東京でイルカと泳ぐ、入島率50%のドルフィンスイム聖地・御蔵島で感動体験を!
こんにちは、絶景ハンターのまゆみです。
以前ご紹介した天草地方のイルカウォッチング、こちらは野生のイルカを船上から眺めるタイプのものですが、じつは日本にも野生のイルカと一緒に泳げるスポットがあるのをご存じですか?
そのもっとも代表的なスポットが、東京伊豆諸島のひとつ「御蔵島(みくらしま)」。
御蔵島以外でも、東京・利島、小笠原諸島、石川県能登半島、和歌山県南部などでドルフィンスイムが楽しめますが、その数は数頭~10数頭規模の小さな群れ。100頭以上が生息する御蔵島には及びません。
野生のイルカとふれあえて、癒やされること間違いなし!今回はそんな御蔵島のドルフィンスイムをご紹介します。
野生のイルカが140頭も!?東京の秘島「御蔵島」とは
東京から南の海上へ約200km、竹芝桟橋からフェリーでおよそ7時間半のところに存在する「御蔵島(みくらじま)」。周囲約16km、面積約20平方km、人口わずか300人程度と、東京諸島の中でもひときわ小さな離島のひとつです。
太平洋の黒潮暖流の激しいうねりにさらされる御蔵島は、文字通り、断崖絶壁に囲まれた“絶海の孤島”。
その一方で、黒潮がもたらす大量の雨は御蔵島の豊かな森と海を育み、そこに野生のイルカがすみついて、いつしか人間とイルカの共生が図られてきました。
御蔵島周辺の海域に生息するイルカは、やや小柄なミナミハンドウイルカ。
御蔵島では、イルカの実態を把握するために1994年から毎年個体識別調査が行われており、現在確認されている数はおよそ140~150頭前後。
イルカとふれあえるスポットは数あれど、100頭以上もの野生のイルカと出会えるチャンスに恵まれているのが御蔵島最大の魅力となっています。
御蔵島上陸問題その1|就航率5~6割!?上陸できるかは時の運
じつは御蔵島でドルフィンスイムを体験するには、クリアしなければならない2つのハードルがあります。
1つ目は「上陸問題」。
周囲を断崖絶壁に囲まれた御蔵島。島には桟橋がひとつしかなく、そこが上陸を決める生命線です。
しかも、黒潮や波風の影響を受けやすい御蔵島では、たとえ晴れていても海上で強風吹き荒れれば船が接岸できず、即欠航。他の離島に比べて圧倒的に不利な地理的条件となっています。
そのため、御蔵島への船は「“条件付き”就航」がほぼデフォルトです。
比較的海況が安定する初夏(5月~)以降は就航率7~8割と高めですが、台風の影響などで大気が不安定となる秋(9月以降)は6割前後に低下、ドルフィンスイムのシーズンが終わる11月以降から冬場にかけては2~3割にまで低迷し、もはや船での上陸は一か八かの賭けになってきます。
上陸できない場合、船は御蔵島をスルーして八丈島へ、あるいは三宅島へと運ばれます。そこで海況が安定するまで待機するか、もしくはヘリコプターで上空から上陸という手段もあります。しかし、1日2便(八丈島発と三宅島発各1便)、定員9名とごくわずか。
御蔵島上陸の最大の難関がここにあります。
御蔵島上陸問題その2|宿の予約はお早めに!宿争奪戦
越えねばならない2つ目のハードルは、「宿の確保」です。
御蔵島では、環境保全や持続可能な地域観光の観点から東京都版エコツーリズムが実施されています。
その規定によると、ドルフィンスイムの利用期間は「3月15日~11月15日」、さらに一日に出港できる船の数と定員数が厳格に定められています。
さらに、島内には7軒の小さな宿と6棟の村営バンガローしか存在しません。御蔵島への入島は原則日帰り禁止となっているため、宿の確保がドルフィンスイム参加権利を得るマスト事項となっています。
こうなってくると、受け皿の少ない御蔵島では当然、宿が争奪戦に。就航が比較的安定するシーズン、連休や土日はどうしても混雑を極めます。
比較的空いている平日や秋ごろの利用が推奨されていますが、どうしてもスケジュールに都合がつかない場合はとにかく”早めの計画・行動”が肝心です。
いよいよ体験!ドルフィンスイムの主な流れ
無事御蔵島に上陸できたら、いよいよドルフィンスイムです。今回は「スペシャルオレンジ」さんのツアーに参加させていただきました。
その主な流れを見ていきましょう。
まずはドルフィンスイムの準備から
必要な装備は、水着やラッシュガード(必要に応じてウェットスーツ)、フィンとマスク、シュノーケルの3点セット。自分で用意できない場合はレンタル可能です。
なお、ドルフィンスイム初心者や泳ぎに自信のない場合は、本番前に港付近で事前の講習を受けることもできますが、カナヅチの方や体力に不安がある方などは船上での観察になる場合があります。
また、酔い止めの薬も必ず飲んでおきましょう。多かれ少なかれ船は揺れ、水中では波にもまれます。イルカを前にして体調ダウンなんてことにならないよう、念のため飲んでおくに越したことはありません。
ブリーフィングを経て、いよいよ出港
御蔵島のドルフィンスイムは、午前・午後の各1回、一日あたり最大2回参加可能です。
まずは、ツアーの流れ、海のコンディション、ドルフィンスイムのルールなどの説明があります。簡単なブリーフィングが完了したら、参加するツアーの小型船へ乗り込みます。
持ち込むものはシュノーケリングセットと防水カメラ、防寒着など最小限にとどめましょう。
乗り込んだらライフジャケットを装着して、いざ出発です。
船長の合図があるまで船上で待機
ドルフィンスイムで一日にエントリー(入水)できるのは最大8回まで。
船長はその日の海況に合わせて、イルカがいそうなポイントや海の透明度、波の状態などを考慮し、よりコンディションの良いポイントを探りながら船を走らせます。基本的には島を一周しますが、海の状態によっては半周で終わることも。
イルカの群れを発見し、状態が良さそうなら「そろそろ入る準備をしてください」と声がかかります。
身支度を整えている間に、船はイルカの群れへ先回りし、船長より「右側からどうぞ」「左側から入ってください」など号令があって、はじめて入水します。
入水するときは、イルカを驚かせないように静かに海に入るのがマナーです。
インストラクターの指示に従って
ドルフィンスイム初心者や御蔵島の海に慣れていない人は、水中ガイドのそばで、指示にしたがって行動するのが安全です。
手招きと腕で指し示す方向へ泳いでいくと、いよいよイルカたちの登場!
とうとうご対面!野生のイルカに癒やされる
いよいよ、お待ちかねのイルカたちとのご対面です!運がいいと、一度に20~30頭もの大きな群れに遭遇できることもあります。
しかし、相手は野生動物。なかなか出会えない日や、数頭の小さな群れしか見つからない日も。
それでも、一日かけて一頭も見られないことは”きわめて稀”といわれるほど、出会える確率は高いんです。
筆者のように素潜りが得意ではなく、水面でパシャパシャしているだけの人にも、好奇心をもって目の前まで接近してくれるイルカもいます。
「おまえ、泳ぎヘタだな」
と言われたかのような冷ややかな一瞥ですが、それでも、「キュイーッキュイィーッ」というあの超音波の鳴き声まで聴こえてきて、もう興奮が止まりません。
水中ガイドやスキンダイビングが得意な人には、まるで一緒にダンスを踊るように楽しげにクルクル回って見せてくれるという、じつにうらやましい光景です。
ちなみに、この海中をフヨフヨ漂う黄色のゴミみたいなものは、イルカのフン。
御蔵島では、目視によるイルカの個体識別調査に加え、フンを採取してDNA解析し、イルカの生態調査を行っているとのこと。
イルカのフン、はじめてみました。
御蔵島の海には、もちろんイルカ以外にもいろいろな魚やウミガメなどが生息しています。
イルカが泳いでいる間は、魚たちはそれを避けて近寄ってこないことが多いのですが、このときは突如魚の大群が現れて銀色のトルネードが披露されました。
こんなミラクルに出会えるのも御蔵島ならではですね。
御蔵島はイルカだけじゃない!原生林でジャングル探検も
御蔵島というとイルカにばかりが目が行きがちですが、じつは島中が原生林とジャングルに覆われた太古の森の島でもあります。
幹周り14m、推定樹齢1,000年を超えるといわれるスダジイの巨樹を筆頭に、島には幹周り5mを超える巨樹が500本以上も生息し、それは全国の巨樹総数の約5%に相当するのだそう。
現在はエコツーリズムの規定により、ほとんどの登山コースにはガイドが必須です。
興味がある方は、宿泊施設に相談したり、御蔵島の観光案内所でガイドの紹介をお願いしたりしてみてはいかがでしょうか。
行きにくいからこそ価値がある!御蔵島の大自然で感動体験を
東京・青ヶ島に次ぐ、もっとも上陸困難な島のひとつ、御蔵島。
観光地としてはとにかく不便で、コンビニはおろか居酒屋は1軒、小さな商店が数軒ある程度で、現金決済が未だ主流。
タクシーもなければ公共交通機関もなく、里は坂道だらけで、出歩くのもひと苦労です(自転車に乗るのも禁止)。
しかし、さまざまな不便を強いられてもなお「また行きたい」「行ってみたい」と思わせる魅力が、御蔵島には詰まっています。
行きにくいからこそ価値がある、何もないからこそ得られる体験がある。みなさんもぜひ、御蔵島を訪れて、感動体験を味わいませんか?