どのように調理しているか気になって歩きまわっていると、「どこから来たの?この村で何してるの?完成したら試食タイムがあるから後で食べに来なさいよ」と声がかかります。そう試食タイムには30種類ものチョトを自由に無料で試食できるのです。

元々このお祭りは、付近の村々で代々続く伝統だそうで、近年有名になりつつあるとか。

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午後2:00頃、すべてのチームが調理を終えて、待ちに待った試食タイム。パンも無料で配られ、チョトにちょっとずつ(ダジャレのつもりじゃない)パンをつけながら食べます。少しずつ食べてまわっただけでお腹が爆発しそうですが、おいしくて食べるのを止められません。

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広場にはDJブースもあって、大音量の音楽が祭りをヒートアップさせます。人々は再会を喜び合い、チョトをたらふく食べ、ワインを飲んで、踊りまくります。

え?どのチームがコンテストで優勝したかって?そんなのワインを飲みまくって、踊っていたので誰も知りません。

 

おわりに

スペインのアルプハラ地方の小さな村の暮らし。都市での生活のように毎日が矢のように過ぎていく事はなく、1日を1日と感じる心の余裕があります。

近郊の村でも頻繁に集まりがあり、良いコミュニティが形成されています。村内でも村人たちが互いに家に招待しあって、楽しい時間を共有している様子。

こんな風に、各地にのんびり溶け込んでいくような旅。私の好きな旅の方法です。

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