高松から20分でアートの島。女木島で「瀬戸内国際芸術祭」を満喫してきた
3年に一度、瀬戸内海の島々を舞台に開催される「瀬戸内国際芸術祭」。4回目の開催となる2019年は、春・夏・秋に会期を分けさまざまなアート作品を展示しています。
瀬戸内国際芸術祭といえば直島の「赤かぼちゃ」や豊島の「豊島美術館」などが有名ですが、ほかの島にも面白い作品がたくさん。今回、私・阿部サキソフォンは相方の喜多ちゃん(@tbp_tmp12)を連れて高松から20分で行ける「女木島」を訪れました。
女木島までのアクセスはフェリーで
高松駅から徒歩20分ほどのところに、島行きの船が出る高松港があります。この港からはいくつもの島へ船が出ているので、ほかの乗り場に行かないよう注意してください。この「女木島・男木島」と書かれた売り場で切符を購入します。
高松から女木島までは片道370円。帰りの手間を省くためにも、行きに往復チケットを買っておきましょう。
ちなみに女木島は鬼ヶ島という別名も持っています。なんでも鬼ヶ島伝説が残る島らしく、この旅で鬼ヶ島洞窟も行ってきたので、気になる方はこちらのレポート記事をちらっとのぞいてみてください。とってもシュールで楽しい場所でした。
女木島に向かう船は、こちらの「めおん2」。船に乗ってから居眠りする暇もなく、あっという間にたった20分で女木島に到着します。
高松ー女木島間は朝8時から夕方18時まで1日6本運行していますが、日帰りでアート観光する場合は遅くとも14時の便に乗って向かいましょう。夏の繁忙期はダイヤが増えていますので、こちらの公式サイトをご確認ください。
アート作品であるカモメがお出迎え
女木島に到着すると、早速カモメが迎えてくれます。
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ん?カモメが迎えてくれる……?
確かにカモメです。カモメが突き刺さっています。
ダダダダダダダときれいに並んだ、笑ってしまうくらい大量のカモメが出迎えてくれます。
「カモメの駐車場」と題された、こちらの作品。なんとカモメは全部で300羽もいるそうです!風によってカモメの顔の向きが一斉に変わる様子は、見ているとだんだんクセになってきます。
・名称:カモメの駐車場
インパクト大の野外アート作品
ピアノのような、船のような……少し不思議なこちらの「20世紀の回想」は、グランドピアノと4本の帆による作品。ピアノから流れる音と波の音が呼応して、美しい旋律を奏でます。
小学校からピアノを習っていた私。ピアニストになりきって写真を撮ろうとしたのですが、この直前には大雨が降っていたためイスがびしょ濡れ……。
空気イスでピアノを弾いている感じにしましたが、全然サマになっていませんね。
こちらは瀬戸内国際芸術祭の作品ではないのですが、合わせて紹介させてください。香川県の離島に、なぜか巨大なモアイ像がいるんです。
イースター島のモアイ像再建のため、テスト用で作られたモアイ像のレプリカが立っているのだとか。近くで見るとかなりの迫力です。
・名称:モアイ像
・住所:〒760-0092 香川県高松市女木町15−22
photo by Abe saxophone
ちなみに、女木島のビーチは砂浜が白くてとってもさらさら。海の向こうには山が見えていて、絶妙なバランスです。ちなみに屋外の作品は、会期中以外も自由に見学できます。
映画好きにはたまらない「名画座」
女木島のアート作品の中で、映画好きの喜多ちゃんが一番興奮していたのが、このISLAND THEATRE MEGI 「女木島名画座」。古い倉庫を改装し、映画にまつわるイラストが壁にペイントされています。
中に入ると、往年のスターの肖像画がずらり。この味のあるイラストのタッチがたまりません。映画好きなら、この空間だけでも楽しめます。
映画好きの喜多ちゃんも、この笑顔です。隣には喜劇王チャップリンのシルエットも。
この作品の特徴は、壁に描かれたイラストだけではありません。階段を登って2階に上がると……
なんと本格的なシアターになっています!1日の間に数回ショートフィルムが投影されており、私たちが訪れた間もちょうど昔のアニメ映像が流れていました。
実際にイスに座って鑑賞。昔の映画館みたいで、なんだかわくわくします。
2階にも、映画ファンにはたまらないイラストの数々が描かれています。「これはあの映画だね!」「このシーンは最高だった」なんて、映画の話で盛り上がるはず。
・名称:ISLAND THEATRE MEGI 「女木島名画座」
・住所: 〒760-0092 香川県高松市女木町227
・開館時間:9:00-16:30
・定休日:会期中無休
・料金:300円
・公式サイトURL:https://setouchi-artfest.jp/artworks-artists/artworks/megijima/113.html
ちょっぴり大人な雰囲気漂う「女根」
次に向かった作品は「女根 / めこん」。なぜでしょう、なぜかいやらしい想像をしてしまいます。少しR指定っぽい響きですが……あれ?見た目は普通の小学校です。
作品の舞台は、現在休校中の女木小学校。本当にここで合っているのかな?と疑いながら中に入ってみると……
うん、なるほど。そう見えなくはない。
どことなく、蜷川実花さんを想像させる世界観です。主張強めなグリーンとオレンジがふんだんに使われており、非日常空間を作り出しています。個人的には嫌いじゃないです、むしろ好き。
そして奥の方に目をやると、巨大なオブジェがものすごい存在感を放っています。この雑多な感じといい、いたるところに見られる錆びといい、ジブリ作品の「天空の城ラピュタ」に出てきそう。ツタに体を覆われたロボット兵が現れそうです。
左上に光る女根のネオンもいい味を出していますね。
ああもう、こういう感じがたまらない。
小学校という見慣れた空間のはずなのに、アーティストの手によって全く別物に変化を遂げています。
訪問した時は見学者が少なかったため、スタッフの方が詳しく説明してくれました。実はこの巨大な物体は、ある植物の根っこなんだそう。何の植物だかわかりますか?
正解は、ライチの木。あのフルーツの木の根っこは、こんなにもびっしりと張り巡らされていて力強いものだったなんて、驚きです。
スタッフの方に言われて気づいたのですが、地面には大きな足跡が2つ描かれています。さまざまなイラストや昔の写真がコラージュされており、ひとつひとつ見ていくとおもしろいです。
ちょっぴり大人な世界の雰囲気が漂う、女根。独特な世界観ですが、美しく穏やかな瀬戸内の景色とのギャップによって、より異質感が引き出されているのかもしれませんね。
・名称:女根 / めこん
・住所:〒760-0092 香川県高松市女木町236−2
・開館時間:9:00-16:30
・定休日:会期中無休
・料金:510円 | ※15歳以下無料
・公式サイトURL:https://setouchi-artfest.jp/artworks-artists/artworks/megijima/31.html
「ピンポン・シー」で実際にプレイ
今までは単体のアート展示の紹介でしたが、これからご紹介する「島の中の小さなお店」プロジェクトには、8つの展示が集まっています。ヘアサロンやカフェなど、芸術祭に訪れる人が楽しめるだけでなく、島の人が利用できる便利な「小さなお店」が入っています。
早速中に入ってみると、先に目に入ってきたのはカラフルな卓球台。
「ピンポン・シー」では実際に卓球で遊ぶことが可能。カラフルでポップな卓球台でプレイしたら、いつもより楽しくプレイできそう。
卓球台は全部で3種類。一番入り口から遠い卓球台は、なんと台がゆらゆらと動いています。台の動きによってピンポン球が思ったところに飛ばず、ハチャメチャなラリーになること間違いなし。
久しぶりに童心に帰って、卓球で遊んでみませんか?
・名称:ピンポン・シー
・開館時間:9:00-16:30
・定休日:会期中無休
・料金:600円(mg07-mg12の6作品をあわせた料金)1プレイ100円
・公式サイトURL:https://setouchi-artfest.jp/artworks-artists/artworks/megijima/241.html
虚構と現実が混在?「ランドリー」
女木島のアートの中で個人的に一番気に入った作品が、レアンドロ・エルリッヒの「ランドリー」。真っ白に塗られた壁と洗濯機、そして中央のカゴのみで構成されています。
向かって右側の洗濯機には衣類がぐるぐる回る映像が流されていて、左側は洗濯できる本当の洗濯機。虚構と現実を同じ空間に混在させているそうです。
この空間の中に響くのは、洗濯機が動く音のみ。映像が流れるフェイクの洗濯機をじーっと眺めていると、なんだか不思議な気分になってきます。
左側の本物の洗濯機では、実際に衣類を洗えるのだとか。シンプルながら全体のバランスが心地よくて、洗濯機を見れば見るほど現実世界と違う世界をさまよっているような感覚になりました。
・名称:ランドリー
・開館時間:9:00-16:30
・定休日:会期中無休
・料金:600円(mg07-mg12の6作品をあわせた料金)洗濯:500円(1回)、乾燥:100円(1回)
・公式サイトURL:https://setouchi-artfest.jp/artworks-artists/artworks/megijima/240.html
心をマッサージできる不思議なチェア
最近心がすさんでるなぁ、疲れているなぁという方は、「こころのマッサージサロン」で心のマッサージをしてみてはいかがでしょうか?お疲れ気味だった私も、一見不思議な形でゴツゴツとしたマッサージチェアに靴を脱いであがってみることにしました。
右側にハンドルがついているので、それをくるくると回しましょう。するとマッサージチェアが動き始め、いろいろな場所からゼンマイ仕掛けのおもちゃが動くような不思議な音が聞こえてきます。そして前にまっすぐとのびた竿が水の中に沈んでいき、何かを釣り上げます。
リラックスできる……とはまた違う感覚ですが、まわりから発せられる音によって心の中のわだかまりなどがひとつひとつ解かれていくような気がしました。
ガラス玉に映った姿も幻想的です。こちらには実際のマッサージチェアも置いてあるので、体のマッサージを受けたい方はそちらでどうぞ。
・名称:こころのマッサージサロン
・開館時間:9:00-16:30
・定休日:会期中無休
・料金:600円(mg07-mg12の6作品をあわせた料金)マッサージチェア:300円(16分)
・公式サイトURL:https://setouchi-artfest.jp/artworks-artists/artworks/megijima/244.html
他にもおもしろいアート作品がたくさん
「世界はどうしてこんなに美しいんだ」。これは『夜と霧(ヴィクトール・E・フランクル著)』から抜粋された、囚人が夕焼けを見たときに発した言葉なんだそう。
スクリーンには「世界はどうしてこんなに美しいんだ」という文字が車輪に浮かび上がる自転車が写り、小豆島を走っている様子が流れます。
自転車は高松でレンタルすることができ、実際に乗ることが可能です。瀬戸内国際芸術祭は鑑賞するだけでなく、実際に体験できるのもおもしろいですね。
そして宿泊先の方におすすめされたのが、2階に飾られた写真の数々。香港のカメラマン「梁家泰」が撮影したもので、女木島と男木島で結ばれた夫婦の写真・馴れ初めが展示されています。
決して島民の数は多いわけではありません。今では自由に高松や県外に出るなどの選択肢もありますが、昔はそうもいかない時代でした。
お見合いで出会った人や、数回しか会ったこともない相手と結婚することもあったようで、馴れ初めのエピソードを読んでみると「いやいやながら結婚の申し出を承諾する」などの言葉も。夫婦となったきっかけはそれぞれですが、どのご夫婦もそっくりの笑顔で笑っている姿が印象的でした。
読んでいるうちに、きっと島の暮らしに興味がわいてくると思います。
高松から20分で行けるアートの島、女木島
瀬戸内国際芸術祭ではそれぞれのアートごとに料金を支払って鑑賞する方法のほか、作品鑑賞パスポートを購入する方法もあります。全会期中に使える3シーズンパスポート(大人4,800円)、1会期のみ楽しめる1シーズンパスポート(大人4,000円)があるので、楽しみ方に合わせて購入しましょう。
筆者は芸術祭を鑑賞できる時間が少なかったため、パスポートは購入せずにアートごとに支払って楽しみました。今回紹介したアートをまわるのにかかった時間は、3時間ほど。夏会期の初日だったこともあり、それほど混んでいなかったので落ち着いて鑑賞できました。
せっかくの瀬戸内旅行、ほかの島のアートも楽しむためにも、シーズンパスポートでアート巡りをしてはいかがでしょうか?気軽に行ける島は女木島以外にもたくさんありますので、瀬戸内でアート旅行を楽しんでくださいね!