国宝とは、国が指定した特別に保護すべき美術品や建造物のこと。これからも伝承していきたい歴史が詰まっています。大分県にはそんな国宝が全部で4つあり、実際に見られるのはそのうち3つ。

今回大分県にある3つの国宝を紹介すると共に、国宝になった理由である「神仏習合」について、現地に取材に行ったライターの桃(@XxPeach)がご紹介します。

神道と仏教が一つになった「神仏習合」とは

大分県には4つの国宝がありますが、その多くが神仏集合と関わりがあります。

その昔、神を拝めていた人たちは神道として神社へ、仏を拝めていた人たちは仏教としてお寺へ向かいました。何かあるたびに、どちらが素晴らしい宗教なのか、どちらを拝めるべきなのか、争いが絶えなかったそう。

そこで、その争いを止めるために、神道も仏教も一緒になろうということで、神社の境内に大仏を、お寺の中に鳥居を作り、お互いを迎え入れました。

争いが絶えなかったとはいえ、海外では考えられない「別々の宗教を一つにしてしまう」という発想は珍しいもの。これからご紹介する場所は「神仏習合の証である」として、国の宝となりました。さらに、これから紹介する宇佐神宮は、その神仏習合が日本国内でも早くに始まったとされています。

次から大分県で見られる3つの国宝を順番にご紹介します。

富貴寺の阿弥陀堂

富貴寺は、平安時代に建てられた九州で一番古い建造物として知られる、歴史あるお寺です。日本三阿弥陀堂(宇治平等院鳳凰堂、平泉中尊寺金色堂)の一つとして有名です。

国宝に指定されているのは、九州最古の建物である阿弥陀堂。極楽浄土を願う阿弥陀如来像と、その周りにはすでに色が落ちてしまっていますが、極楽浄土の世界を描いた壁画が描かれています。

ちなみに、以前の色が落ちていない柄は、阿弥陀堂の中にある説明書きに描かれているので、色が落ちてしまっている今の壁画と比べてみてください。

阿弥陀堂に使われている木は、とても強い貴重な茅材。そのため、1300年経ってもきしまないのが特徴です。阿弥陀堂の周りにはイチョウの木もあるため、秋は紅葉が非常に綺麗だそう。訪れたときは緑で綺麗でしたが、訪れるなら紅葉の時期が一年で一番おすすめです。

■詳細情報
・名称:富貴寺
・住所:〒879-0841 大分県豊後高田市田染蕗2395
・地図: ・アクセス:昭和の町から車で約15分
・営業時間:8:30~16:30
・定休日:なし
・電話番号:0978-26-3189
・公式サイトURL:https://www.showanomachi.com/spots/detail/139

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宇佐神宮の本殿

一時、「USA」のYoutube動画で話題になった、大分県宇佐市。ここにあるのは大きな大きな宇佐神宮です。

宇佐神宮は、鶴岡八幡宮などの八幡さまを祀る総本宮。御祭神は「八幡大神」「比売大神」「神功皇后」で、八幡大神は応神天皇のご神霊のため、10年に一度行われる臨時奉幣(りんじほうぺい)祭(勅使祭)が有名です。この祭典前夜には提灯行列や花火で、宇佐市民が出迎えるため、町中が賑やかに。

本殿へ向かう途中にあるのが夫婦石。上の写真のように大きな三角形の石が二つ並んでおり、写真は一人ですが二人で同じタイミングで踏むことで、ずっと一緒にいられると言われています。

一番奥にあるのが、国宝に指定されている宇佐神宮の本殿。特別な日しか開かないため、基本的にいつ訪れても閉じたままです。

宇佐神宮は日本でも早い段階で神仏習合が行われた場所として知られており、今はもうなくなってしまいましたが、境内には弥勒寺というお寺の跡が残っています。

本殿のすぐ隣にある、樹齢800年の大きなご神木を触って願い事をするとかなうと言われています。元EXILEメンバーのUSAさんが名前にあやかりヒット祈願をしたこと、元HKT48メンバーで大分県出身の指原莉乃さんが総選挙前に祈願しに訪れ見事一位を獲得したことで、さらに有名になりました。

敷地面積は60ヘクタール。なんと、東京ドーム約13個の広さです。かなり広くたくさん歩くため、所要時間は2〜3時間と思っておくのが良さそうです。

■詳細情報
・名称:宇佐神宮
・住所:大分県宇佐市南宇佐2859
・地図: ・アクセス:宇佐駅からバスまたはタクシーで10分
・営業時間:5:30~19:00(4月〜9月)、6:00~19:00(10月〜3月)、祈願祭の受付は9:00~16:00
・電話番号:0978-37-0001
・公式サイトURL:http://www.usajinguu.com/

国宝臼杵石仏の臼杵磨崖仏

国宝臼杵石仏は、たくさんの歴史ある石仏が集まる場所。全国にある石仏のうち、7〜8割が大分県にあり、そのうち5〜6割が臼杵にあるそうです。

全61体の石仏が「ホキ石仏第1群(堂ヶ迫石仏)」「ホキ石仏第二群」「山王山石仏」「古園石仏」と、全部で4つの群に分かれて展示されています。

この地域は11世紀〜13世紀ごろは、京都の貴族の領地でした。石仏は平安時代後期から鎌倉時代に彫られたものとされていますが、なぜこんなにもたくさんの石仏を作ったかは、わかっていません。当時は極楽浄土がテーマのテーマパークとして親しまれていたという説もあります。

ここも神仏集合に大きく関わっており、鳥居をくぐった先に仏像が、さらにその上に神社があるという場所も。

ホキ石仏第二群

阿弥陀像は立っているものと座っているものの2種類がありますが、ホキ石仏第二群の阿弥陀像は座っています。立っているものは極楽浄土へ迎え入れており、座っているものは私たちが救われるためにはどうしたらいいか考えていると言われています。

ちなみに、この仏像は下瞼が二重になっていて、非常に高い技術だそう。京都の仏師が直接掘った可能性があるとも言われています。

ホキ石仏第一群

端にいる阿弥陀像は全部で9体。仏教には生まれてから9通りの生き方があるとされており、どの生き方でも最後は極楽にいけるということを表しています。

春分・秋分の日には真ん中の像に光が当たるように設計されています。

山王山石仏

山王山石仏の仏像は、比叡山延暦寺を仏像化したと言われているそう。すべての仏像の中で、一番高いところに位置しているので、一番偉い仏像です。さらに、この上には日吉神社があり、神仏習合の一つとなっています。

古園石仏

この仏像が一番新しいと言われており、顔つきも他の仏像とは少し異なります。ここでは、石仏香という焚いて願い事を叶えてもらうお祈りができます。

焚けるお香は「学業成就」「良縁結願」「子宝安産」「就職成就」「商売繁盛」「家内安全」「身体健全」の7つ。

どれも1本100円なので、お金を入れてお香を取ります。火をつけたら立てて、手を合わせてお願いをします。

そろそろ30歳が近くなって結婚願望が強くなる一方の私。選んだのはもちろん、「商売繁盛」です。これからは女もバリバリキャリアを積んでいく時代。仕事大好きな私はとにかく稼げる妻になるのが夢なので、迷わず手にとります。

火をつけたら石仏香に立てて、手を合わせます。


さらに、その隣には実際に願いを文字に起こして叶える祈願用紙もあるので、忘れずに書きました。


ちなみに、ここではリストラ除けもあるため、この不況の中まだまだ仕事を頑張らなければいけないお父さんも、手を合わせにきてください。

■詳細情報
・名称:国宝臼杵石仏
・住所:〒875-0064 大分県臼杵市大字深田804-1
・地図:
・アクセス:臼杵ICより車で約5分、臼杵駅からバスで臼杵石仏下車
・営業時間:6:00~19:00(4月〜9月)、6:00~18:00(10月〜3月)
・電話番号:0972-65-3300
・料金:550円(高校生以上)
・公式サイトURL:https://sekibutsu.com/

大分の国宝から日本の歴史を学ぶ旅

大分県と言ったら真っ先に日本屈指の温泉街・由布院が挙げられますが、大分には温泉以外の観光スポットがたくさんあります。国宝巡りもその一つ。

大人になると、なかなか日本の歴史に触れる機会が少なくなり、これまで見てこなかった景色を求めて旅する人が多くなります。大分の国宝を巡って、日本の歴史を振り返ってみてはいかがでしょうか。

All photos by 桃

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