皆さんは「遊牧民」と聞いて、どんな人たちを思い浮かべるでしょうか?「遊牧民=モンゴル」とイメージする方も多いですが、実は、中央アジアや中東などの幅広い地域に、今なお伝統的な生活を送っている遊牧民が存在しています。

中央アジアの「キルギス」も、遊牧民が暮らしている国のひとつ。キルギスの遊牧民家庭は、旅行者の宿泊を受け入れていることが多く、誰でも簡単に彼らの自宅に泊めてもらえます。今回は、私がキルギスで遊牧民の家庭にホームステイした際の方法や感想などをご紹介します。

キルギスってどんな国?

中央アジアに位置するキルギスは、日本の約半分ほどの面積に、約620万人が暮らす小さな国です(千葉県と同じぐらいの人口)。

「中央アジアのスイス」と称されることもあるほど、美しい山々に囲まれていて自然豊か。トレッキングの名所として、欧米からの旅行者を中心に年々人気が高まっています。

使用されている言語は、公用語のロシア語と国家語のキルギス語。多くの人はロシア語とキルギス語の両方を話せますが、英語は都市部や一部の観光地でしか通じません。

キルギスの遊牧民ってどんな人たち?

キルギスの遊牧民は、首都ビシュケクをはじめとする都市部から離れた、山間部などで生活しています。かつては大多数のキルギス人が、遊牧生活を送っていましたが、旧ソ連時代の定住化政策によって、その数はかなり減少してしまったそうです。

羊、ラクダ、馬、牛などの牧畜で生計を立てている遊牧民。夏は家畜を肥やすため、草の生い茂る山の中腹などに住み、冬になると山のふもとの村に移動して、厳しい寒さをしのぐというスタイルが一般的です。

遊牧民の家として皆さんがイメージするテント(キルギスでは「ボズウィ」と言います)は、夏の間山間部に建てる組み立て式の住居で、木の骨組みとフェルトで出来ています。


遊牧民らしい暮らしが味わえるのは、夏のボズウィでの生活なので、キルギス旅行は夏が断然おすすめです!

遊牧民ホームステイで体験できる5つのこと

キルギスでは、旅行者が遊牧民の家庭に、気軽にホームステイできる仕組みが整っています。ホームステイする場所によって体験できることは多少異なりますが、ほとんどの遊牧民家庭で体験できる5つのことを写真と共にご紹介します。

山上からの絶景を眺める

遊牧民がボズウィをかまえるエリアに着いたら、まず目に飛び込んでくるのが大自然が作り出す絶景です。ボズウィは基本的に草原の中に建てるので、ボズウィの周りは見渡す限り深緑の草原。ごろんと寝転がって昼寝をするのも最高です(家畜の糞にご注意!)。

また、ボズウィは高地にあることが多く、周辺の山々でハイキングも楽しめます。私がホームステイをした、キルギス東南部の「ボズサルクン(Боз Салкын)」では、ボズウィが建つ場所ですでに標高2,500メートル。山頂に向かって1~2時間登っていけば、3,000メートル級の山頂にたどり着きます。


ボズサルクンからは、世界第2位の透明度を誇る青く美しい「イシク=クル湖」も見え、草原の緑と湖の青さのコントラストがなんとも素晴らしい情景でした。

大自然の中を馬で駆け抜ける

遊牧民ホームステイで私が最もおすすめしたいのが、乗馬です。遊牧民は必ずと言っていいほど馬を飼っていて、馬に乗って大自然を駆け抜けるという、すばらしく気持ちのいい体験ができます。

爽やかな風を受けながら、いつもよりかなり高い目線で、どこまでも続く草原や美しい山々を眺める時間は、表現が難しいほど贅沢なものでした。

場所によっては、馬に乗って山頂まで行けるので、ハイキングが苦手な方も、馬に乗ったままで山頂からの絶景を簡単に見に行けます。


遊牧民の男性がホースガイドとしてサポートしてくれたので、乗馬初心者の私でも、安心して乗れました。

遊牧民の家庭料理を味わう

遊牧民ホームステイでは、手作り家庭料理も大きな楽しみのひとつ。

写真左のチャーハンのようなご飯は「プロフ」と呼ばれる伝統料理です。肉、野菜、レーズン、豆などのさまざまな食材と一緒に米を炊いたもので、これが病みつきになる美味しさ!他にも羊肉料理、サラダ、パンと手作りのジャムなどバラエティ豊富な食事に大満足でした。

ちなみに、馬の乳を発酵させて作ったお酒「馬乳酒」もトライしてみましたが、酸味が強く、好き嫌いの分かれる味かもしれません……。

遊牧民のテント「ボズウィ」に泊まる

夜は遊牧民のテント「ボズウィ」での宿泊です!多くの遊牧民は自分の家族用のボズウィ以外に、訪問者用のボズウィを持っているので、旅行者はそこに泊まります。

頑丈な骨組みと、分厚いフェルトで作られているので、予想以上にしっかりしていますが、すぐそばに自然を感じられるので、なんとも言えない不思議な感覚。

ボズウィの定員は大きさにもよりますが、2名から6名程度。1グループに1つのボズウィが割り当てられ、プライバシーも保たれます。

ただし、遊牧民が住む山間部は標高が高いため、夏でも夜間はぐっと気温が下がります。毛布など暖かい布団は提供してくれますが、暖房器具がないボズウィが多いので、しっかりと着込むなど防寒対策は怠らないようにしましょう。

満天の星空に酔いしれる

そして、もう一つ忘れてはいけないのが、真夜中の星空観測タイムです。キルギスの遊牧民が暮らす山間部は、標高も高く空気も乾燥していて、街の明かりからも離れているので、溢れんばかりの星を眺められます。

家畜たちの「モ~」や「メ~」という鳴き声を聞きながら、時間を忘れて美しい星空を、心ゆくまで眺めてみてください(またまたここでも家畜の糞にご注意!)。

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キルギスの遊牧民家庭にホームステイする方法

最後に、実際に遊牧民の家にホームステイする方法をご紹介します。

CBTを利用するのがおすすめ

遊牧民家庭でホームステイをするには、遊牧民家庭への訪問が組み込まれているツアーに参加する、という手もありますが、私のおすすめは「CBT」という団体に仲介してもらうこと。

CBT(=Community Based Tourism)は、旅行者をサポートしてくれる非営利団体で、首都ビシュケクをはじめキルギス各地に事務所があります。

ツアーの開催、交通手段や宿泊施設の手配、遊牧民家庭の紹介など、旅行者のためのよろずサポートを無償で行う、大変ありがたい組織です。私も、ボズサルクンでのホームステイをCBTにアレンジしてもらいました。

■詳細情報
・名称:CBT(Community Based Tourism)ビシュケク事務所
・住所: 58, Gorkiy Street. (intersection with Matrosov St.), 720031, Bishkek, Kyrgyzstan
・地図:
・アクセス:アラ=トゥースクエアからタクシーで10分
・営業時間: 10:00~17:00
・定休日: 土曜日、日曜日
・電話番号:+996 312 443331もしくは+996 770 443331
・公式サイトURL:https://cbtkyrgyzstan.kg/

申し込みの流れ

ホームページに記載されているメールアドレスや電話番号宛に連絡しておくと、事前に希望に沿った遊牧民家庭を紹介してくれます。

もしくは、直接CBTオフィスを訪れて、その場で相談することも可能です。当日でもその場ですぐに希望に合う遊牧民家庭を紹介してくれ、遊牧民家庭までの移動手段も手配してくれます。

遊牧民家庭への移動は、CBT事務所の近くに遊牧民家庭がある場合、ホームステイ先の遊牧民が車で迎えに来てくれるか、タクシーを利用します。遊牧民家庭が近くにない場合は、乗り合いタクシー(マルシュルートカ)を利用して、遊牧民家庭の近くの村まで移動し、そこで遊牧民と待ち合わせをするか、そこからタクシーでボズウィまで移動します。

気になる料金は?

CBTは非営利団体なので、仲介料などは一切発生しません。遊牧民家庭での宿泊費、食費、乗馬代は、遊牧民家庭と直接交渉になります。

各家庭によって料金は異なりますが、参考までに私の場合を紹介します。

・宿泊費(1泊2食付き):1,200円/1人
・3時間の乗馬代:1,000円/1人
・最寄りの村までの送迎費(往復):2,000円/1グループ

事前にCBTの職員さんに料金の相場を確認しておき、明らかに相場よりも高い金額を提示された場合には、CBTの職員さんに相談してください。

キルギスの遊牧民家庭でディープな体験をしてみませんか?

キルギスの大自然が作り出す絶景、たくましく生きる遊牧民との触れ合いなど、唯一無二の体験ができる遊牧民ホームステイ。

世界的に見ても、遊牧民が存在する国は限られているばかりか、遊牧民の数は年々減ってきているそうです。今こそぜひスマホもテレビもない、昔ながらの自然と寄り添う生活を体験しに、キルギスを訪れてみるのはいかがでしょうか。

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