この服が1枚売れるたび、誰かの命は脅かされている。
このシャツが1枚売れるたびに、世界の不幸はまた増える。
パンダがトレードマークの、世界自然保護基金<WWF>。彼らが新しく打ち出したコレクションは、Tシャツの全面に工事現場や、自然を破壊する様子が描写されたもの。
エシカルファッションならぬ、“シニカル”なデザインは、環境を守りたいと思うからこそ生み出された「最悪な未来予想図」。
このコレクションには、ブルガリア南西部『ピリン国立公園』の問題を知ってほしいというメッセージが込められている。同公園は、世界遺産に登録されながら、現在、産業活動の脅威にさらされているという。
「世界遺産オンラインガイド」によると、300種の希少動物、国際的な絶滅危惧種が15種も生息している貴重なエリア。シャツが描くように人の手によって壊されたとき、地球上から多くの財産を失ってしまう可能性がある。
買わないで、増やさないで。
自然を破壊するこんな風景は、Tシャツ1枚分だって増やさないでほしい。そう多くの人が同じ想いを抱くだろう。そこで……<購入ボタン>をクリックしても、実際に購入することはできない仕掛けを用意した。つまり、これらは全て非売品なのだ。
あたかも購入できるような見せ方をしたのは、望まない未来がすぐそこまで来ていることを表現したかったからに違いない。
ボタンを押すと同時に「“今のところ、まだ”非売品です」というメッセージが表示されるのがその証拠。
この先もずっと非売品にしておくために、WWFは「自然を守るための請願書」の署名を求めている。