高さ10mの断崖絶壁を命綱なし!エチオピアにある辿り着くだけで困難な岩窟教会群とは?
ロッククライミングしないと辿り着けない教会群がエチオピアにありました。
Rock-hewn churches(岩窟教会)という英語のガイドブック(Lonely Planet)には文字情報のみ掲載されているものの、画像やビデオはなく、日本語情報もほとんどありません。
教会巡りでロッククライミングする羽目になるとは全く想像していませんでした。
photo by KM777
行き方
英語ガイド本によると、「公共交通機関で行けないこともない」そうですが、ミニバスの便はかなり少なく1日2日余計にかかると思われます。
私はエチオピア北部の街メケレ(Maleke)発の現地ツアーに参加しました。1泊2日(宿込み、参拝料込み、水・食事なし)で一人参加なら300ドル、2人参加なら計400ドルでした。
運行会社はアクスム(Aksum)のツアー会社だったので、アクスム(アフリカホテルの中にある代理店)で申し込めば割引交渉も可能かもしれません。
■コースはメケレ発の場合(アクスム発なら逆回り)
1日目 Makeleメケレ(地図の赤色部分)発、Howzenハウゼン(黄色)近郊の岩窟教会Abune Yamata等を見て、Howzen町中で宿泊。
2日目 DebreDamoデブレダモ教会(緑色)、Yehaイェハ寺院群(エメラルド色)経由Aksumアクスム(青色)着。
アブネ・ヤマタ教会
photo by KM777
メケレを出発したツアー車は、よく整備された道を快調に進みます。石積の家々や家畜をバックに広がる田園風景は素晴らしいです。
もし、エチオピア北部の5大観光地(アジスアベバ・アクスム・ラリベラ・ゴンダール・バハルダール)を飛行機だけで回るなら、このような車移動コースを組み込むとよいかもしれません。
photo by KM777
車で行けるところまで行って、ローカルガイドとともに歩き始めました。大きな木の下で横になっている男(チケット売り)から、入場チケットを買いガイドは言いました。
「あの山の上に教会がある」
少し先に見えるのは、断崖絶壁に近い山です。裏側に続く道でもあるのか、とそう思いながらついていきました。岩場をしばらく上っていくと、杖とサンダルがいくつかおいてあるところがありました。
何だろう、と思っていると、私にサンダルを脱ぐよう言います。傾斜70度くらいの岩肌を上っていくので、素足でないと危ないわけです。
photo by KM777
もうしばらく行くと、5人の地元民が座って休んでいました。見た目60歳近い高齢者もいます。
教会帰りで休んでいるのか、それともそこから先は険しいからここまで上って、あとは折り返す人たちなのかと思いました。
さにあらず。彼らは、参拝者のロッククライミングを助けるヘルパーでした。
手足をひっかけられる穴はあるものの、高さ10m、ほぼ80度くらいの絶壁です。若い修道士風の男は先頭にたって上り始めました。びっくりするほどひょいひょいと上がっていきます。
photo by KM777
私には、ヘルパーが2人つき、上から引っ張り上げたり、手足の置き場を指示します。ヘルメットも命綱もないのがびっくりでしたが、何とか壁を上り切りました。
ヘルプが指さすところを見ると、洞窟の中に骸骨が…転落事故死なのかここで生を全うした人の遺骨なのか、それを聞く余裕はありませんでした。
photo by KM777
登り切ったら、終わりでありませんでした。今度は、深い谷を眼下に見ながら岩肌にへばりつくよう回り込みます。
足を滑らせたら即死です。目の高さをコンドルが飛んでいて、高所恐怖症の方は絶対やめておいたほうがいいでしょう。
photo by KM777
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洞窟のような部分にたどり着くと、扉があり、修道士がカギを開けました。これが教会のようです。
自然の洞窟を利用して内部が礼拝所になっているます。教会は6世紀にできましたが、美しい天井の壁画は15世紀のものだそうです。
なぜこんな崖の上に教会を?
photo by KM777
頻出の質問のようで、ガイドは答えを用意していました。
1)俗世を離れた環境で修行に専念するため。
2)天に近く神聖な場所と考えられるため。
あえて俗世を離れて修行に励んだ高野山や比叡山の修行僧に通じるものがあると思いました。
ガイドによると、日曜日にはミサがここで行われ、近隣からは多くの人(老人含む)がこの断崖を上ってやってくるということです。
ダニエル・コルコル教会 マリアム・コルコル教会
photo by KM777
photo by KM777
バナナとパンでランチを取り、近くの別の岩窟教会に上ります。
アブネ教会よりも長く険しい道のりでしたが、手指を入れながらロッククライミングする必要はなく、ヘルパーも時々私の手を取るくらいでした。
Daniel Korkor教会から下界を見下ろすと(不謹慎ながら)神様になった気分です。Mariam Korkor教会はこの近辺では一番古く4世紀からあり、アクスムの「シオンのマリア教会」にあるといわれるアーク(契約の箱)の複製(レプリカ)が保管されているそうです。
Debre Damo デブレダモ修道院
photo by KM777
デブレダモ修道院は主要道路から離れた山道を車でさらに1時間くらい行ったところにあります。敵国=エリトリアの国境にほど近いため、兵士がたくさんパトロールしていました。
私たちの車は貸し切りのツアー車でしたが、運転手が「乗せてあげていいか」というのでOKしました。すると、7-8人の兵士が乗り込んできました。
乗せてくれる車がない日は20kmくらい歩くこともあるそうです。ライフルや地雷探知の機材を持っています。
photo by KM777
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デブレダモは上り始めて間もなく絶壁の岩に達します。遠目からも、勝負ポイントがはっきりわかる巨大な絶壁で、高さにして20mくらいでしょうか。
いくら修行目的云々だとしても、なんでもなんだってこんな崖の上に修道院を作ってしまうのでしょうか。
グッドニュースとしては、こちらには命綱がありました。地元の人たちは命綱なしで上っていましたが、白い命綱を腰に巻き付けるところまで、ヘルパーが手伝ってくれます。
藁のロープを手繰りながら上に登るのですが、腕力がないせいかなかなか登れません。
ヘルパーは上にも待機していて、命綱を引っ張り上げてくれます。だいぶ助けてもらい、何とか崖の上までたどり着きました。ヘルプのチップは50ブルでした。
崖の上の教会は、外壁の丁寧な石積みとレンガ・木の調和ががシックで美しく、わざわざここまで来てよかったという報われた気分になります。