ニューヨークで活動するアーティスト、山口歴の作品が「WALLS TOKYO」に展示中だ。会期は10月8日まで。絵具の筆跡を貼り合わせる表現手法「カットアンドペースト」で知られている。HIP HOPのテクニック「サンプリング」から着想を得ており、キャンバスに限らず、彫刻、ビルの壁面等、様々なスタイルで制作している。

ペイントから生まれる立体表現の豊かな表情と力強さは、間近で見ると画像の何倍もの迫力がある。

2015年には、香港SOGOの30周年記念アーティストに選出され、30メートル大のビルボードを飾った。そのほかにも世界中で作品を発表し注目されている。どれも誰が描いたのか一発でわかる強烈な個性の塊だ。

ブロンクスにあるアーティストレジデンス「Andrew Freeman Home」に所属し活動しているという彼、出身は東京である。84年生まれで、小さな頃からストリートカルチャーを間近に感じていた。

東京からブロンクスへ

芸大受験に失敗してからの2年間、彼は父親が経営していたオゾンロックスというブランドのデザインスタジオで雑用をしては、昼夜関係なくデザインの仕事に携わった。破天荒な父親の仕事仲間に朝から次の日の朝まで必死に食らいついていったそうだ。

21歳でどう生きていくかを考え、アーティストとして食っていくと決意。改めて振り返ると何物にも代え難い時間だったと心から感じるが、当時は未来が見えずただただ辛かったという。

NYに移ると、現代アーティストのMatsuに師事。スタジオの仕事と並行して、自分の絵を家で描いて提出した。村上隆の芸術に関する本を片っ端から読んで文章にするなど、5年間みっちりとスパルタ教育を受けた。結果、美大には行っていないが、ブルックリン・グリーンポイントにあるスタジオで芸術を学べた。

気合・根性・熱意!みたいなワードがつい思い浮かぶエピソードだ。「HEAPS」のインタビューではこうコメント。

「『カッコイイ作品をつくり続けていれば、いつか必ずスポットライトが当たる順番はまわってくる。そのときのために、常に準備しておけ』。ずっと先輩たちから、そう言われてきた。いま、ひょっとしたらその順番がきているのかもしれない」

ここで、展示中の作品を一点紹介。画像は拡大して見ることをオススメする。

「ひたすら自分がカッコイイと思う表現を追求することを心掛けている」

この言葉には、歴史にリスペクトを払いながら自分の経験を基にした新しいエッセンスを取り入れ、常に既存のスタイルや方法に疑いを持ち、誰もやったことの無い新しいことに挑戦する、そんな意志が込められている。

WALLS TOKYO」は現代アートのセレクトショップで、山口歴のほか、世界中から集まった作品が閲覧・購入できる場所。この機会にぜひ。

【開催概要】

■展示「UNDERGROUND MENTALITY」(Meguru Yamaguchi)
■会期2016年9月8日-10月8日
■営業時間水~金曜日 12:00-19:00
土・祝日 10:00-18:00
■定休日日〜火曜■住所〒112-0001東京都文京区白山2-14-18 (Google Map

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