旅行業界が大きく転換期を迎えている昨今。これまでの消費的な旅ではなく、むしろ再生産していく旅のカタチに目が向けられています。

例えば、ワーケーションやステイケーション、マイクロツーリズムなどがその具体例です。今回私は、奈良県吉野町と株式会社Huber.が手がける「遊ぶ広報」というプロジェクトに参加し、2泊3日で吉野を満喫してきました。

桜が有名すぎる吉野で、あえて閑散期の初夏に訪れてみたところ、充実感でいっぱい。吉野の新たな表情も垣間見ることができました。

また地の魅力だけでなく、”人”の魅力もたっぷりと味わうことができたので、振り返りながらレポートしてみたいと思います!

コロナ禍に適応!「遊ぶ広報」プロジェクトとは?



昨今、奈良県の各自治体と連携しながら、旅行事業を手がけてきた「株式会社Huber.」。その内容は、訪日外国人向けガイドで得た知見を、自治体にフィードバックしつつ、受け入れ環境の整備や観光PRを強化する、というものでした。



しかしコロナ禍を経て、訪日外国人がまったくいなくなってしまいます。そこで、今回紹介するリモートワーカー向けの「遊ぶ広報」プログラムへと舵を切ることになったのです。

「遊ぶ広報」プログラムとは、地域で数日間過ごしながら、その内容をSNSに投稿。プロジェクト終了後にアンケートに答えれば、滞在の補助が得られるというもの。

既に奈良県では、今回参加をした吉野町のほか、十津川村や下北山村で行われており、奥大和地域で広域連携が進んでいます。※現在、すべての地域で受付は終了しています。

吉野で過ごした一日のタイムテーブルをご紹介

今回は2泊3日で吉野を訪れたのですが、その2日目に株式会社Huber.の社員さんに、吉野をアテンドしていただきました!とても特徴的な一日だったので、タイムテーブル形式でご紹介したいと思います。

6:30 / 金峯山寺で勤行体験

窓に差し込む日の光で目を覚ましたら、宿から徒歩10分の「金峯山寺(きんぷせんじ)」で約40分の勤行体験。

信仰と自然が融和する、修験道の聖地ならではの内省のひとときを過ごしました。世界遺産を独り占めできる機会は、なかなかないのではないでしょうか?

7:30 / 花矢倉展望台から雲海鑑賞

勤行後は車で吉野を一望できる「花矢倉展望台」へ。桜の頃は賑わうこの場所も、初夏はとても静寂。前日の雨の影響で、眼下には幻想的な雲海が広がっていました!

緑に抱かれるような清々しさと、ふっと肩の荷が下りる癒やしの時間は、心に潤いをもたらしてくれます。

10:00 /吉野山のお店巡り

宿でゆったりと過ごしたら、株式会社Huber.のお二人(原崎さん・品川さん)に吉野を案内していただきます。まずは吉野山のお店巡りから。

少しシャイな吉野の方々ですが、アテンドを通じて一気に壁がなくなりました!人が魅力の吉野を早速楽しみます。

吉野山には柿の葉寿司のお店がたくさん。柿の葉寿司とは、鯖や鮭の押し寿司を柿の葉で包んだものです。お店によって少しずつ特徴があり、好みが分かれるのだとか!

私は少し塩っ気があるものが好きです。購入してから1日ほど寝かせるとおいしいという情報も、お店の人とのコミュニケーションならでは。

11:00 / 吉野杉の家

2016年に建設が行われ、東京で開催されたHOUSE VISION2016東京展にてお披露目された「吉野杉の家」。現在は、吉野町とAirbnbの共同運営で、宿泊施設として一般利用されています。

吉野川のほとりの、自然と暮らしの近さが垣間見えるロケーションも素敵でした。

11:30 / 津風呂湖でシーカヤック見学・散策

初夏の吉野でお勧めしたい場所とおっしゃっていた、「津風呂湖」へ。昔バイクのツーリングで来たことはあったものの、ここまで緑が美しい場所だとは思いませんでした。

当日は、子供達がシーカヤックの活動中!カヤックのボートや道具についても丁寧に説明していただきました。なんと来年、世界大会が開催されるのだとか。

中でもお気に入りになった場所が「みかえり橋」。湖の中央近くにある全長約150メートルの大きな吊り橋で、歩いて渡ることができます。

津風呂湖は巨大なバスが釣れることでも有名で、ボートに乗る釣り人の姿と、水面に映り込む美しい新緑の景色を楽しみました。

13:00 / 古民家カフェ「くにす食堂」でランチ

ランチは金土日に開かれる「くにす食堂」へ。地域おこし協力隊だった方が、地域のお母さんたちと一緒に運営しています。地元のありのままを、地元の人の手で協力しながら提供する、何ともほっこりするお店です。

年季の入った古民家はとっても風情ある面持ち。個人的には、古民家に添えられるコンクリート塀や自転車がたまりません!

日替わりランチは、地元のお米や野菜をふんだんに使った家庭料理です。どこか実家に帰って来たような安堵感を感じつつ、優しい味付けの料理を堪能。お腹も心も満たされました。

デザートの自家製チーズケーキやプリンも絶品!食後のコーヒーを飲みながら、ゆったりと談笑に耽ります。本当に落ち着く空間です。

13:45 / 梅谷醸造元・宮瀧醤油

豊かな自然をバックグラウンドに、さまざまな産業が盛んなのも吉野の特徴です。”宮瀧醤油”で親しまれる「梅谷醸造元」もその一つ。

私たちが訪れた日にも、たくさんのお客さんが名物のポン酢醤油を求めて出入りしていました。おっとりとしたお父さんの雰囲気にも和みます。

14:30 / 櫻木神社

吉野はさまざまな歴史が層となっているのも特徴です。よく知られているのは、後醍醐天皇や西行、豊臣秀吉といった人物ですが、この櫻木神社には、飛鳥時代に壬申の乱で勝利した大海人皇子(のちの天武天皇)が祀られています。

かつて皇子が潜幸したというひっそりとした雰囲気をそのままに、境内には見上げるほどの杉の巨樹。象の小川の清らかな流れも印象的です。

15:00 / 高滝ハイキング

櫻木神社からもっと山奥に。道の終点から徒歩10分ほど進むと「高滝」に到着します。高さ15メートルとやや小振りながら、滝の下流には苔むした岩々が転がり、どこかジブリのような世界観!

その一方で、周囲の森と一体になり、絶え間なく水が流れていく、生命と循環を感じさせるそのたたずまい。修験道が根付く吉野ならではの雰囲気ともよく合致している場所です。

16:00 / 吉野山で夕ごはんのお買い物

宿に戻る前に、吉野山で夕ごはんの調達。朝に顔つなぎをしてもらえたため、お店の人とのコミュニケーションを楽しみながら、充実したお買い物となりました!

職人気質の柿の葉すし「たつみ」、朗らかな老夫婦が営む「青木酒店」、ざる豆腐が絶品だという「林とうふ店」などなど。

18:00 / 宿のお部屋で夕ごはん

そして宿に帰って来たら、購入したご飯やおつまみを日本酒と一緒に。質素な雰囲気ですが、食べ進めてみると、とっても豪華!豆腐ってこんなに甘かったっけ?

また他のお客さんやゲストハウスのオーナーさんからおすそ分けもいただき、夜までワイワイと賑やかなひと時を過ごしました。

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春だけじゃない。時間とともに変化していく初夏を満喫する

今回滞在した中で、まず強く印象に残ったのは、「風景の変化」です。吉野山は、町の中でいち早く太陽の光が届く場所。日の光と共に目覚め、日没とともに静寂な一日の終わりへと向かいます。

霞舞う早朝の情景は、まさに神仙の世界を思わせる面持ち。信仰がねづく山岳風情を引き立てています。

一方で、夕方には真紅の空が迎えてくれました。奈良と大阪を隔てる大和葛城山の向こうには、まるでもう一つの金峯山寺の屋根のような雲が!一期一会の奇跡を目の前に、ゲストハウスのみんなで歓喜の瞬間を過ごしました。

また生憎の天気だった1日目ですが、雨と霧が漂って、神秘的な雰囲気に。太陽が沈むと、ふわっと優しいオレンジ色に包まれました!

同じポイントでも時間と天候条件によってさまざまな表情を見せてくれる。吉野山が神宿る場所と言われるゆえんを、感覚的にわかった気がします。

良い意味で何もない。落ち着きを大切にしたワーケーション



今回滞在した吉野山は、良い意味で何もありません。物や誘惑にあふれていない場所だからこそ、仕事に打ち込むことができます。

その一方で、PCから少し離れれば、どこか神妙な空気感と、心が洗われるような美しい風景に囲まれ、サクッとリフレッシュすることが可能。朝の勤行体験は、一日のはじめに心機一転するには有意義な時間でした。

また吉野山の一角にある「TSUJIMURA & cafe kiton」 ではワーケーション環境の整備のほか、今後e-Bikeのレンタルも行う予定とのこと。

道の勾配が厳しく、際限のない自然が広がっている吉野山。e-Bikeがこれほど活きるフィールドは中々ありません。仕事の合間に自転車でリフレッシュできたら楽しいだろうな!とつい妄想を膨らませてしまいます。

ふとした魅力に出会える。知らなかった吉野の表情を再発見!

一目千本と言われるように桜が有名な吉野ですが、今回はその先入観を脱却させてくれた滞在となりました。例えば新緑の美しさや花の風景。

4月下旬から5月上旬には、桜の木々が鮮やかな緑の山肌をなし、足元はツツジやシャガの花など、可愛らしい花々に彩られます。史跡と自然が織りなす風景には、ひたすらに心を奪われてしまいました。

また桜の最盛期に”原宿の竹下通り”を彷彿とさせるメインストリートは、初夏のシーズンには閑散としています。しかしながら、山と信仰からなる日本の原風景に浸るにはもってこい。

午前中に歩いているのはハイカーぐらい。マイペースに、歴史の軌跡を訪ねるお散歩の時間は、ささやかな充実感を得られます。

幸福感が何倍にも!アテンドによって地域と距離が縮まった

近年、移住する、多拠点生活の場として選ぶなど、吉野の輪に加わる人が増えています。その大きな理由として、よく吉野の”人の魅力”が挙げられるのですが、一度の旅行でそれを感じるのはなかなか難しいでしょう。

しかし、今回の「遊ぶ広報」プロジェクトでは、その魅力を思いっきり満喫することができました。吉野を大好きで、吉野の人たちと仲のいい株式会社Huber.の社員さんがアテンドしてくれたからです。

中でもそれを強く感じたのは、夕ごはんを吉野山で購入したひととき。「また来てくれたね」と笑顔で迎えてくれるお店の人々と、一気に壁がなくなり、お買い物の満足感が高まりました。

また実際食べているときには、お店の方の顔が頭に浮かび、おいしさが倍増!食事が、よりいっそう思い出深いものになりました。

一過性的な、消費的な旅行でなく、満足感や親近感を高め、自然と再訪を促すような旅のカタチ。こんな時代だからこそ求められる旅のスタイルではないでしょうか?

不思議と人を引き寄せる。「ゲストハウスKAM INN」が旅の立役者

もう一つ「ゲストハウスKAM INN」に宿泊できたのも大きかったように思います。宿をオープンした女将の片山さんは、吉野への移住者にして、なんと現役の山伏!ゲストハウス運営のかたわら、空き時間を見つけては、紀伊山地の山々で修行されています。

そんな片山さんは、吉野の楽しみ方に精通しているだけでなく、気さくで旅人を温かく迎えてくれるため、個性的な旅人が集まるのもポイントです。

初めての宿泊でしたが、早速片山さんや他のお客さんと仲良くなり、夕ごはんをご一緒させていただきました!旅の一期一会って本当に刺激的で、自分にとって大切なインプットの時間だと思います。

新たな価値観や考え方に触れ、吸収する中で、知らず知らずのうちに一歩成長させていただく。旅がやめられない一つの理由と言えるでしょう。

吉野のこれからに目が離せない!

今回は、最近ご縁をいただいている奈良県の吉野町について、おもしろいプロジェクトとともに、その魅力を書き綴ってみました。

どんな滞在になるか、正直まるで予想すらできなかった初夏の吉野旅でしたが、訪れた後となっては、充足感でいっぱい。

新緑が本当に美しく、花々が映え、清々しさが全開!そして時間や天気の経過に伴って、もたらされる一期一会の風景変化には、強く心惹かれました。

その一方で、地の魅力の中に、人の温もりや個性が溢れており、吉野に暮らす”人の魅力”を存分に感じることができました。まさに「再訪したい!」と思うきっかけとなる”幸福感”が、ものすごく得られた旅になったと思います。

「遊ぶ広報」プロジェクトの受付はすでに終了していますが、吉野と株式会社Huber.では今後も地域を盛り上げるおもしろい試みを継続していく予定だそう。ぜひ今後の吉野の動向に注目してみてくださいね。

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