新型コロナウイルスの流行を経て、よく聞くようになった言葉の中に「」があるでしょう。旅行が難しくなった昨今、提唱されている一つの旅のカタチです。

日本全国をフィールドとし、長期連休はほぼ自転車旅に充てていた私も、活動路線の変更を余儀なくされてしまいました。そこで約1年半、実家のある愛知県奥三河エリアを中心に、マイクロツーリズムと称してさまざまな場所へ足を運んでみることに!

すると、今までは見えてこなかった、地元の魅力をたくさん見出すことができ、郷土愛を深めつつ、充実した時間を過ごすことができました。

今回は、私が実践したマイクロツーリズムの作り方を一般化した上で、楽しみ方の具体例を紹介してみようと思います。

マイクロツーリズムとは?



マイクロツーリズムとは、自宅からおよそ1時間圏内の地元や近隣への短距離観光のこと。新型コロナウイルスによって打撃を受けた観光業界を救う手段の一つとして、株式会社星野リゾートの代表 星野佳路氏が提唱しました。

人の移動や三密を回避する旅スタイルとして注目が集まっている一方で、一回ポッキリの観光でなく、定期的な訪問を促す仕組み作りに触れているのもポイントです。



次第にトレンドとなってきたワーケーションとも相性がよく、地方の観光事業を活性化する際に、重要な視点の一つとなっています。

また旅行者単位では、遠出をせずとも非日常な旅を気軽に楽しめるというメリットがあります。灯台下暗しというように、近くこそ目が届きにくいのですが、自分の地元が意外にもポテンシャルの宝庫かも!?

自分だけのマイクロツーリズムの組み立て方



それでは、どのようにマイクロツーリズムな旅を楽しんだか?についてですが、私の中では、マイクロツーリズムは島旅に似ています。具体的には、忘れられない瞬間がある!五島列島・自転車旅で再発見した「島旅」の魅力でも書いたのですが、対象とするエリアが限定されているからこそ、より敏感にアンテナを張って、現地を見つめられるようになります。

そんな大事にしたい直感と、以下3つの軸と掛け合わせることで、より自分らしいマイクロツーリズムを見出すことができました。

明確なテーマを持つ!



まず取り組みやすいのが、明確なテーマを持つことではないでしょうか?普段の旅スタイルから、自分が好む要素やテーマを抽出し、その内容に基づいて、近場でサーチをかけます。

私の場合、中でも大きな位置付けだったのが「山」でした。1年で50座以上登山を行う私にとっては、山こそ飽くなき好奇心を受け入れてくれる最高のフィールドです。



標高の高低に関係なく、近場にある目ぼしい山はすべて登る勢いで、足繁く通いました。これを通じて、マイホームである奥三河の自然の雄大さや美しさを体感でき、海外を彷彿とさせる絶景に出会えたのも最高の思い出です。



個人的にオススメしたいツールが「YAMAP」。登山地図サービスのアプリですが、他の利用者が投稿した活動日記も閲覧できます。私は、日記の数が2000を超えるのがメジャーな山。2000以下が穴場な山として、アタリをつけていました。

四季を追いかけて、同じ場所に何度でも!



これまでの旅においても季節の流れを大切にしてきた私。

春は桜を愛でながらサイクリング、夏は冷涼な北日本へ自転車で大冒険、秋は秘境の紅葉を求めて山に登り、冬は輝く樹氷と白銀の世界に魅了される――といったように、季節感を大切にする旅スタイルが特徴です。



この姿勢はマイクロツーリズムでも活かされました。

春には驚くほど鮮やかでバラエティーに富んだ花の絶景を味わい、美しい新緑にひたすらに心洗われ、錦絵のごとき紅葉に身惚れれば、遥か南アルプスを望む霧氷の絶景に歓喜する。



地元はこれほどまでに四季折々の表情を有しており、まだほとんど知られていない絶景が眠っていたのか!?そんな、宝物を掘り出す感覚もたまりません。

どのジャンルもほどほどに、オールラウンダーを目指す!



旅先のどんな要素にも、ダイレクトに向き合える”自転車旅”というスタイルを好む私。この旅を楽しむ過程で、興味や関心の幅がどんどん広がり、どんな要素でも抵抗なく受け入れてきました。



そのため、どんなジャンルでも、ある程度広く、ある程度深いオールラウンダーな旅人になれたと自負しています。ライターとしても突き抜けたジャンルがないため、少し悩みではあるのですが(笑)、逆に言うと、マイクロツーリズムはオールラウンドな視点が活きてきました。



複合的なテーマを持てばもつほど、マイクロツーリズムでは広がりを作ることができます。幾度となく足を運んだ場所であっても、見方や楽しみ方を変えられることで常に新しいインプットを得られるため、とても新鮮で刺激的です。

検索ツールは、観光協会のサイトかグーグルマップ



旅に出る前に大事にしたいのが、情報収集です。TABIPPO読者の皆さんもそうだと思いますが、メジャーなスポットだけでは満足できないという方も多いのではないでしょうか?

そんなとき、まず役に立つのが、地域の観光協会やコンベンションビューローなどが運営する観光サイトです。メジャーどころだけでなく、穴場の情報も多く掲載されているため、スポットの選定にとても役立ちます。



そして、一通りスポットを選定し終えれば、Googleマップでその周辺を探します。レストランやグルメスポットについてはGoogleマップに網羅されており、穴場のお店に当たる可能性が高まりまます。



口コミや写真で、地元に愛されている鄙びた食堂や、小粋な古民家カフェを探すのがマイブーム!また、選定したスポットの近くにおもしろそうな滝があれば、そこに立ち寄るのも日課にしています。

日帰りできるエリアにあえて宿泊してみる



近場への旅行では日帰りが前提になるかと思いますが、敢えて宿泊してみるのもおすすめ!温泉街や観光地に泊まるのでなく、むしろ「そこに宿があるから」「この宿が良さそうだから泊まる」といった選択をするようになりました。



自分が親しんでいる活動フィールドだからこそ、泊まるということがなんだか新鮮で非日常。普段とは少し違う、その地の魅力の発見につながるかもしれません。

たとえば名古屋からアクセスしやすい三重の伊勢鳥羽エリア。普段は日帰りで訪れることが多い場所ですが、あえて伊勢湾に浮かぶ「答志島」に宿泊した体験は忘れられません。



ふわりと染まりゆく朝の離島は情緒たっぷり。鼻腔を通り抜ける磯の香りを感じながら日の出を待つ時間は、とても贅沢でした。また本土から出ることで豪華な海鮮料理をよりリーズナブルにいただくことができます。

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マイクロツーリズムのモチベーション



近場なので、いつでも行けてしまうこともマイクロツーリズムの特徴。そのため、「またいつか行こう」とモチベーションが上がらなくなることもしばしば。また、飽きてしまうこともあるでしょう。

そんなとき、高いモチベーションと行動力を保ちながらマイクロツーリズムを楽しむには、どうすればいいでしょうか?私は以下の姿勢を意識したことで、これまで積極的に近場の旅を満喫できています。

いつ行くか?今でしょ!



まず大事にしていたのが、思い立ったが吉日、すぐに行動することです。「いつでも行ける」と後回しにすれば、また次回も同じ判断を繰り返すでしょう。

人は「やらなきゃ!」と思った瞬間が最も行動力があり、時間に比例して、その行動力が落ちていくというデータがあります。



だからこそ、とても近場であっても、「今行かなきゃ、いつ行けるかわからない」くらいの心持ちで望むようにしています。

近場であっても、訪れればちゃんと、おもしろい表情や魅力を見つけることができ、近場はつまらないという先入観を払拭してくれるでしょう!

パズルを埋めていくような旅



都道府県をいくつ訪れたか、海外を何カ国渡り歩いたか?こういった数字の目安は、旅に出るモチベーションを高めてくれますよね。なのでマイクロツーリズムにも、このマインドを転用します。

具体的には、自分の住む中心点から10キロメートル→50キロメートル→100キロメートルと同心円状に範囲を広げ、あらかじめ自分が訪れてみたいスポットをすべてリストアップしておきます。



訪れるたび、「ここはクリア!」という感覚で、地図のピースを埋めるように旅をしていけば、常に未踏のスポットが気になり、絶えず行動してしまいます。一歩近場に踏み出したら、あとは勢いに任せて周辺を制覇しましょう!

戻りたい場所を見つける姿勢



しかし、地図のピースを埋める感覚で旅を続けると、”一度旅したら終わり、そして次へ”という流れになりかねません。そこで重要になってくるのが、「戻りたい場所を見つける」姿勢です。

たとえ近場であっても、一度訪れてみれば、忘れられない絶景に出会ったり、心を打たれたりする瞬間が必ずあります。また、自分が心から安らげるスポットや、あまり知られていない穴場を見つける機会も多いもの。



そのときに、自分の持っている感性ありのままを出し、そのひとときを味わうことが重要!そうすれば、マイクロツーリズムも単調なものにならず、忘れられない思い出として心に残り、再訪するきっかけになるはず。

東海周辺のマイクロツーリズム



それでは最後に、私が今まで行ってきたマイクロツーリズムの一例をご紹介。

四季とアウトドアを組み合わせることで、近場でありながら”非日常”を追求しています。写真という趣味で、飛躍的に情報のサーチ能力が上がったため、バラエティに富んだアドベンチャーを満喫できました。

奥三河で登山三昧



まず日課としていたのが、マイホームエリア「奥三河」の山々を巡ることです。愛知県最高峰は標高1500メートル以下で、全国的に見ても本格登山者向けのメジャーな山は知られていません。

しかし、長野や岐阜、静岡との県境を見渡せば、広大な自然が根付き、深い秘境の趣を備えています。そんなマイナーな山域を、自分の足で累計50キロメートル以上は歩いてきました。



決して派手さはないものの、慌ただしい世間から隔絶された静寂。そして、鮮やかな色彩とともに優しい自然の包容力を体いっぱいに感じさせる奥三河の山々は、とどまることのない冒険心の最良の受け皿になってくれました。

南信州の桃源郷へ



GWに差し掛かる直前、妻と母を誘って、南信州の桃源郷「月川温泉」へ。普段一緒に暮らしていないため、なかなか自分の両親と出かけることも珍しいのですが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、その機会が増えました。

前から行きたいとは思っていたのですが、近すぎず遠すぎずという距離感から、なかなか足を運ぶことができなかった場所。だからこそ、今回を機に「せっかくなら行ってみるか!」ということになりました。



春の本格的な訪れを感じさせる花桃の風景はとっても鮮やかで、どこか牧歌的!新緑に映える色彩にも思わず見入ってしまいました。家族の絆を一層深められたのも、マイクロツーリズムの成果だと思います。

伊勢志摩へ日帰り自転車旅



新型コロナウイルスが流行する前にも、実はマイクロツーリズムを志向してきた私。その最たる例が、伊勢志摩への日帰り自転車旅です。

自転車旅を覚えると、輪行(電車などの交通機関に自転車を乗せて運ぶこと)を活用して、いろいろと計画したくなります。そう意味でサイクリストは、マイクロツーリズムとよく似た視点を持ち合わせているのかもしれません。



あらためて振り返ってみると、流れるように走行中のシーンが蘇ってきます。カーブを曲がるたびに目に飛び込んでくる伊勢湾の海、漁村風景残る大王崎、そして奥多摩のような伊勢の峠越えなど。たまたま10月8日=とばの日で牡蠣の初食いを楽しんだのも良い思い出です。

越前大野に雪山登山合宿



最後は、少し遠方の福井県への旅。あたりが白銀の雪世界へと変わる1〜3月には、福井県の内陸部・越前大野に友人たちと登山合宿をするのが恒例行事になっています。

福井県のメジャーな山といえば、日本三大霊山の「白山(標高2702メートル)」が挙げられますが、実はその周辺も、冬の時期には美しい霧氷の花が咲き誇る”隠れ名山の宝庫”。



何度訪れても、そのときそのときで違う表情を見せてくれ、忘れられないアドベンチャーを満喫させてくれます。特に厳冬期の荒島岳に登頂し、雄大な白山、そして福井・岐阜県境の吸い込まれるような山並みを眺めたときの感動は、今でも忘れられません。

近場こそポテンシャルの宝庫!新たな旅のカタチを探そう



今回は私のマイクロツーリズムの組み立て方を一般化し、その一例について紹介してみました。

まだまだ新型コロナウイルスの流行以前に戻るのが難しい昨今。旅好きにとっては、辛い日々が続きます。

しかしながら、視点を変えれば、たとえ遠くへ足を運ばなくても、満足度の高い旅や時間を過ごすことが可能です。決してマイナスに捉えず「今を楽しむには?」という視点で、あなただけの新たな旅のカタチを模索してみてはいかがでしょうか?

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