港がある町は、旅人に寛大だ。

神奈川県横浜市。どこよりも先駆けて大勢の人が出入りし、多様な文化が行き交うことで栄えた港街・横浜に、新しい旅のスポットが誕生したと聞き、さっそく泊まりに行ってみた。

横浜中華街の中心部にオープンした「HARE-TABI Traveler’s inn yokohama(ハレタビ トラベラーズ イン ヨコハマ)」は、ドミトリーのような密集感のなかで、ホテルのような個室の安らぎと、ホステルのような共有スペースでの交流も実現した、ジャンルレスでニュータイプの宿だ。

「ハレタビ」という名前には、ここに泊まる人の旅が、日本古来の “ハレの日であれ” という思いが込められている。

“横浜感” の余韻を全身で感じるインテリア

「横浜に遊びに来てくれた人に、宿にいる間も街の趣(おもむき)を感じてほしいと思っています」

そう語るのは、ハレタビを展開する株式会社アミナコレクションのハレタビ事業部長・坂西俊郎(ばんざい としろう)さん。同社デザイナーの濱田修(はまだ おさむ)さんと共に、宿泊利用者がいかに快適で、同時に、他では味わうことができない唯一無二の滞在時間を過ごしてもらえるか、と考えて内装をデザインしたという。

確かに、初めて訪れた街を堪能したあとで、宿泊先の内装は他の街で目にしたそれと変わり映えがしないことは多い。それで仕方ないとも思っていたが、なるほど、旅先での雰囲気を宿のなかでも提供してくれるとは新しい。

古き良き時代を誇る横浜らしい、重厚なカラーリング。中華街のなかという立地とも相まって、洋の東西を問わない空間デザイン。横浜が発祥といわれる水道管をリプロダクトした照明や、個性的なカードホルダー。

そして、各所に映し出された1980年代の横浜。

写真家の植田敏之(うえだとしゆき)氏が撮りためたモノクロ写真は、当時の息づかいが伝わるかのようにリアルで、この風景のなかに自ら迷いこむのも楽しい時間だ。

細部まで配慮されたデザインに適度な「非日常」を味わえる

フロア内は、女性専用エリアと、男女共有エリアに分かれているため、女性のひとり旅や女子旅にも最適。広々としたパウダールームは使いやすく、船内を模したようなデザインに遊び心がある。女性専用スペースであってもフェミニン過ぎないため、ホステル未経験者からハードコアな旅人まで、どんな人にも快適だ。

共有スペースにはカウンターテーブルやソファが設置されている。なかでも足が投げ出せる幅広のソファは、肌さわりの良いクッションを抱きながらそのまま寝落ちしそうなほどに快適だった。

施設内のフリーWi-Fiでメールチェックやちょっとした仕事も対応できるし、適度に用意されたテーブルにはサービスの中国茶を置くこともできて、旅慣れた人たちが作ったであろう細やかな配慮を感じる。

肝心の個室もまた期待以上の快適さだ。朝までぐっすり寝れたのは、寝具の素晴らしさも関係していると思う。

個室の広さは縦にも横にも一般的なカプセルホテルより広く、服を着替えるのも問題なし。細やかに配慮された壁面や床の作りにより、隣の部屋の存在も気にならずに眠れる。サイドテーブルはブリーフケースをスライドインできる高さが確保されている上に、アンティーク調の象嵌(インレイ)が施されたデザインが美しい。

横浜がもっと好きになる程よい自由さ

チェックイン時にもらえる紙のパスポートも要チェックだ。

解錠に必要なセキュリティコードが確認できるほか、提携した周囲のショップ、飲食店、マッサージ店などがお得に利用できるクーポン付き。大手チェーンとはひと味違う、地元の人が日常的に利用するお店を楽しむローカル感は旅先での醍醐味といっても過言ではない。

また、セキュリティコードは、カードキーからの解放という快適さももたらしてくれる。

パスポートに掲載されたクーポンで買い物と夕食を済ませてからハレタビに戻り、共有ラウンジでメールチェックを終えたら、ふたたび夜の街に出掛けるのも楽しい。昼間の喧騒とはちがう顔をした、夜の横浜を歩き、月から見守ってくれる人に思いを馳せよう。

多国籍な雰囲気のお店で一杯グラスを傾けてから眠りにつき、朝は山下公園を散歩して、朝食には中華街名物お粥をチョイス。

ちなみにハレタビの階下には、こだわりの珈琲「横浜焙煎窯だし珈琲(よこはまばいせん かまだしコーヒー)」も併設されているので、食後のコーヒーまで楽しめる。

人と交流し、景色を楽しみ、地元を味わうといった五感に響く旅。この街を築いた多くの先人たちが、あなたのハレタビを演出してくれることだろう。

HARE-TABI Traveler’s inn yokohama

住所:神奈川県横浜市中区山下町216TEL:045-306-7102

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