100か国以上を旅した後、フィジーへ移住し、初心者向けの語学学校COLORSの校長を務める永崎裕麻さん。

2007年からフィジー&日本でのデュアルライフ(二拠点生活)を送っていましたが、今年から拠点を増やし、トリプルライフを実践することを決意したそう。3つ目の拠点として選んだのは、北欧のデンマークです。

今回は、永崎さんが実践するGFH(家族総幸福)やデンマークを選んだ理由についてインタビューしました。

永崎裕麻さん

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。
2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2014/2016/2017)のフィジー共和国へ07年から移住し、現在13年目。ライフスタイルをアップデートする英語学校カラーズ校長。

100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府国際交流事業「世界青年の船」「東南アジア青年の船」に日本ナショナル・リーダー/教育ファシリテーターとして参画。教育企画の立案、ライターとして「ハフィントンポスト(日本版)」「日経doors」「ライフハッカー」「クーリエ・ジャポン」などで執筆、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動もしており、デンマーク・フィジー・日本の世界3拠点生活(トリプルライフ)を実験中。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」。

大阪府生まれ(1977)。神戸大学経営学部卒業。二児の父。

――永崎さん、おひさしぶりです!トリプルライフをはじめられるとのこと、会社員の私からすると非常にうらやましいです。そもそもですが「フィジーを移住先に選んだ理由」をお聞かせいただけますか?

僕は世界一周を経験しているんですが、オセアニア、中南米、北米、中東、アフリカ、ヨーロッパ、アジアと転々と旅を続けるうちに、僕が住んでみたいと思う国の条件(要素)が明確になっていきました。

国民の陽気さ、治安の良さ、温暖な気候、英語通用度の高さ、物価の安さ、日本人移住者がある程度いること、海が近いこと、そして自分の常識を覆してくれること。この8つの条件をすべて満たしていたのがフィジーだったんです。

――フィジーは「世界で一番幸福な国」ともいわれていますよね。そんなフィジーで、永崎さんはご家族をとても大切にされている印象です。

僕はブータンの「国民総幸福」(GNH: Gross National Happiness)をもじった「家族総幸福」(GFH: Gross Family Happiness)を一つの尺度にしています。

平たくいうと、僕を含めた家族4人全員がハッピーであり続けることを目指しています。「この週末はどう過ごすか」といった小さなものから、「どこに住むか」といった大きなものまで、この「家族総幸福」という目的にマッチしているかという観点から決断するようにしています。

――家族は最小のコミュニティですもんね。家族総幸福を実践するようになったきっかけは何だったんですか?

2015年に第一子が生まれたことです。親は子どもの幸せのためならなんでもしたいと思うもの。

ただ、現実にはあり得ないですが……こんな条件を出されたら、西嶋さんならどうしますか?

「今日から30年間、一切子供に会えません。ただし、それができるなら、子供はこれ以上ないくらい幸せになることが確実です。やりますか?」

――うーん、受け入れられないと思います。だって、親は幸せになれないですもんね。

僕もイヤですね(笑)。親として子供の幸せを願ってはいますが、30年も会えないなんて、絶対にイヤです。

ここまで極端じゃないにせよ、子供の幸せのためならと自分を犠牲にしまくっている親御さんって結構いるんじゃないですかね。

僕の場合、家族全員がバランスよくハッピーでいる状態を目指しています。誰かのハッピーが突出していてもいいけど、誰かをマイナスにしてはいけないという感じで。

――完全に同意です。永崎さんは、GFHを実践するために工夫していることってありますか?

2つあります。まず「家族を何より優先する」こと。しかも、優先している“つもり”ではなく、相応の時間を取ることです。

僕は40歳を前にして、「死ぬ前に後悔しそうなことってなんだろう?それに今、取り組んでみよう」と思ったんです。そして真っ先に「家族ともっと過ごせばよかったと後悔するかもしれない」とも思いました。

そこで40歳のとき、仕事を1年間休んで、家族と過ごしました。

――実際、いかがでした?

やっぱり死ぬ前には後悔するかもしれない。「もっともっと家族といたかった」って。でも同時に、「少なくとも、40歳のときにはずっと一緒にいたじゃないか」と思えるようになったはずです。

子どもたちの笑顔をたくさん見られたのは、収穫でしたね。子どもって、成長すればするほど笑わなくなる。だから、子どもたちが幼いうちに、その笑顔を見ておきたかったんです。

「最近、子供の寝顔しか見れてないんだよな……」とつぶやく日本の多忙な父親も多いと思います。もしかしたら、平均的な日本人パパが一生で見る子どもの笑顔を、あの1年間で見れたのかもしれません。

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――後悔を少しでもなくすための努力、見習いたいと思います。もう一つ、家族総幸福を実践するために取り組んでいらっしゃることをお聞かせください。

「幸せの感度を高めておく」ことです。

そのためには、日常のささいな幸せを言語化すること。僕の場合、「子どもが笑った」という小さなことでも、夫婦で報告しあうようにしています。

小さな幸せは、思い出に残りにくいから、記憶から流れ落ちてしまいがちです。だけど、確かに存在しているんですよね。

もう一つ、意識的に「非日常」や「変化」をつくること。「非日常」や「変化」は記憶に残りやすいからです。僕のトリプルライフは、その最たるものですよね。

――なるほど、トリプルライフも幸せづくりの一環なんですね。

僕はもともと、人生は3枚のカード――どこで、誰と、何を――で決まると思っています。「どこで」は今まで重視していなかったんですが、「どこで」を変えると「誰と」と「何を」も大きく変化することに気付いて、拠点を増やすことにしました。

――なぜ、3拠点目としてデンマークを選んだんですか?

デンマークの「幸せ」「自由」「教育」を学びたいからです。

まず、幸せについて。デンマークは、言わずと知れた幸福先進国。また「居心地のよさ」や「人とともにいるときに感じるぬくもり」を指す、「ヒュッゲ」という独特の幸せの形を持つことでも知られています。

彼らの幸せの形は、フィジーのものとも、日本のものとも異なります。デンマークの幸せのあり方を、子どもたちに見せたかったんです。

――ヒュッゲ、日本でも話題になりましたよね。日本でいうと「こたつみかん」みたいなムードでしょうか。

こたつみかんは近いかもしれないですね!あと、友だちとビアガーデン、ボードゲームとか。

でも、日本人はこうした幸せに浸る時間を惜しんで忙しくしていますよね。「スケジュールが埋まっている=幸せ」ではなく、もっとゆったりした幸せを味わえるような雰囲気になってほしいなと思います。

――次は「自由」ですね。個人的には、デンマークに「自由」のイメージはなかったです。

デンマークの首都コペンハーゲンには、「ヒッピーの楽園」とも呼ばれるクリスチャニア自治区があります。そこでは自由が重んじられていて、犬の自由も守られるので、犬を鎖につなぐのが禁止されているほど。

自分で自分の道を選ぶヒッピーたちに、自由を学びたいと思っています。

――クリスチャニア、行ったことあります!コペンハーゲン市内のど真ん中にあるのに、他とはまったく雰囲気が異なるのが印象的でした。

そして最後に、「教育」ですね。

特に関心があるのが「フォルケホイスコーレ(国民学校)」という生涯教育の場。18歳以上であれば、いつでも誰でも学ぶことができる、「人生の学校」とも呼ばれている場所です。

そこでは、自分自身がどう生きたいのか、社会の一員としてどう貢献していくのかを徹底的に考える時間・空間が提供されています。

どうすれば教育と幸福の相関を作り出せるのか。これは私のライフテーマでもあるので、デンマークの「教育」は見逃せません。

――18歳以上なら誰でもいいというところに、デンマークらしい成熟を感じます。

最後に、今後の展望をお聞かせください。個人的には、さらに拠点を増やすのか、もしくは減らすのかが気になります!

僕たち家族にとって最適な拠点の数はいくつなのか?それはまだわかっていません。最適な数を見つけたとしても、その数はライフステージによって変わってくるはずですしね。

デンマークに拠点をつくることも、ひとつの実験だととらえています。自分と家族の想いを尊重しつつ、その時々の最適解を模索していければと思います。

――幸せを追求してチャレンジを続ける姿、本当に素敵です。永崎さん、ありがとうございました!

画像提供:永崎さん

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