ビーチリゾートなどでのアクティビティの一環として、比較的カジュアルに体験できるようになったダイビングやシュノーケリング。

陸上では味わえない青い海や美しいサンゴ礁が織りなす景観に夢中になり、思わずサンゴに触れてしまったり、生き物を追いかけたり…そんな経験はないでしょうか。無意識に行なっているその一つひとつの行動が、実は環境に負荷をかけている可能性があることの再認識がいま求められています。



では、環境にやさしくダイビングやシュノーケリングを楽しむにはどうしたらいいのでしょうか。今回は「青の洞窟」や「海ぶどう」で有名な沖縄県・恩納村(おんなそん)で始まった、人気のアクティビティであるダイビングやシュノーケリングそのものをサンゴや環境にやさしいものにしていく取組み「Green Fins」をご紹介します。

サンゴ礁がなくなると海の生き物がいなくなる?



海洋資源は、持続可能な開発目標「SDGs」の一つ「目標14.海の豊かさを守ろう」にもあるように、人間の持続可能な未来のために重要なもの。

とりわけサンゴ礁は地球表面の0.1%にも満たない面積にもかかわらず、地球上の海洋生物の約25%が生息していることから、豊かな海を保つのに必要不可欠な存在として注目を集めています。



しかしこの30年の間に世界中の50%ものサンゴ礁がすでに死滅し、2050年には約90%のサンゴ礁が死滅する可能性があるともいわれています。

サンゴ礁が死滅する原因は海水温の上昇や汚染、台風、観光で人が入ることによる物理的な被害などさまざまですが、このままのスピードでサンゴ礁が消滅していけば、生態系への影響、ひいては漁業や観光業など人間の経済活動にも大きな影響を及ぼすのは間違いないでしょう。

持続可能な村づくりのためにサンゴ保全に取り組む恩納村



恩納村は沖縄本島の中部、那覇空港からは車で1時間ほどの場所に位置し、「青の洞窟」や「万座毛」など人気のダイビングスポットが多い地域。

観光業や農水産業をはじめ、住民の生活には海からの恩恵が大きく影響しており、サンゴ礁の減少や海洋汚染は生きていく上で切実な問題となっています。

そこで、恩納村は持続的な村づくりのために、村全体でサンゴを守っていくことを指針とした「サンゴの村宣言」プロジェクトを2018年に開始。さらに、SDGsの枠組みで、サンゴの保全や住環境の改善、観光地としてのブランドを確立するためにさまざまな施策に取り組んでいます。

その取組みのひとつとして、恩納村ダイビング協会と恩納村漁業協同組合中心に協力を得て始まったのが、環境にやさしいダイビング・シュノーケリングの国際基準「Green Fins(グリーン・フィンズ)」の導入です。

「Green Fins」ガイドラインに沿って環境負荷の少ないマリンレジャーを

Green Fins」は国連環境計画とイギリスのリーフワールド財団が2004年に始めた取組みで、現在11ヵ国に導入されている国際基準。

15の行動規範をベースに、サンゴや自然環境に負荷をかけないダイビングやシュノーケリングのガイドラインを提唱しています。このガイドラインに沿ってダイビングショップが運営することで、その地域の自然環境を保全する仕組みを作り上げていこうというものです。



また、Green Finsに取り組み、その活動が評価されたマリンレジャーのショップはGreen Finsを運営する団体から認定を受けることができます。いわゆる「お墨付き」というやつです。

いち消費者として環境にやさしいものを選んでいきたい人が増えている昨今、旅行中のアクティビティもこういった認証を基準に判断できるようになるのは嬉しい話です。恩納村でマリンアクティビティに参加する際にはGreen Fins認定の有無を、ショップ選びの基準にすることをおすすめします。



一方で、ショップを選ばずとも普段ダイビングやシュノーケリングを行う際に、個人でも実行できる内容となっているので、海好きの方にはぜひ一度意識してみて欲しいとも思います。

サンゴを蹴ったり砂を巻き上げたりしてはいないでしょうか?

今使っている日焼け止めはサンゴに悪影響を及ぼさないものでしょうか?



このようにサンゴ礁に優しい取組みをする恩納村には、サンゴ礁をはじめ、そこに息づく海の生き物たちや独特の地形を楽しめる人気のダイビングポイントが数多く存在しています。その中でも特に人気のポイントを3つご紹介します。

青の洞窟



沖縄県内で1、2を争う人気のダイビング・シュノーケリングポイント。洞窟内に差し込む光が作る幻想的な風景に惹かれ、訪れる人が後を絶ちません。水面、水中の青色の美しさはもちろん、洞窟内に群がる魚たちも見応えがあります。

山田ポイント



日本に生息するクマノミ6種すべてを見られるという別名「クマノミパラダイス」とも呼ばれるポイント。

広々とした砂地とサンゴ、それに群がる魚たちが楽しめるほか、サンゴ礁保全活動の一環として漁協が行なっているサンゴの養殖場も見られます。水中に広がるサンゴ畑は、他ではなかなかお目にかかれないのではないでしょうか。

万座ドリームホール



Cカードをお持ちの方にはぜひ一度行ってみて欲しい、地形が楽しめるポイントです。水深5mほどにある亀裂から水深約25mまである縦穴に入っていくことができます。暗い穴に吸い込まれるように入っていく感覚はスリル満点。

水底に近づくにつれだんだん広くなり、上を見上げると、穴から差し込む光や魚影が幻想的な場所です。穴はL字型になっており、横穴の出口の方を見るとその地形がポケモンのピカチュウに見えるというのも人気の理由の一つかもしれません。

恩納村で始まった「Green Fins」ですが、今後は沖縄県、そして日本全国のダイビングスポットへと広がることを期待しています。そして、一人ひとりが環境に配慮しながらダイビングを楽しめるようになっていくと嬉しく思います。

Green Fins公式サイト

Text by Suika Tsumita

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