入ってくるなり「こんなカフェができたの!?」と喜びの叫びを上げる女性たち。彼女たちが驚いた理由は、ここがこの町にできた “はじめての” カフェだからだ。

おいしいコーヒーと、グルテンフリーのフードメニューで人気のカフェ「ことりうさぎ」は、秋田県北東部の鹿角市(かづのし)にある。温泉やスキー場といった北国らしい魅力はたくさん誇るものの、この町でこのカフェはまったくのニュータイプだった。

しかし真心を込めて作り上げた空間は、コンサバティブな町でも歓迎してもらえた。地元の人にリピーターは多く、また前述のようにウワサを聞きつけて遠方から来る新規客も多い。オープンから約1年、「ことりうさぎ」は連日なごやかな賑わいをみせている。

この町の日常に息抜きを

「来てくれたひとが、ふっと休める場でありたい」

一人ひとりを優しい笑顔で出迎えるのは、オーナーの細井可奈(ほそいかな)さん。カフェの看板メニューともいえるコーヒーに特別なこだわりを持ち、長年サポートしているNPOから豆を仕入れている。エチオピアやタンザニアといった大自然の土地で実った野生の原種を焙煎した豆は、ほどよい酸味と苦味のバランスが良く、幅広い年代に好評だ。

また、センスの良い内装や食器も、窓の外に見える雪景色と相まって、まるで北欧にいるかのような雰囲気。

「御礼がしたかった」

鹿角生まれの細井さんは、早い頃から人生に目標をもって上京。飲食業界に長く、「いつかは自分のカフェを」という思いを心の片隅に持ちながら懸命に毎日を過ごした。しかし長年都会で暮らすうちに、ふるさと鹿角の自然環境に感謝が芽生えはじめたという。

「自然に囲まれた子ども時代を、ありがたかったと思えるようになった」

お子さんが小学校に上がるタイミングで、自分が育った自然のなかで伸びやかに成長してほしいと願い、鹿角市にUターンすることを決意。しばらく地元の企業に勤めた後、周囲のサポートを得て起業した。

「この町のためになることをして、なにか恩返しをしたかった」

これからもこの町の人と

できる限り地元の素材をメニューに活かす。イチオシのスイーツメニューは地元の牧場でつくられている牛乳を使った「牛乳プリン」。そのままでも懐かしいような優しい甘みだが、さらに特製のエスプレッソソースを掛けるとおいしさにグッと奥行きがでる。男女ともに人気のメニューだ。

「これからもこの町の、休憩できる場でありたい。人生はいろいろあるから、みんな豊かな気持ちで生きてほしい」

おいしいコーヒーを紹介できるように、地域イベントなどにも積極的に参加する予定だ。

 

お気に入りのカフェで、自分に戻る瞬間。

それは気持ちよく生きるための、大事な「コツ」なのかもしれない。

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