山椒、檜、玉露… “京都ドライジン”の香りを演出する「和のもの」たち
少し前のことだ。お酒好きの友人が「いいから、これ一度飲んでみて!」と、大発見をしたというようなテンションでLINEをしてきた。“何ごとか?”と思いながら話を聞いていると、「季の美 京都ドライジン」というお酒がとにかくおいしかったらしい。お値段は700mlで5000円。けっこういい値段ということもあって一旦保留にしていたんだけど、その後何度も何度も言ってくるので、ついに、この前新宿伊勢丹(販売店はHPへ)まで行って買ってみた。
「いい香り…(だけど、なんかこれまで味わったことがないような?)」。
という私のコメントでは細かいイメージまで伝わらないだろうから、ここで、公式のテイスティングコメントを紹介する。
京都の山々の神聖な空気のような透明感。瑞々しい柚子のアロマ、そして山椒が竹林に漂う霧のように降り注ぎます。ジュニパーが和のフレーバーにうまく溶け込みフィニッシュにかけてジンジャーのスパイスが顔を出します。
なんとなく、雰囲気をおわかりいただけただろうか。
繊細で、でも複雑で。そんな味わいを演出するのは
ここまでの段階で、少しネタバレしてしまっているのだが、「季の美」には、けっこう意外なものが入っていたりする。ここで一挙紹介する。
■礎/ジュニパー、オリス、檜
ここが全体の半分を占め、味わいの骨格を形成する。
■柑/柚子、レモン
日本国外ではほとんど栽培されていない日本固有の柑橘「柚子」で、他のジンにはない個性を表現。
■凛/山椒、木の芽
オリエンタルでアロマティックな芳香を放つ「山椒」は、香味をしっかり引き締める。
■辛/生姜
「生姜」のジューシーさ、ピリッとした辛さが、味わいを一層複雑なものにする。
■芳/笹、赤紫蘇
全体にフルーティ&フローラルさをプラスする、名脇役のような存在。
■茶/玉露
宇治の茶を使用。日本らしい芳香とほのかな甘さを与え、すべてのボタニカルを上品にまとめあげる。
そして、これらは、上の6つのグループごとに別々に蒸溜される。そうすることで、個々のボタニカルの個性を最大限に引き出せるのだそう。こんな手間のかかる方法をとっている蒸溜所は世界的にもそうそうないという。「雅」と表現するのがふさわしい「季の美」の味わいは、選びぬかれた11種類のボタニカルと、独自の製法から生み出されているのだ。
もうひとつ、忘れてはならぬ日本の恵み「ライススピリッツ」
世界で蒸溜されているほとんどのジンの原酒は、小麦や大麦といった穀物などをベースとした「ニュートラルスピリッツ」を使用するという。「季の美」の場合はここに、「ライススピリッツ」が使用されている。お米ならではのほのかな甘みとマイルドさ・・・。「季の美」特有の柔らかさを出すために「ライススピリッツ」はもっとも重要な原料のひとつなのだ。
東京でも大阪でも北海道でもなく、なぜ京都?
「季の美」の雅な世界観は、味わいだけにとどまらない。ボトルには、日本で唯一江戸時代から続く唐紙屋を継承する「雲母唐長」が文様監修したデザインがほどこされる。
そして、ここまででお伝えしていなかったが、そもそも「季の美」をつくっているのは、2016年に誕生した日本初のジン専門の蒸溜所「京都蒸溜所」。数ある日本の名所のなかから京都を生産の拠点に選んだのだが、“どうして京都なのか?”の答えはいたってシンプル。
「それは京都でしか成し得なかったから」
京都、そして街に根付く歴史への誇りという潜在的な感覚こそ、京都蒸溜所がジンで表現したいこと。「雲母唐長」をはじめ、数百年来この街で受け継がれている織物や陶芸などの数々の伝統は、この街から得られる人々のインスピレーションが支えている、と京都蒸溜所は考える。
そんなクラフトに適した場所で、厳選されたボタニカルや地元の原料、伝統文様など「和のもの」たちが融合し、唯一無二のジンができるのだ。
いつか、京都の人々が、過去千有余年に渡る京都の伝統のひとつとして受け入れてくれることを夢見て、京都蒸溜所はこれからもジンを蒸溜し、思いを表現していく。