「私たちはどんな体験をするか、選べる時代に生きている」-石川真弓-
普段は会社員として広報業務をこなしながら、数々のWEBメディアでライター業をこなす石川真弓さん。現在はHDR写真についての著書もヒット中。そのマルチな活動の根底にあるものは?
001.判断基準は、「楽しい」や「ワクワク」
会社員、ブロガー、ライター・・・。ズバリ石川さんって何者なんでしょうか?
基本的には会社員です(笑)。ただ、大学生の頃から「書く」ということは、やっていましたね。10年以上前の当時はブログで日記のような内容を、時には酔っぱらいながら綴っていました。今思い返すとちょっぴりイタい内容もあったかもしれません(笑)。でも、以来web上に自分の居場所みたいなものを作ることができて、ずっと書き続けてきています。現在は、週4日は会社員としての仕事を、残り1日は自宅で執筆活動をするというサイクルです。
いろいろな媒体で原稿を書かれていますが、なかでもご自身のブログ「URAMAYU」 は月間約15万人に見られています。
最初ブログをはじめた時は「これからはインターネットの時代だ!」くらいの感じで飛び込んでいったんですけど、それが本当になりましたね。今はみんながスマホを持って、SNSでつながっている時代。素直に楽しい時代だなって思います。
やはり「楽しい」というのは、キーワードですか?
ですね。目の前にいろんなことあって、そのなかで「やる」「やらない」を決める時、私はそれをやっている自分を想像するんです。で、楽しそうだなと思ったら「やる」。食わず嫌いはよくないので、基本的には「やる」なんですけど、どう考えてもつまんなそうなことも(笑)。楽しいとかワクワクとかっていうのは、チャレンジする際の判断基準になっているとは思います。
自分の感情を大事にしている?
例えば私が広報を担当しているFabCafeなんかは、レーザーカッターや3Dプリンターが置いてあったりして、いろいろなデジタルものづくり体験ができるようになっています。飲食物、モノ、そして空間だけじゃなくて、最近では「体験」までもがトータルでプロデュースされて提供されているのが「今」だとしたら、それを選ぶことが必要だと思うんです。情報とかいろんなものが溢れているからこそ、取捨選択していくことが大切なのかなって。
002.HDR写真の魅力は「簡単にカッコイイ写真が撮れる」
その選択のひとつの結果が、今年出版された『HDR写真 魔法のかけ方レシピ』だと思います。そもそもなぜHDR写真だったんですか?
最初にHDR写真に出会ったのは、2009年にiPhone 4が出た時。「HDR撮影機能」が付いていて、話題になったなんですね。それで、私もいろいろ調べて、やってみたら、とっても楽しかったんです。HDR写真とは、明るい・暗い・普通と露出を変えた3枚の写真を撮って、それを合成して、白飛びも黒潰れもないカメラのダイナミックレンジを補う撮影技法・・・と言葉で簡単に説明すると、そういうことになるんですが、見てもらえばわかる通り、単純に仕上がりが絵画みたいでおもしろくないですか?
今回の本に掲載している写真は、世界一周旅行で撮影したものだとか。旅に出たのは、出版のためですか?
いえいえ。ちょうどそれまで勤めていた会社を退社して「30代前半のこの時期を逃したら、一生世界一周なんてできないな~」なんて思ったのがきっかけです。そして、世界一周旅行って意外と安くいけるんですよ。私が購入したのは、ワンワールドアライアンスの世界一周航空券で、サーチャージ込みで約95万円でした。これで16回ビジネスクラスに乗れるんですよ。距離は関係ナシ。高いですけど、コストパフォーマンスは抜群に良いものすごいチケットだと思います。
HDR写真を撮影しながら世界一周をするうちに、本の企画を思いついたわけですね?
世界一周旅行の目的のうちのひとつに、世界中の絶景をHDR写真で収めようというものはありましたが、本を作ろうなんて全然思っていませんでした。そして帰国後に、ご縁があって出版社に「日本で初めてのHDR写真の本」企画を持ち込んだんです。実際には出版が決まるまでも時間がかかりましたし、いざ企画が通ってからも大変でした。HDR写真の技術的な部分もすべて自分で執筆しましたし、その情報が正しいかどうかソフトの開発会社に確認も自分で取りました。本に使っている写真素材は全部自分で撮り下ろしたものです。企画を持ち込んでから本が出版されるまで、約1年はかかりましたね。
石川さんはもともとライターではあっても、カメラの専門家ではないし、主戦場もweb媒体です。それが、大変な苦労をしてまで「HDR写真の本を出そう!」と頑張れた原動力みたいなものって、なんなのでしょう?
「HDR写真が私にできるなら、きっと他の人にもできるはずだし絶対楽しいはずだし知ってもらいたい!」といった気持ちでしょうか。
HDR写真って、プロの方々には嫌われている部分があって、例えば「撮った後から誤摩化しているだけでしょう?」とか「それは自分の実力とは違うよね」なんて思う人が多いんだと思います。でも、私はプロカメラマンじゃないし、単純に写真を見て、「キレイ!」とか「楽しい!」っていう瞬間の感覚が大事で、それを共有できたらいいなって。
もちろん、技術的にはいろいろやっていますし、それは本のなかで紹介もしているんですけど、基本的にはHDR写真は簡単なんですよ。ピントと構図さえ決まれば、後からいくらでも加工できる。すごく写真が上手じゃなくても、「カッコイイ写真が撮れる」っていうのは魅力だと思いますね。
その撮影方法は、この本を読めば分かりますか?
そうですね。技術面もしっかりフォローしているし、細かいことも書いてはいるんですが、一方で世界の絶景HDR写真集のような楽しみ方もできるので、手に取ってもらいやすいとは思います。実際、かなり反響は大きくて、自分でもビックリしています(笑)。
003.ホームランは打てなくてもコツコツとヒットを出せる人でありたい
HDR写真の次、新たに注目していることってなんですか?
30代女性のライフスタイルやキャリア形成でしょうか、自分の状況的にも日本国内では、女性のキャリアに関してはネガティブな話題が多いですよね。賃金や子育て環境とか。
子育てをしながら上手にバランスをとって働いている女性もいますが、メディアで登場するような女性ってバリバリのスーパーウーマンみたいな方が多く、意外と参考にならないことが多い。もっと子育てと仕事を上手に両立されているフツーの話が聞きたいなって思います。
では、次の書籍のテーマは「女性のキャリア」でしょうか?
いえいえ。本は最初で最後だと思っています(笑)。女性のキャリアに関しては、興味の対象というだけじゃなくて、自分自身がそういうライフスタイルを体現していきたいと考えているんです。
いわゆるキャリアウーマンとは違っているかもしれませんが、石川さんも多彩な方法で、やりたいことをやっているスーパーウーマンなのでは?
というよりも、器用貧乏かもしれません(笑)。よく言えばゼネラリストみたいな。専門的な分野をとことん極めるような人も素敵だと思いますが、そうでない人もいます。私は後者ですね。いろいろなことに手を出しちゃう。そして、マルチタスクで、ちょっとずつ成果を出す。ホームランは打てないけれど、コツコツとヒットを出せるようにしたい(笑)。
イチローみたいですね(笑)。
そう言われるとカッコ良すぎますが、バランスを大事にしているのは事実です。ブロガーやライターの仕事も、普段会社員として働いているからこそ書くものに幅が出てくるし、反対に記事を書くことで、会社員としてはできないアウトプットが可能になっている。
今回は石川さんの本を読者プレゼントとさせていただきます。最後に読者へのメッセージをいただけますか?
「好き」のなかで生きていくこと!そして、ネット上やSNSのなかだけで完結せずに、リアルなコミュニティを大事にすること!シンプルですが、この2つは、誰にとっても大切だと思いますね。