2019年4月15日にフランスのパリで起こったノートルダム大聖堂の火災。現地の人のみならず、世界中の人々がノートルダム大聖堂の無事を祈ったのは言うまでもなく、予想だにしない突然の出来事でした。

火災と聞いたとき、私の頭には2つのことが浮かびました。それは、「行っておいてよかった」という安心と、「あの素晴らしい景色を、もう一生見られないかもしれない」という不安。

今回は、そんなノートルダム大聖堂の火災前の素晴らしい写真とともに、今すぐにでも行っておいた方がいい世界の危機遺産をご紹介します。(※現在ノートルダム大聖堂は復旧工事の真っ只中です。)

 

パリのノートルダム大聖堂とは

photo by Tomomi Kita

パリのシテ島にあるノートルダム大聖堂は、ゴシック建築を代表とするローマ・カトリック教会の大聖堂です。セーヌ川の近くにあることから、「パリのセーヌ河岸」という名前で1991年にユネスコの世界遺産に登録されました。

ノートルダムとは、フランス語で「我らが貴婦人」という意味。つまり、聖母マリアのことを指しているそうです。

また、貴重な歴史的建造物であり、1455年にはジャンヌ・ダルクの復権裁判や、1804年にナポレオン・ボナパルトが帝政を宣言した際の戴冠式(王位や帝位への就任を宣言する儀式)もこちらで行われました。

■詳細情報
・名称:ノートルダム大聖堂
・住所:6 Parvis Notre-Dame – Pl. Jean-Paul II, 75004 Paris
・地図: ・アクセス:メトロ4番線シテ(Cité)駅から徒歩5分/RER A・B線サン・ミシェル=ノートルダム(Saint Michel Notre-Dame )駅から徒歩3分
・公式サイトURL:https://www.notredamedeparis.fr/

 

突然の大規模な火災によって屋根の大半が消失

そんなノートルダム大聖堂の悲しいニュースが世界中に報道されたのは、2019年4月15日。ノートルダム大聖堂が煙を出して燃え上がる様子をTwitterやテレビで見て、ショックを受けた方も多かったのではないでしょうか。

火災が大聖堂の上部で起こっていたことから消火が難航し、尖塔と周辺部分は崩壊、木材で出来ていた屋根の3分の2が消失してしまいました。

消火活動が続いている間、ノートルダム大聖堂の前には100人ほどのパリ市民が集まり、ひざまづいて賛美歌を歌いながら祈り続けたそうです。
 

ノートルダム大聖堂の荘厳な内観に言葉を失う

photo by Tomomi Kita

筆者は3年前にノートルダム大聖堂を訪れましたが、その荘厳なレリーフの数々や美しいステンドグラス、祈りを捧げる人々に感動したことを今でも鮮明に覚えています。火災は起こってしまったけれども、全消失は免れてよかったと本当に心から思いました。

ノートルダム大聖堂に入ってまず驚いたのが、その天井の高さです。細部まで手の行き届いたゴシック建築の凄みを感じさせられます。薄暗い聖堂内を照らすあたたかな灯りと、背筋が自然と伸びてしまうような厳粛な空気感は、きっとここでしか味わえないでしょう。
 

薔薇窓のステンドグラスが美しい

photo by pixta

火災当時に損壊状況が不明で情報が混乱していた3つの薔薇窓においては、フランスメディアによると3つとも無事のようです。こんなに美しく神聖なものが消失してしまうかもしれなかったなんて、想像するだけでなんとも言葉にできない、複雑な気持ちになってしまいます。

photo by Tomomi Kita

ほかにも、聖堂内にはいたるところに精巧なステンドグラスが存在し、辺りを虹色に染め上げていました。

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レリーフや模型で歴史をたどることも

photo by Tomomi Kita

聖堂内にはノートルダム大聖堂が完成するまでの歴史を辿ったレリーフや、全体像を確認できる模型が展示されていました。大聖堂には珍しくノートルダム大聖堂は写真撮影OKですが、その神聖さを目に焼き付けまいと静観する人も多かったように思います。

photo by Tomomi Kita

ノートルダム大聖堂のはじまりは1163年、今から856年も前に遡ります。国王ルイ7世の時代にローマ教皇のアレクサンデル3世が礎石を据えたことからはじまり、1250年に完成したそうです。以降、何度か改修工事をなされ、美しい姿を保っていました。
 

祈りを捧げる人の姿が印象的

photo by Tomomi Kita

とくに印象的だったのは、祈りを捧げる人たちの姿でした。きっと日頃から感謝や祈りを捧げる習慣があり、悲しいことや辛いことがあった時も、こうして大聖堂まで足を運ぶことが心の支えだったのだろうなと思います。

photo by Tomomi Kita

長い歴史を経て完成し、ノートルダム大聖堂が古くからパリ市民の心の支えであったことを思うと、鎮火までの間に祈りを捧げる人や、涙をこぼす人がいたのも頷けます。

現在ノートルダム大聖堂は復旧工事の真っ只中です。シートで覆われている部分はあるものの、外観のみなら観に行くことも可能ですので、ぜひ近くへ立ち寄った際には祈りを捧げに行ってみてください。
 

今すぐ行ってほしい世界の危機遺産

世界遺産は歴史的な建造物などの「文化遺産」と、人工では作ることができない自然の景観を指す「自然遺産」の2つに分かれますが、危機遺産とは、その中で危機にさらされている世界遺産のことを言います。

特に破壊や風化などで遺産の維持がほぼ難しい状態を「決定的危機」、周囲の環境の変化によってこれから状況が悪化するかもしれない状態を「潜在的危機」として認定しているのだとか。

そんな危機遺産リストに認定されているものを今回はピックアップしてご紹介します。

ほかの危機遺産を確認したい方はこちらの危機遺産リストをご確認ください。
 

エルサレムの旧市街とその城壁群 / エルサレム

photo by pixta

「エルサレムの旧市街とその城壁群」は、1860年代までこの旧市街がエルサレムの全体像でした。宗教面において歴史的で重要な遺跡を多く含んでいます。

エルサレムの帰属問題など、周辺情勢の不安定さにより1982年に危機遺産として登録され、現在でも登録は解除されていません。2019年時点で最も長い期間危機遺産に指定されている世界遺産です。
 

古都ザビード / イエメン

photo by Ahron de Leeuw

イエメンの西部フダイダ県に属するザビードは、かつてイエメンのいくつかの王朝の首都が置かれ、宗教や学術の中心として栄えた都市です。しかし16世紀後半以降、街は衰退していき、ザビードは地方の小都市となりました。

都市化によって、以前の伝統的な都市の景観が変化することを危惧し、2000年に危機遺産に登録されています。
 

アブ・メナ / エジプト

photo by isawnyu

アブ・メナは古代エジプトにおいて、キリスト教巡礼の中心であった都市の遺跡です。1979年に世界遺産に登録されましたが、遺跡はほとんど崩壊してしまっており、確認できるのはバシリカの土台など大建築物の遺構のみです。

地下水位上昇による崩壊危機のため、2001年に危機遺産に登録されています。
 

ウィーン歴史地区 / オーストリア

photo by pixta

古代ローマ時代から歴史をもつオーストリアの首都ウィーンは、「音楽の都」とも呼ばれ、様々な時代の建築様式によって作られた歴史的な建造物があることから世界遺産に登録されました。

都市開発によって景観が損なわれるのでは?という理由で2017年に危機遺産に登録されています。
 

スマトラの熱帯雨林遺産 / インドネシア

photo by Dan Lundberg

インドネシアのスマトラ島にあるスマトラの熱帯雨林は、東南アジア独特の種や、ここでしか見られない植物や動物などが生息することから、貴重な自然地域として2004年に世界遺産に登録されました。

しかし密猟や違法伐採などが横行しており、2011年に危機遺産に登録されています。
 

見たい景色へ、今すぐ旅立とう!

あなたが「いつか見たい」と思っている景色は、永遠に存在するとは限りません。今回のノートルダム大聖堂のように、突然の災難によって消失してしまうかもしれない、以前の景観とは変わってしまうかもしれない。

写真で見るのと実際にその場に行って空気を感じたり、自分の心で感動を感じとるのは全く別物です。一度きりの人生、ぜひ見ておきたい景色は早めに目に焼き付けておきましょうね!

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