愛媛・八幡浜で起きている「柑橘レボリューション」
愛媛県のなかでも、有数のみかんの産地「八幡浜(やわたはま)」。とくに「日の丸」「真穴」「川上」という3ブランドは、東京の大田市場の価格相場を決めるプライスリーダーでもあり、日本トップの品質です。
そんな八幡浜市では、メインの「みかん」だけじゃない、柑橘にまつわる気になる話題が続々と聞こえてくるんです。
01.フルーツ界の高級キャビア「フィンガーライム」
「10 TEN」で、みかんのブランディング展開なども行なっている梶谷農園で見せてもらったのは、まさに指(フィンガー)サイズのライム。原産はオーストラリアで、一部のフランス料理などでは使われていたそう。
「最近はだいぶメディアに取り上げられるようになりましたが、3年前は、かなりのオーストラリア通かフランス料理通だけが知っている、マニアックなフルーツでした。僕自身は6年くらい前にYouTubeで見てひと目惚れして、これを日本でも作らないけん、と思ったんです。でもそこからは大変でしたよ〜。6年間は試行錯誤の繰り返しで、1円にもならなかったわけですから(笑)。労力とお金をかけて、耐えながら知識を蓄えていました」
山のキャビア、なんて言われるほど1粒1粒しっかりしているのが特徴で、プチプチの食感はクセになります。香りはライムやレモン、グレープフルーツ、山椒のようにしっかりしていて、魚介類にもお肉にも合いそう。
全23色生産している中でも、主力はグリーンとピンク。イエローやパープルもあるそうです。1本300〜500円でkg単価は3〜5万円になるので、高級フルーツであることに間違いはありません。ザ・リッツ・カールトン東京やJR東日本の四季島、さらにミシュランガイドに載るような東京の料理店で扱っていることが多いんだとか。
個人的に気になったのは、焼き鳥のアクセントに使うというお話。普通のレモンやライムの果汁だとベショっとなるところが、フィンガーライムなら粒が弾けるバースト効果も楽しめるし、盛りつけとしてもおしゃれ。
カクテルやフランス料理で使われることが多かった「フィンガーライム」も、今では和食を含むさまざまな料理で、可能性を広げているそうです。
02.ハートが浮かぶライムとゆずの「マーマレード」
鮮やかなグリーンのハートが瓶のなかで揺れているのが見えますか? これは、2月にイギリスで開催された、世界マーマレードアワード2017で金賞を受賞した「Atrium」のマーマレード。
八幡浜産のライムとゆずを使っていて、ハートの正体は薄くスライスしたライムの皮。香りはもちろん、甘みと苦味のバランスがとてもよく、世界30ヶ国から集まったマーマレードファンのハートも掴んだようです。
お湯や紅茶で割ってもよし、パンに塗ってもよし、ホットケーキやヨーグルトにかけてもよし。ドレッシングやチーズと合わせてもいいし、カレーや焼肉のタレの隠し味にする、なんて方法もあります(ライム&ゆずマーマレード 1500円)
現在は八幡浜市にある、アゴラマルシェ内に出店していて、このマーマレード目当てに訪れる人も増えているそうです。
同時に出品した「アロマコンフィチュールティ」は銅賞を受賞していて、こちらは美食女子向け。美しさも健康も癒しもおいしさも全部ほしい、という欲張りな人でも満足できる、一見ジャムのようで、ただのジャムじゃない逸品。
みかん、レモン、シトラスの3種類からお気に入りを選んでみてください。
そんな八幡浜市のマーマレード愛を受けてか、2019年5月には日本初となる「世界マーマレードアワード&フェスティバル」が八幡浜市で開催決定。マニアにはたまらない、世界中のマーマレードが、柑橘のまち「八幡浜」に一堂に揃う貴重な日になりそうです。
03.1本1万円の「みかんジュース」
—— みかんよりも、みかんの味がする。
そんな究極のみかんジュースがあると聞きやってきたのは、八幡浜の向灘地区にある「濵田農園」。
売れ筋は、水や砂糖を一切使わず、100%の温州みかんとその果肉だけをまるごと絞った「KIWAMI きわみ」1本1296円。
さらに、高級なブランドみかんを使った「プレミアム・紅まどんな」や「プレミアム・甘平」は、なんと1本10800円。その金額だけを聞くと驚くかもしれませんが、使用している生果は、1個が百貨店などで1000円以上で売られている愛媛のオリジナル品種。それを原料として1本あたり約15個前後使われているんです。
そう聞くと、必ずしも「高い!」という感情だけではなく、一度は飲んでみたい、大切な人への贈り物にしたい、という気持ちが湧いてきません?
農家からすると、天候の影響を受けやすい「みかん」だけで勝負するより、自分で値段や価値を決めることができる加工品で売り上げを立てることは、リスクヘッジにもなるそう。しかも濵田農園のみかんジュースは、これまでに出会ったことないような味。
「はじめて作ったジュースは、飲んでみると今までとはこんなに味が違うのか、と驚きました。私は『これだ!』と思い、国からの指導のもと6次産業化の認定を受け、究極のみかんジュース『きわみ』を商品化しました。飲んだお客さんから『こんなジュースは飲んだことない』などと言ってもらえることに喜びを感じています」