ホテル?美術館?

こんなモダンなデザインの建築物を見たら、そう思ってしまうのは、僕だけではないはず。これが、刑務所と知った時、絶句してしまった。

快適な生活を送るためのデザイン

こちらは、デンマークのファルスター島にあるStorstrøm Prison。建築に携わったのは、様々なプロジェクトを手がける建築会社C.F.Møllerだ。今回は、受刑者の社会復帰をバックアップするために、世界で最も人道的な刑務所を目指したとのこと。快適な生活を送るための工夫が随所に散りばめられている。

◼︎ワンルーム室内

まず、目を見張るのが、トイレとシャワーつきの広さ12.8㎡の個室。採光もしっかりと配慮されたワンルームは、デザイナーズマンションのような印象だ。・テイストで統一された室内には、ベッド、机、ワードローブ、冷蔵庫、そして、テレビまで完備されている。

◼︎ワークアウトスペース

敷地内には、ジョギング・コースやサッカーグラウンドがある。また、バドミントンやバスケットボール、ハンドボールができるコート設備も。さらには、ジムやフィットネスルームまで揃っている。スポーツを通じて、受刑者同士の絆も強くなることだろう。

◼︎アートスペース

大きなジムホールには、著名なペインターであるJohn Koernerの大きな壁画が飾られている。また、屋外スペースには、アーテイストClaus Carstensenによる青銅の彫刻も展示。完成度の高いアートによって、まるで、美術館に紛れ込んでしまったかのような気になる。

◼︎共有スペース

建物内部には、十分な光を確保できていて明るい。天井からぶるさげられた照明は、空間のアクセントにもなっている。また、壁や床に採用されている色は、従来の刑務所とは真逆。規律よりも、リラックス感に重きをおいている。

驚いたのは、受刑者が自分自身で料理ができるキッチン。他の受刑者と交流しながら、一緒に料理することもできるのだとか。

現在、この刑務所に収容されているのは、250名の受刑者。快適さに加えて、彼らが、社会復帰をするための準備としてコミュニティづくりをも睨んだ設計には、大きな意義がある。改めて、人間は環境に影響される生き物ということを感じてしまった。

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