インドで超満員の鉄道を快適に楽しむ方法とは
幾多の旅人を魅了してきたバックパッカー憧れの地インド。国土が広く見どころが広範囲に点在しているため鉄道を使っての旅は今や欠かせないものとなっています。
鉄道を利用することによってインドのほとんどの街を訪れることができるでしょう。しかし、日本の常識が通用しないのがインドという国。
英語が通じず切符の買い方がわからない、定刻になっても列車が到着しない、自分の席に既に人が座っている、挙句の果てには盗難に遭うなどインド旅で誰もがまず不安に思うのが鉄道での移動でしょう。
インドの旅を安心快適に楽しめるよう今回はインドの鉄道のスムーズな利用の仕方に焦点をあててみたいと思います。
列車の座席の種類と安全性
インドの鉄道は金額に応じて座席のランクが分かれています。高い金額を支払えばそれに比例して安全性が増します。代表的な座席の種類を紹介します。
エアコン付一等(1A/First Class AC)
最もハイクラスな座席。個室になっており、内側から鍵がかけられる。インド人の中でも政府の要人などセレブが利用する。
エアコン付二等(2A/AC 2-Tier Sleeper)
2段式の寝台車。天井が高く十分快適に利用できる。一等のようにドアが無いため最低限の防犯意識が必要。
エアコン付三等(3A/AC 3-Tier Sleeper)
このランク辺りからバックパッカーが利用する。3段式の寝台車で天井は二等よりも低くなる。3Aまではインド人の中でも富裕層が利用するが中には悪質な盗難も発生するため注意が必要。
エアコン無寝台(SL/3-Tier Sleeper)
3段式寝台車。私がインドを旅していた時に最も利用していた等級。一般的なインド人が利用。金額が安い分、安全面に不安があるがしっかりと注意をしていれば大丈夫。注意点については後ほど触れます。
セカンドクラス(GN/2nd Sitting)
ジェネラルシートと呼ばれる予約不要の自由席。中は超満員の通勤列車状態なので夜間の移動は避けたほうがいいです。運が良いと座席に座れます。
このようにインドの鉄道は日本とは異なり一つの列車に様々な種類の座席があります。
バックパッカーが利用するのは3A、SLが最も多いのではないかと思いますが、中には全てGNを利用していたという強者も。
切符の購入方法
photo by Kenta Sugizaki
ニューデリー、ムンバイなどの大きな駅には外国人専用窓口が設置されており、英語が堪能な職員が常駐しています。
切符購入時はパスポートは必須で、記入用紙に日付、乗車区間、等級、氏名などを記入します。インドの鉄道は列車ごとに番号が割り振られており、事前に列車番号を調べそれを窓口に伝えるとその番号で空席があるか検索してくれるのでスムーズに購入することができます。
列車番号は「eRail.in」というサイトで調べることでき、他にも幾つかアプリがあるようです。
外国人専用窓口の無い駅ではコミュニケーションに苦労するので列車番号さえ控えておけば安心でしょう。インドの鉄道は大きな都市間の移動となると直前には満席になってしまうことが多々あるため、遅くとも3~5日前までには購入すべき(ホーリー祭前後はより早めに!)です。
また、購入時にWT(Waiting List)と告げられる場合がありますが、これはいわゆるキャンセル待ち状態です。確実に移動したい場合には避けるようにしましょう。
最後に変更やキャンセルについてですがパスポートと切符を窓口に提出すれば、キャンセルの場合は手数料を差し引いた分が返金されるので必ず切符は捨てないように。
乗車の際の注意点
インドに関わらず初めて鉄道に乗車する前は私自身、無事に列車が来るだろうか、盗難に遭わないだろうかとかなりドキドキしたのを覚えています。
実際に旅をしている時には鉄道でスマホを盗まれた、降りる駅を寝過ごしたなどのトラブルをしばしば耳にしました。
列車が来ない場合
まず、乗車時ですが時刻になっても一向に列車が来ないなどの場合はせっかくの切符を無駄にしないためにも駅員に確認しましょう。インドの鉄道は日本とは違いスケジュール通りに動くことのほうが少ないので。
席に既に誰か座っている場合
次にぶち当たるのが自分の席に見ず知らずの人が座っている場合です。
3Aクラスまではこうした状況は少ないと思われますがSLクラスからは頻繁にあります。やんわりと自分の席であることを伝え、退席を促しましょう。
経済的な理由から切符を買わずに乗ってくるインド人が座っているケースが多いです。動いてくれる場合がほとんどだと思いますが、どうしても動いてくれない場合は列車に乗っている駅員に伝えましょう。
お手洗いや就寝時
最もトラブルに発生しやすいのがこのタイミングです。
用心すぎるぐらいが丁度いいと思いました。トイレに立つ時、就寝時にはバックパックはワイヤーロックやチェーンで固定し持っていかれないようにしましょう(チェーンごと切断されるケースもありますが…)
貴重品などが入ったサブバッグは枕にする、腕に巻きつけるなど肌身離さずに管理することが大切です。スマホは必ずしまうように。
どこで降りるかわからない時
切符にはその目的地の到着時刻が記されています。
その時刻の1時間前にアラームをセットしておくことで寝過ごすことは防げることと思います。maps.meなどのオフラインでも利用できる地図アプリを使うのもいいでしょう。どうしても不安な時は駅員に尋ねるといいかもしれません。
列車に乗っていると現地の方や他の旅行者とコミュニケーションを取る場面が多くあります。中には打ち解けたフリをして油断をさせ睡眠薬入りのお菓子を飲ませ金品を奪い取る事件もごくたまに起きるようです。
あまり人を信用しないのも旅が面白くなくなってしまいますがそういう事案が起きているということは頭の片隅に置いておきましょう。上記で挙げたことを守っていれば大抵のトラブルは防げることと思います。
あえてGNクラスに乗ってみる
私は3時間程度の移動の際はあえて最も安いGNクラスを利用していました。確かに混雑しており非常に疲れますが最もインドの日常を感じることができます。
彼らにとってGNクラスに外国人が乗っていることは珍しい光景のようで座るスペースを空けてくれたり、子供たちと一緒にゲームをしたり、食事を分けてもらったりしてとても良くおもてなしをされました。
一度はGNクラスに挑戦するのもいい経験になることと思います。
世界遺産の鉄道に乗ってみる
インドの鉄道の中で山岳部を走るダージリン・ヒマラヤ鉄道、ニルギリ山岳鉄道、カールカー・シムラー鉄道が「インドの山岳鉄道群」として世界文化遺産として登録されており、初期の山岳鉄道の面影を今に伝える重要な路線であると評価されています。
私が乗ったダージリン・ヒマラヤ鉄道は別名トイトレインと称され、山岳地帯をゆっくり進んでいくのんびりした路線で遠くにはヒマラヤ山脈を一望できる贅沢な列車です。
手を伸ばせば洗濯物に届きそうなくらい線路と軒先との距離が近くインド人の生活を間近に垣間見ることができます。
まとめ
長々と書いてきましたが、最低限の防犯意識を忘れずに持っていれば案外快適に移動できます。
最初は私も不安でしたが、インド人は悪い人ばかりではありません。むしろ親切で人間味がある人ばかりです。少しの警戒と度胸でインド旅は楽しい思い出となることでしょう。
また、インド旅をする上で鉄道に乗ることはインドの魅力を感じられる一つの手段だと私は思います。駅のホームの雑踏、大声を上げながらチャイを売る老人、サリーを纏って大きな荷物を抱えた女性、明らかに定員オーバーの車内、それぞれがインドらしさを表しています。
インド人にとって切っても切り離せない鉄道をあなたも体験してみませんか。