芸術家の腕というのは時々、本当に何かに取り憑かれ、得体の知れない力を得ているような感じがする。

夏目漱石の短編小説『夢十夜』でも、運慶が彫刻を掘る様子が「土の中から石を掘り出すかのように」、「その通りに埋まっているものを掘り出しているまで」と描写されるシーンがある。彼らの手には迷いがない。

どうしてこんな話をしているのかというと、この作品が本当に「神がかっている」からだ。髪をかきあげる女性の背中には、空洞。初めは、3Dに見えるタトゥーか何かかと思ったのだけれど、それ以上にすごいものだった。

全部、手作業で描いてます。

そう、なんと背中の空洞のみならず、この女性までもがキャンバスに描かれた油絵。

ここで2枚前のアップの画像をもう1回見て欲しい。全部筆で書かれているなんて、とても信じられないでしょう?

この凄まじい絵画の作者は、イタリアの画家Marco Grassiさん。毛穴の一つひとつ、髪の毛やしわの1本1本まで精密に描き出すまさに神業の持ち主なのだ。

ぜひとも、拡大してみてくれ給え。

その昔、絵画が神様や理想美のみを描いていた時代、お腹のたるんだ写実的な裸婦などを描くと、笑いの的にされたこともあったそう。でもこれは、体温や匂い、息づかいさえ感じそうなほどリアルな人間の肌、肌、肌。

じっと見つめるとゾクゾクしてきそうなほどリアルなこの絵に、Instagramでは「天才だ」「絵だなんて信じられない」「素晴らしい」「気味が悪いくらいだ」と世界中からあらゆる言語で驚きの声が寄せられている。

日本では昔、あまりにリアルな「」の登場に驚いた人々が「写真を撮ると魂を取られる」などと言ったそうだけど、そう言いたくなるのもわかるほど、まるで本当に命があるかのような、生きた人間を閉じ込めでもしたような作品だ。

完璧じゃないなら、やり直しちゃえ。グッバイ!

そんなキャプションとともに、精密な絵を豪快に消していく動画も。この生々しい絵は、まさに作者の情熱と魂を込めて描かれているものと言えるのだろう。

もっと作品を見たい人は、ぜひInstagramへ。

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