気分はインディ・ジョーンズ!遺跡を見ながら走るアンコールワットマラソンに参加してみた
先日開催された2018年の東京マラソンで、日本の設楽悠太選手が日本新記録でゴールをしました。いよいよ2020年の東京オリンピックが近づいてきたなとワクワクしてきます!
ホノルルマラソン、ボストンマラソン、東京マラソンと世界には有名な市民マラソンがたくさん。私は特別足が速いわけではないのですが、どちらかというと短距離走よりも長距離走の方が好きです。
一度千葉の海浜幕張のハーフマラソンに出場したことがありましたが、寒くて海風が強すぎて、もう二度と走らない!」と思いました……。
が、そんな私が誘われた勢いでベトナムから、カンボジアのアンコールワットで開催されるハーフマラソンに週末弾丸で参加してしまいました。
もう走らない!と思ってたのに…実はもう一回出場してもいいかな…って思っています!そう思えるくらい最高の体験ができました!
アンコールワット国際ハーフマラソンとは&エントリー方法
photo by pixta
アンコールワット国際ハーフマラソンは、カンボジアが乾季に入る12月のベストシーズンに開催されるレースです。
ハーフマラソン、10kmコース、3kmコースとあり、ハーフマラソンは世界遺産のアンコール・トム、アンコール遺跡群の特設コースを周回します。(アンコールワット内には入れません)
観光客が入る前の早朝からスタートするため、ランナーだけが朝日に染まっていくアンコールワットを独占できます。遺跡、そしてカンボジアの生い茂る草木の中を駆け抜けていく気分は、まるでインディ・ジョーンズです!
日本からは代理店を通して参加も可能ですが、私はベトナム在住のため代理店を通さずエントリーしました。(RUNNETという各地のランニングイベントが紹介されているサイトに、同大会の公式のホームページが掲載されます。)
アンコールワットって…?
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カンボジアといえば?という問いには、恐らくほとんどの人が「アンコールワット」と答えられる、カンボジアが誇る世界遺産です。
アンコールワットはカンボジアの北西部・シェムリアップという街の中にあり、1992年にユネスコの世界文化遺産に「アンコール遺跡群」として登録されました。(登録基準①②③④)しかし登録と同時に「遺産そのものが危機に瀕している」と「危機遺産」にも登録されました。
アンコールワットは12世紀前半にクメール王朝(アンコール王朝)のスールヤヴァルマン2世が、約30年の年月をかけて完成させたヒンドゥー教の寺院です。徐々に隣国のアユタヤ王朝(当時のタイ)が侵入をしてきたため、クメール王朝はこのアンコールワットを放棄します。
16世紀になると外国人の訪問が増え、1632年には森本右近太夫一房という日本人も訪れています。(寺院の中には漢字の落書きも残っています。誰が書いたかはわかりませんが…)
アンコールワットがジャングルの密林の中から、再び世の光を浴びるようになったのは19世紀。フランス人のアンリ・ムーオによって「世紀の大発見」として紹介されるようになりました。
1887年にカンボジアが仏領インドシナといてフランスの統治下に入ると、フランス極東学院がアンコール遺跡群の修復を開始するようになりました。
しかし1972年、カンボジアの内戦が始まると、ポル・ポトが率いる共産党一派のクメール・ルージュによって、アンコール・ワットは破壊され、仏像が首を刎ねられたりなどの被害を受けます。
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1979年にクメール・ルージュは政権を失いますが、あろうことかアンコール・ワット内に立てこもってしまいます。(城郭や堀があり、城郭のような作りだったため)攻める側としてもカンボジアが誇る文化遺産を大々的に攻撃するわけにもいかず、内部はさらに破壊されていきました。
内戦終了後は、周辺の地雷や破壊された建物の修復が各国の協力のもとに行われています。
世界中の協力によって、アンコール遺跡群は2004年に「危機遺産」の登録から外れます。しかし、私が学生時代にアンコール遺跡群を訪れた際も少し修復の作業をしており、内戦による被害と、また風雨による被害は予断を許さない状況に感じました。
アンコール遺跡群はカンボジアの光と闇を内包した、東南アジアの稀有な遺跡なのです。
実際に走ってみた!
photo by satomi
私がアンコールワット国際ハーフマラソンに出場したのは2015年でしたが、コースは大きく変わっていないと思います。前日にタイミングチップやゼッケンを受け取りに指定された場所へ向かうと、コースの確認ができました。
出場者全員の名前がリストに載って張り出されているので、自分の名前を見つけると、「いよいよ始まる!」とちょっとワクワクしてきます。
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スタート当日はまだ日が昇る前の、真っ暗な時にスタート地点に向かいます。夜明け前なのでタクシーは全く通りません。会場から離れたホテルに宿泊した場合は、輪をかけて交通量が少なくなります。
ホテルの人に頼んでおくか、または前日にトゥクトゥクなどを利用した際にドライバーに話をつけておくと、ホテルまで迎えに来てくれ、レースが終わるまで待っていてくれます。(観光地なので英語が通じます。名前と電話番号を交換して起き、終わったら電話をかけて合流します)
アンコールワットのシルエットが暁の空に姿を現すのと同じAM6:00、ハーフマラソンのレースはスタートします。
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コースの写真を見ていただくとわかりますが、実はスタートしてすぐにランナー達はアンコールワットに背を向けた状態で走ることになります。自動車が通れる道路なので走りやすいです。
ちなみに私はここで、早々にUターンしてきたマラソンカンボジア代表の猫ひろし選手とすれ違いました。(めっちゃ速かった……)
そしてUターン後、アンコールワットのお堀まで戻ってきた頃には太陽が高くなってきており、お堀の水面に朝日がキラキラ反射している光景は本当に美しいです。
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短い間隔で給水ポイントとバナナポイントがあるので、こまめに摂取することをお勧めします。太陽が上りきると、夜明け前は快適だった気温が一気に上り、ジワジワと汗が噴き出してきます。
個人的に最初にキツイなと思ったのは12kmすぎ頃でした。ただここからはコース上に素晴らしい遺跡が現れ始め、「あそこに見えている遺跡はなんだ⁉︎」と一つずつ遺跡を目標にしながら走ることができます。
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そして沿道に地元の子供達が出てきてくれて、笑顔で一生懸命応援してくれるのです……つい嬉しくてハイタッチしながら走ってしまいます。
そして、本当にきつかったのは象のテラス(Elephant Terrace)付近でした。今まで森の中を走ってきたようなものだったので、木陰に入ると風も吹き抜けて結構気持ちが良いんです。
しかし、象のテラスエリアは全く木陰がなく直射日光に当たるので、目の前に木陰ゾーンが見えているにもかかわらず果てしなく遠く感じました。
象のテラスを抜けるとラストの直線です!壮大なバイヨン寺院を左手にゴールに向かいましょう!制限時間は3時間ですが、途中歩いてしまった私も制限時間内にゴールできました!
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ゴールして完走メダルをもらった後は、一緒に参加した仲間、全然知らないけど無事にゴールできた外国人達と最高の笑顔で健闘を讃えあいました。(猫ひろし選手はこの大会2位でした)
途中暑くて辛くてホントもうやだ!って思いましたが、人間不思議なものでゴールした途端に楽しかった気持ちが大きすぎて、疲れを忘れてしまうんですね。
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帰りのトゥクトゥクに乗っている頃に、ようやくあちこち痛くなり始めます。急に誘われてほぼノリと勢いで出場しましたが、あの時思い切って出場する選択をして良かったと心から思える体験でした!
ちなみに走っている途中楽しくなってくるタイミングで、結構沿道にカメラを構えている人が現れます。(こういった遺跡をくぐり抜けた先によくいました)
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みんな立派なカメラを構えているので、大会のオフィシャルのカメラマンだろうと思ってその人の前を通る時は全力の笑顔でピースしながら走りました。
後日大会HPにアップされた「公式」の自分の写真は、ゴール付近で人には見せられない顔で走っている写真しかなく、彼らはただの趣味の方々とわかりました……。
最後まで皆さん(気を抜かず)笑顔で走りぬきましょう!
悠久の時を経て
photo by pixta
12世紀に建立され、一度は世の中から忘れ去られ、そして戦火に巻き込まれてきたアンコール遺跡群。その姿は悠久の時を経ても変わらない美しさです。
見るだけでももちろん大きな感動を得られますが、この遺跡群を「走る」とこの場所は特別な場所になります。内戦を乗り越えてくれたこと、そしてここまでこの遺跡を修復してくれたことに感謝の気持ちでいっぱいになります。
一味違った感動を味わいに、思い切ってランナーとしてアンコールワットを訪れてみるのはいかがでしょうか。