こんにちは。みなさんはスヴァールバル諸島という名前は聞いたことがありますか?私もつい最近まで知らなかったこの諸島。北極から約1,000kmの場所に位置しており、ノルウェー領となっています。

ここでは今まで経験したことのない日照時間ゼロの極夜の雰囲気を味わえたり、犬ぞりやスノーモービルなど北極圏ならではの興味深いアクティビティに参加することができます。

他では味わうことのできない特別な旅となったので、今回はその世界最北端の地スヴァールバル諸島の魅力についてご紹介したいと思います。

 

世界最北端の地、スヴァールバル諸島とは

photo by Shoko_Jyaiko 北緯78度に位置するスヴァールバル諸島。

スヴァールバル諸島はいくつかの島で構成されていますが、大半のエリアに人は住んでいません。住んでいるのはホッキョクグマ、ホッキョクキツネ、トナカイ、アザラシなどの野生動物が主です。

この諸島の中、唯一有人島であるスピッツバーゲン島にあるロングイェールビーンという街の人口は約2,000人。1,000人以上が居住する街としては、世界最北端に位置する街と言われています。

そんな北極圏に位置するスヴァルバール諸島の特徴は、1年間のうち日が沈まない白夜が約4カ月、そして日が昇らない極夜が約4カ月続くということです。私はその極夜が終わる数週間前にあたる1月末にここを訪れました。

 

 極夜と幻想的なブルーライトを体感する!

photo by Shoko_Jyaiko

私たちがスヴァールバル諸島の街、ロングイェールビーンにある空港に到着した時間は午後2時。まずその時の暗さに驚きました!

photo by Shoko_Jyaiko 午後2時の様子……。

photo by Shoko_Jyaiko 空港の外の様子。

それから明るくなることもなく、時間が経つと共に徐々に暗さは増してきます。これが極夜かと不思議な気持ちになりました。

そして、これが翌朝の朝食の時間(午前9時)の外の様子です。

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朝ごはん食べているのか夜ごはん食べているのか分からなくなります。その後外出すると、少しだけ明るくなった気がしてきました。午前11時頃には幻想的なブルーライトを見ることができました!

ブルーライトとは冬の極夜が終わりかける頃に、太陽は昇らないけれども、その明りで幻想的な青い光が空と大地を染めることを指します。ちょうど朝日が昇りかける前の状態で、その光が白い氷河や山を照らし、それがなんとも美しい幻想的な風景を生み出すのです。

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この景色を見れるのも約2時間ほど。午後1時頃にはまた暗くなりだし、午後2時頃にはあたりはもう夜のような暗さになります。

ちなみに、ホテルにはこのようなスクリーンがありました。

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「太陽が昇る日まであと19日、19時間、12分、47秒」。スヴァールバル諸島住む人たちは、太陽が昇る日を心待ちにしているのでしょう。

 

犬ぞり体験をしてみよう!

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北極圏ならではのアクティビティ、犬ぞり体験をしてみました。まず連れてこられたのは犬の訓練施設。ここには約100匹のアラスカンハスキーがおり、人の手によって繁殖から訓練まで行われています。

皆どの犬もとてもフレンドリーで、撫でに行くと飛びついてキスをしてきます。

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この元気で走る気満々の犬たちを、ガイドさんの指示に従ってソリに結び付けていきます。犬同士も仲の良し悪しがあるようで、仲のいい犬同士でソリを引くグループを決めるそう。一番重要なのが先頭を走る犬で、一番力のいるソリに近いところを引く犬は大きめなオス犬でした。

 

ソリの準備ができたらいざ出発です。時刻は夕方5時過ぎでしたが、現在極夜のスヴァールバル。あたりは真っ暗なので、ヘッドライトと前の人の明り頼みで進みます。ソリが動きだしたと思ったら犬たちは元気はつらつで大興奮!ものすごい勢いで走りだしていきます。

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二人で乗るので、一人は操縦者としてソリの上に立ち、もう一人は搭乗者としてソリに座ります。行きと帰りで役割交換をするので両方経験することができます。

真っ暗な道を犬たちが駆け抜けていく姿はとても圧巻で、「北極圏に来たんだなぁ」としみじみ実感することができました。

 

スノーモービルに乗って銀世界を駆け巡ろう!

photo by Shoko_Jyaiko

スヴァールバルの街、ロングイェールビーンでは住民の方々がスノーモービルを自由自在に操り、移動している姿をよく目にします。そのくらいこの北極圏の永久凍土の地で、スノーモービルは必需品。

スノーモービルに乗ってスヴァールバル諸島の様々なエリアに行くツアーも、たくさん用意されています。私たちもテンプルフィヨルドというロングイェールビーンから約50km離れた所に行く計7時間のツアーに参加してみました。

 

私はペーパードライバーなので運転はせず、一緒に行った相方が運転してくれるスノーモービルの後ろに乗って参加しました。

スノーモービルツアーの留意点は、自動車免許証が必須であるということ。運転する参加者はガイドさんに免許証を見せましょう。

日本の免許証は日本語で書かれているため、国際免許証が必要なことも。ツアー会社によって決まりが違うので、国際免許証をお持ちでない方は、必ず事前にツアー会社に確認してみてください。

photo by Shoko_Jyaiko

ロングイェールビーンを出発したのが午前11時ごろ。あたりはうっすらと明るく、ブルーライトの景色を見ながらツアーはスタートしました。

180度見渡す限りの雪の世界。しんと静まりかえっている空間の中、スノーモービルのエンジンの音を響かせながら、一列になって道なき道を駆け抜けていく気分は、なんとも特別なものでした。

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途中何か所か停車して、昔この地域で狩猟していた人たちが建てた家や、トナカイを見学することもできました。

約2時間半かけて到着したテンプルフィヨルド。遠目で見るとお寺のような模様に見える岩山があることからこのように名付けられたと言います。

photo by Shoko_Jyaiko 後方に見えるのがテンプルフィヨルドです。到着時は若干吹雪いていたので鮮明な写真ではありませんが……。

ここには狩猟の拠点として昔住んでいた人の家があり(こんな道も電気もない厳しい自然の中にずっと一人または二人で住んでいたと思うと想像を絶しますが……)、その家の周りのベンチで探検家用フードを食べてランチ休憩をとりました。

photo by Shoko_Jyaiko お湯を注いで3分まてば温かいパスタやクスクスのできあがり!

帰りは同じ道を戻るのですが、午後3時過ぎであたりは真っ暗。行きとはまた違ったスヴァールバル諸島の雰囲気を味わいながら帰路につきました。

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スヴァールバル諸島で楽しめるアクティビティは他にもある!

photo by Shoko_Jyaiko 

スヴァールバル諸島に行く前に私は「こんな極地にツアー会社なんてあるの?」とか「冬はオフシーズンでツアーとかあまりないのでは?」と思っていました。しかしそんな心配は御無用でした。

かつてスヴァールバル諸島は石炭の採掘が盛んでしたが、現在その産業は衰退し、今は観光業に力を入れています。そのため、こんな北極圏の極地でしたがとても観光客に優しい場所でした。かといって観光化されすぎず、手付かずの大自然がありのまま残っているのもとても魅力的でした。

photo by Shutterstock

そんなスヴァールバル諸島で冬にできるアクティビティは、犬ぞりやスノーモービルのツアー以外にも、オーロラ鑑賞ツアー、氷の洞窟探検、雪の中でのサウナなど様々です。

ちなみにオーロラは、日照時間がゼロの極夜の時期には朝や日中でも見ることができることもあるようです。しかしスヴァールバル諸島はオーロラベルトよりも北に位置してしまっているため、ノルウェー本土のオーロラで有名なトロムソより見れるチャンスは高くないと思われます。

 

また、夏には島を外周するクルーズツアーや、ホエールウォッチングツアーなどまた違ったアクティビティが催行されます。これらスヴァールバル諸島で行われる全てのツアーはスヴァールバル諸島公式ホームページで検索、予約することができます。

photo by Shoko_Jyaiko 博物館の内部の様子。

また、ロングイェールビーンの街にはスヴァールバルの歴史や自然についてとても分かりやすく学ぶことができる博物館や、世界最北の地に来たという証明書がもらえる郵便局などもあります。

photo by Shoko_Jyaiko 世界最北端の寿司屋にはラーメンや梅酒もあります!

ちなみに世界最北端の寿司屋もあるので行ってみましたが、魚がとても新鮮でとてもおいしかったです!

 

スヴァールバル島での寒さ対策

photo by Shoko_Jyaiko

様々なアウトドアアクティビティについて説明をしましたが、気になるのが寒さ対策です。私もとても寒がりで大量のホッカイロを持っていったりとかなり準備周到に行きましたが、実際はそこまで用意しなくて良かったというのが本音です。

なぜなら犬ぞりやスノーモービルのツアーに参加すると、全身用防寒スーツ、バラクラバ(目だし帽)、手袋、スノーブーツなど一式貸し出しをしてくれるから!

photo by Shoko_Jyaiko

この防寒スーツが防寒、防水、防風等の全ての機能が備わっていてとても温かいんです。

しかし、このようなツアーに参加しないときは、持参の防寒着で寒さをしのがなくてはいけないので、できるだけ温かい洋服を持っていきましょう。

photo by Shoko_Jyaiko 貸し出してくれたスノーモービル用防寒グッズ一式。

ちなみに、私の場合は上はヒートテックのような温かいアンダーウェア2~3枚の上に、ウールのセーターとダウンコート、下も温かいアンダーウェア2~3枚とダウンパンツを履いて出かけました。

そして、靴下は温かいものとウールのものを重ね履きし、靴はムートンブーツ、帽子と手袋も2枚重ね。マフラーやネックウォーマーも必需品です。

 

このように、様々な防寒対策をして行った私ですが、スヴァールバル諸島はメキシコ湾暖流のおかげで、北極圏に位置している割にはそこまで極寒にはならないようです。私が滞在していた1月末も最低気温はマイナス10度くらいでした。それでも寒いことには間違い無いので、風邪を引かないよう気をつけましょう。

 

ホッキョクグマ対策でライフルが必需品って本当?

photo by Shoko_Jyaiko スーパーマーケットの入り口にもホッキョクグマの剥製が。

スヴァールバル諸島を象徴する野生動物といえばホッキョクグマです。ここには人間より多い約3,000頭ほどのホッキョクグマが生息していると言われています。ほとんどのホッキョクグマは沿岸部の氷の上で生活をしているため、人が住むロングイェールビーンの街に来ることはほぼないと言われています。

 photo by Shoko_Jyaiko 空港の手荷物受取エリアにもホッキョクグマの剥製が。

そのため、地図上ロングイェールビーンの街は「ホッキョクグマ対策不要地域」というエリアに指定されています。つまり街の外は「ホッキョクグマ要注意エリア」になっており、ホッキョクグマに遭遇する可能性もあるため、ライフルを所持しないと行ってはいけないとのことです。

photo by Shoko_Jyaiko この看板より先は「ホッキョクグマ要注意エリア」。

車などで移動する際は不要ですが、私たちが参加した外でのアクティビティである犬ぞりやスノーモービルのツアーのガイドさんはライフルを携帯していました。

 photo by Shoko_Jyaiko 

このように、スヴァールバル諸島ではロングイェールビーンの街の外を観光客がふらっと自由に歩くことはできないのです。実際にホッキョクグマに襲われて亡くなった人の話もたくさん聞き、スヴァールバル諸島の大自然の厳しさと恐ろしさを感じました。

 

スヴァールバル諸島には、日本人でも永住できるって本当?

 photo by Shoko_Jyaiko ロングイェールビーンの街のメインストリート。

あまり知られていませんがスヴァールバル諸島はスヴァールバル条約により、日本人でもビザや永住権なしで自由に就労、定住できる場所なのです!

この条約に加盟している国の国民であれば皆スヴァールバル諸島に永住できるため、ロングイェールビーンの街にはノルウェー人以外にもロシア人、タイ人、フィリピン人など様々な国籍の人たちが働いていました。

photo by Shoko_Jyaiko

気候や自然が厳しいため、長く定住する人は少ないようです。街はこじんまりしていますが必要なものは全て揃っていて、一年を通して白夜と極夜を体験しながら、太陽の有難味と季節の移り変わりを感じることができるスヴァールバル諸島への移住も、なかなか面白いなと思ってしまいました。

 

極地で極寒で極夜だけど心温まるスヴァールバル諸島へ行ってみよう!

photo by Shoko_Jyaiko

スヴァールバル諸島では、今まで見たことのないような大自然の景色の中アクティビティを楽しんだり、経験したことのない極夜の雰囲気を味わえて、毎日が刺激的で感動の連続でした。もちろん気温は低くて寒かったけれど、そこには人の心を温める景色、人々、食事、動物たちがありました。

photo by Shoko_Jyaiko

 

世界最北端の地と聞くとなかなか行きにくいのではないかと思われがちですが、ロングイェールビーンへはノルウェーの首都オスロやトロムソから週何便も定期便が出ているので、意外と簡単にアクセスできてしまいます。

あなたも世界最北端の地に行って、ここでしかできない経験をしてみませんか?きっと忘れられない素敵な思い出となるはずです。

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