全国のハイカーに知ってほしい!愛知県「奥三河」の山のポテンシャル
登山好きのみなさんにとって、愛知県ってどんなイメージでしょうか?「あれ、愛知県に日本百名山ってあったっけ?」「日本アルプスに近いから長野へ行くことが多いかも」「実はあまりよく知らない」という人が多いのではないでしょうか。
確かに、愛知県の山は総じて標高が低く、日本百名山は一座もありません。そして人気が高い山はカジュアルに登れる低山に集中しています。
しかし、実はとても個性的で表情豊かな山が多く、遠方から訪れる価値のある魅力的な山がたくさん。特に、長野県や静岡県との県境付近に当たる奥三河エリアには、愛知のポテンシャルの高さを窺わせる名山がひしめいています。
今回はその中からおすすめの山を5つご紹介します。登山のファーストステップを踏み出そうとしている方へ、マニアックな低山を探している方へ、ひたすらに静かで美しい山歩きが好きな方へ、届いてくれたら嬉しいです。
屋久島みたい!?秘境の渓谷歩きから大展望の尾根へ!「乳岩峡〜三ツ瀬明神山」
まず紹介したいのは、新城にある「三ツ瀬明神山(標高1016メートル)」。新城市と東栄町の市境・鳳来湖の東側に位置しています。アルペン的な山容を誇り、奥三河の中でも秀峰として名高い山です。
山頂まで登れる登山道は4つありますが、中でも一番距離のある「乳岩コース」は、景色変化が抜群で本当に登り応えがあります。
前半は苔むす森が迎える秘境の様相。木漏れ日と美しい渓谷に癒やされながら進んでいきます。すると途中から趣をガラリと変え、急登の山に。
そして後半は、鎖場や岩場が連続する稜線歩きとなり、馬ノ背岩付近では大展望が広がります!眼下には奥三河の深い樹林帯と山並みが展開し、天気が良ければ南アルプス山脈が望めることも。
登山口から山頂へ至るまでの劇的な景色変化は、まるで屋久島・宮之浦岳を彷彿とさせる内容。初心者ハイカーから玄人まで、どんな方でも楽しめます。
・名称:三ツ瀬明神山
・住所:愛知県北設楽郡東栄町本郷
・地図: ・登山口までのアクセス:鳳来峡ICから乳岩渓まで車で約10分
・標準タイム:乳岩渓から胸付八丁から馬の背を経由して、山頂まで往復5〜7時間
・関連サイトURL:https://www.okuminavi.jp/search/detail.php?id=635
まるで行者の心持ちに。歴史情緒ある里山歩き「石段参道〜鳳来寺山周回」
次に紹介したいのは、「鳳来寺山(標高695メートル)」。三ツ瀬明神山から鳳来湖を挟み、西側に位置しています。明神山と距離は非常に近いものの、山の雰囲気がガラリと変わるのでおもしろいです。
ポイントは、自然の中に信仰の軌跡が垣間見られること。まるで修験道の行者になったような心持ちで、山歩きが楽しめます。
鳳来寺の伽藍に至るまでの1425段もの石段はまさに修行ですが、山岳霊場らしい神妙な趣に浸れるはず。どこか世界遺産・熊野古道を彷彿とさせてくれます。
鳳来寺の伽藍へ辿り着けば、奥ノ院〜山頂〜天狗岩展望台と周回ルートを歩けます。標準コースタイム1時間半ほど。健脚であれば1時間以内に回ってくることができるでしょう。
山肌にへばりつくような山岳霊場の佇まい、緑濃い美しい山並み、山々に抱かれるように点在する山麓の集落など、素朴ながら奥三河らしい情緒が詰まった景観は必見です。
・名称:鳳来寺山
・住所:愛知県新城市門谷鳳来寺
・地図: ・登山口までのアクセス:新城ICから表参道駐車場まで車で約15分、鳳来寺パークウェイの駐車場まで車で約30分
・標準タイム:鳳来寺伽藍にたどり着いたのち、山頂一周は徒歩2時間〜3時間
・関連サイトURL:https://www.okuminavi.jp/search/detail.php?id=619
縦横無尽にエクストリームトレイル!「四方全尾根縦走の宇連山」
愛知県にもアルプスと呼ばれる場所が存在するのはご存じでしょうか?それが鳳来湖に隣接する「宇連山(標高929メートル)」一帯です。山麓は愛知県民の森として整備され、散策レベルのスポットに聞こえますが、そのスケールたるや”壮大”の一言。
東西南北に稜線が伸び、「本当にここは標高1000メートル以下の山なのか!?」と疑ってしまうほど圧倒的なフィールドが広がっています。途中、上臈岩(じょうろういわ)と呼ばれる秘境の岩峰にも立ち寄り、全尾根縦走すれば距離15キロメートル以上/標高差1800メートルという歩き応えのある内容に!
なお宇連山の山麓は、ホソバシャクナゲの群生地になっています。気温が上がりきらない5月上旬〜中旬、新緑と花の景色を楽しみながら、広大な自然へ思いっきり浸る山行は、きっと忘れられない時間になるはず!
・名称:宇連山
・住所:愛知県北設楽郡設楽町川合
・地図: ・登山口までのアクセス:鳳来峡ICから愛知県民の森から車で約10分
・標準タイム:愛知県民の森から山頂まで往復5時間〜8時間(経由する尾根による)
※詳細は関連サイトをご参照
・関連サイトURL:https://www.aichi-park.or.jp/kenmin/hiking.html
雪山登山のファーストステップに!霧氷咲く「大多賀峠〜寧比曽岳ピストン」
県全体として標高の低い山で構成される愛知県ですが、奥三河には標高1000メートルを超える山がいくつか存在し、厳冬期になれば雪山へと姿を変えます。
中でも愛知高原国定公園の一角、寧比曽岳(ねびそだけ、標高1121メートル)は「雪山に登ってみたいけれど、ハードルが高い……」という方におすすめ!
標高674メートルの大多賀峠から登れば、標高差・歩行時間ともに少なく、静かで気持ちのいい山歩きを楽しめます。傾斜も緩く、危険な箇所がないのもポイントですね。
前半は神秘的な杉並木の登山道。後半には霧氷のトンネルも迎えてくれ、山頂へ向かうにつれ景色が緩やかに変化していくのが特徴です。
そして山頂へ到着すると、そこには霧氷の花が咲き誇る絶景が!青空と白の爽快なコントラストには思わず見惚れてしまうはず。まるで冬に咲く桜のようです。
御嶽山や恵那山、南アルプス山脈まで日本屈指の名山を一望できるのも密かな魅力。このロケーションも奥三河の山のポテンシャルの高さを物語っていますね。
・名称:寧比曽岳
・住所:愛知県豊田市大多賀町椹木谷
・地図: ・登山口までのアクセス:豊田松平ICから車で約40分
・標準タイム:大多賀峠から山頂まで往復2時間〜2時間半
・関連サイトURL:https://www.tourismtoyota.jp/spots/detail/15/
スリルとテクニックなら!東海自然歩道の最難所「平山明神山周回」
最後に紹介したいのが、設楽町の「平山明神山(標高970メートル)周回」です。具体的には鹿島山・大鈴山・平山明神山・岩古谷山の4座を縦走する登山道で、近年はトレイルランの練習場所として人気があります。
特徴は鎖場や岩場、急登が連続するワイルドなコース。実は、東海自然歩道の一区間なのですが、その中でも最難所と言われています。またルートがわかりにくく、「これが道?」と言いたくなるポイントも多々現れるので、登山中級者におすすめです。
登山道のいたるところで季節の花々に出会えます。特に、平山明神山の山頂付近には、ヒメイワカガミの群生地があり、4月〜5月には可憐な姿を見せてくれます。
歩き応えがあり、景色変化に富み、野趣溢れる。標高の高さだけが山じゃない。そんな里山低山の魅力を再認識させてくれる満足度の高い内容になっているコースです。
・名称:平山明神山
・住所:愛知県北設楽郡東栄町振草
・地図: ・登山口までのアクセス:鳳来峡ICから和市登山者駐車場まで車で約35分
・標準タイム:和市登山者駐車場から岩古谷山・平山明神山・鹿島山・大鈴山一周、徒歩5時間前後 ※中級者向けのルートです。
・関連サイトURL:https://www.okuminavi.jp/search/detail.php?id=154
付近の観光名所と合わせて、山旅も楽しめる!
今回は奥三河生まれのアウトドアライターの私が、地元の山の魅力を紹介してみました。愛知県にはメジャーな高山はないものの、“おもしろい低山がたくさんある”ということをお伝えできたのではないでしょうか?
どの山も訪れる価値があり、自然との向き合い方、楽しみ方を教えてくれる、とても示唆に富んだ名山ばかりです。また山麓には観光名所も点在しているので、組み合わせ方次第でオリジナルの山旅を作れます。可能性に満ちた奥三河へ、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか?
All photos by Yuhei Tonosyou