南部アフリカをしばらく旅していた私には、どうしても立ち寄りたい国がありました。その国の名はレソト。今回ご紹介する国です。

南アフリカ共和国にぐるっと周囲を囲まれた小さな国。レソトを知る人々の間では「天空の王国」と呼ばれ、一番低い地域の標高でも1400mもある山岳地帯なんです。

写真で見たレソトには美しい山々に、小さな円形の面白い形をした昔ながらのお家。民族衣装として特徴的な帽子と毛布を体に纏った人々が、かっこよく優しく写っています。ダメだ、気になる。これは行かないと、と思い訪れてみました。

 

聞いたことありませんが、レソトっていったいどこにある?

photo by Tomoya Yamauchi

さてみなさんはレソトという国名自体聞かれたことありますか?私自身南部アフリカに来るまで、その存在さえ知りませんでした。レソトは、その周囲を南アフリカに囲まれた小さな内陸国です。こんな場所にひっそりと存在しています。

国土の標高は一番低い場所でも1400m以上もあり、平地は南アフリカとの西側国境沿いに少しあるのみで、他のエリアには山岳地帯が広がっています。レソトに入国するには、南アフリカ共和国から国境を越えて入国するのが一般的です。首都のヨハネスブルグやブルームフォンティンからはバスが出ています。

アフリカで最も経済発展を遂げている南アフリカ共和国。そこからレソトに到着すると、経済発展とは無縁の平穏でのんびりとした空気が流れていました。入国審査もすごく簡単でした。

「どこから来たの?何日間滞在したいの?」

「3週間あれば十分です」

「じゃあ1ヵ月間の滞在許可にしとくわね。この日までに出国してね」

これだけのやり取りでスタンプが押されて終わり。こんなに簡単でいいの?

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ちなみに、これがレソトの国旗。青色が空と雨、白が平和、緑は豊かな国土と繁栄を意味するそうです。真ん中のシンボルは、レソトの伝統的な帽子です。レソトに住む大多数の人々はソト族の人々。

レソト人のことを単数形でモソト、複数形でバソトと呼びます。だからレソト人達のかぶる帽子ということでバソトハットです。



photo by Tomoya Yamauchi

ちなみにバソトハットを被ると、こんな感じです。

レソトでは、ほとんどの人が英語を流暢に話すのでコミュニケーションには困りませんでした。イギリスの植民地でもあった歴史があるので、母国語であるソト語と英語の両方が公用語とされています。

さてそんなレソトには、どんな人々がどんな暮らしをしているのでしょうか?

 

シャイだけどフレンドリーなレソトの人々

photo by Tomoya Yamauchi

レソトの人々は最初は少しシャイに思えますが、実はとってもフレンドリーな人々です。でも押しが強すぎるということはなくて、心地よい距離感があります。

例えば、通りを歩いていると向こうから声をかけてくるということはあまりないのですが、思い切ってこちらから声をかけると彼らの好奇心が爆発します。

「どこから来たの?」「何をしにレソトに来たの?」「レソトは好きですか?」「レソトのご飯はおいしいですか?」「チャイナ!チャイナ!ジャッキーチェンだ!」

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ジャッキーチェンと私を勘違いする彼らですが、彼らに中国人と日本人の区別ができるはずもありません。そして後で気づいたのですが、レソトには意外と多くの中国人が住んでいるのです。彼らは主にレソトで卸売業をやっていて、そこそこ大きなショップのオーナーはほとんどが中国人の方々でした。

だからレソトの人はアジア系の人を見ると、とりあえず中国人だと思います。一部の人以外は日本がどこにあるかも知りませんし、中国と日本の違いも曖昧で、「日本って中国の一部じゃなかったの?」こんな感じです。

まあ、日本はアフリカから離れた遠い遠い国ですしね。そうですよね。日本人で、一体何人の人がレソトという国を知っているのか。



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ちなみにこちらがレソトの伝統衣装です。写真のように毛布をぐるっと体に巻き付けるのがレソト流。かっこよくて、滞在中思わず毛布を購入しそうになりました。

 

レソトの伝統的なお家と食事



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そんなレソトの人々が住む伝統的な家は、独特のかわいらしい形をしています。田舎の村々に住む人々は、円形に石やレンガを積み上げた萱葺き屋根の家に住んでいます。外壁の石と石の隙間を埋めるように泥を塗りつけて防寒対策している家もあります。

夏の暑い日でも家の中に入ると、ひんやりしていて快適。それにしても形がかわいらしくて好きなんです。



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そして、レソトの人々に欠かせない食べ物がパパ。パパはトウモロコシの粉を沸騰したお湯に入れて、モチモチになるまでかき混ぜながら煮て作ります。焦げやすいので、焦がさないように注意が必要です。

レソトでパパは、日本人にとってのお米のような存在です。味はあまりありませんが、ふわふわモチモチした食感がたまりません。

そしてこのパパとモロホと呼ばれるキャベツや青菜の千切りを調味料と油でふにゃっとするまで炒めたものを一緒に手づかみで食べます。これにお肉がつくとご馳走です。



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町では焼き鳥やソーセージなどを販売する屋台もあります。シンプルですが炭火焼でおいしかったです。

 

さて国土のほとんどが山岳地帯のレソトなので、数々の絶景スポットも存在します。今回はその中でもマレアレアとセモンコンを紹介します。

 

楽園へのゲート マレアレア

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マフェテンに滞在していたある日、滞在先NGOのメンバーで旅行をしよう!ということに。そこでスタッフおすすめの場所がマレアレア。首都マセルからマレアレアまでは80kmで車で2時間程の距離です。のーんびりアフリカの風を感じながら、車の荷台の後ろに乗って行ってきました。

レソトの田舎道の風景。美しい山々を背景にぽつぽつと円形の伝統家屋がならび、家畜を放牧したり農作業をする、伝統衣装の毛布を纏った人々が時々目に飛び込んできます。

マレアレア村の入り口まで来ると、「Gate of Paradaise」というサインを発見。楽園への門だって!?ちょっと大げさだけど楽しみです。そして、最後の急斜面を登り視界が広がります。



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青い空はどこまでも広く、のどかな風景と背景の山々は美しく、確かに楽園と呼べるかもしれないです。マレアレア村の入り口までは道路が舗装してありますが、そのあとは未舗装。道路もでこぼこなので2輪駆動でも大丈夫ですが、4輪駆動の車だとより安心だと思います。



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そしてさらに奥地に美しい滝もあります。訪れた時期は1月末。雨期の始まりでまだ少し水量が少ないですが、美しく神秘的な場所でした。時期が違うともっと水量があるのかもしれません。

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滝つぼで泳いだり水浴びした後は、日光浴でリラックス。子どもたちもおおはしゃぎでした。でも意外なことにレソトの人も子どもたちも泳ぎ方を知りません。私が泳いでいると、驚いていました。こんなに雄大な自然があるのになぜでしょう?

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アフリカ南部で最大の落差がある滝を目指してセモンコン村へ

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セモンコンにはアフリカ南部で最大の落差があるマレツニャーネ滝があり、セモンコン村からハイキングで訪れることができます。山岳地帯のレソトに来たからには自然の中でキャンプもやってみたいということで、食料を買い込み早速車でセモンコンへ向かいました。

セモンコンへ行くまでも道は舗装されており、2輪駆動の車でも安心して走ることができます。ただ途中で道路に突然穴が空いていることもあるので常に注意が必要。マセルからセモンコンまでは110kmほどの距離で、2時間30分ぐらいで到着します。

 

道中には地元ヒッチハイカーも見かけます。公共交通機関があまり発達していないので、ヒッチハイクも普通に行われているようです。どうやら一緒の方向に行くようなのでピックアップしてあげました。狭いですがどうぞ!

おばちゃん達を乗せてまたのどかな景色の中を走っていきます。セモンコン村までのドライブは絶景続きです。おばちゃん達、急いでたらごめんね。でも景色がきれいだから写真撮りたいんです。

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セモンコン村には「セモンコンロッジ」というレストラン付きの宿泊施設があり、ここで宿泊やキャンプもできます。ガイド付きのトレッキング、ポニートレッキングやマレツァ―ネ滝口からアブセイリングなどのアクティビティも予約できます。

ただ今回やりたかったのは滝が見える場所でキャンプすることだったので、ここには宿泊しませんでした。宿泊施設の駐車場は宿泊者以外使えないので、村人に頼んで家の近くに車を駐車させてもらうことにしました。

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宿泊施設である「セモンコンロッジ」からマレツァーネ滝が見える場所までは徒歩で2時間もかからないとのこと。道中に出会う村人たちと挨拶をかわしながら、絶景ポイントを目指します。

滝までのトレッキングでは、ただ景色を楽しむだけでなく、この地域に暮らす人々の暮らしも垣間見ることができます。馬やロバに乗って村々を行き交う人々、放牧されている家畜、農業をしている村人に出会ったり、家の近くで遊んでいる子どもたちがいたり。

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巨大な渓谷が見えてくると、マレツァ―ネ滝まではもう少しです。落差は200mもあり、南部アフリカでは最大の落差がある滝だそうです。グォーっと音を立てながら、しぶきをあげて流れ落ちる滝は、レソトの雄大な自然の美しさを感じさせ、まさに絶景です。

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今夜はここでキャンプ。乾いた木を集めて、キャンプファイヤー。お湯を沸かしてお茶を飲んで、ご飯食べてといい感じ。でしたが、実はキャンプしたこの時期(1月末)は雨期。この日の夜は数時間の間強い雨が降り、雷鳴がとどろき、稲光が至る所に。

稲光はドーン!という大きな音と共に、淡い紫に近い色の光を放ち、時にはいくつも同時に発生し、とても幻想的な風景でした。まさに雨期でしか経験できない体験でした。

 

レソトで学校訪問してみたら、元気な子どもに囲まれて

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レソト滞在中にたまたまですが、レソトの伝統的な遊びを取材している友人に出会いました。レソトをより深く知る絶好のチャンス、そして何より面白そうなので、私も手伝うことにしました。レソト中の学校に連絡し時間をいただき、伝統的なダンスや遊びを紹介してもらえることになりました。

学校を訪れると、子どもたちは大はしゃぎ。突然の外国人の訪問に興奮を隠せません。そして「ありがとう」という日本語を教えると、気に入ったのか「ありがとう」の大合唱がスタートし止まらない。すごいパワーです。

 

様々なレソトの遊びを紹介していただきましたが、日本でも馴染みのある遊びもあります。例えば日本の将棋や、大なわとびに似た遊びは定番です。違うのは全て手作りだということ。

なわとび用の縄はその辺の草むらに行って、数分で手作り。レソト風将棋の駒だって、形や色の違う石を集めて駒に変えてしまいます。

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モヒボやリトロボニャというダンスも披露していただきました。伝統的には独立の日や王様の誕生日などといった、めでたい日をお祝いするときに踊るダンスだとか。リズムに合わせて腰を振って踊り、途中でピピピーっと高音の口笛を鳴らしたりして楽しくて、盛り上がるダンスです。

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田舎の学校に行った時ですが、同じダンスを高校生ぐらいの女の子たちが上半身裸で、腰蓑だけつけてパフォーマンスしてくれました。正直カルチャーショックでかなりびっくりしましたが、レソトでは別に普通のことのようで女の子たちも恥ずかしがる様子もなく堂々と踊っていました。

 

おわりに

レソトは小さな国ですが魅力がたくさんつまった国です。山々の風景は美しく、標高の高いレソトでは空がずっと青く、より近く感じます。しばらく滞在していても一切の危険も感じず、平和で治安のよい国だと感じました。

小さい国なので、誰もが誰もを知っているような良いコミュニティがあります。町でも次々に知り合いと出会って長く話し込んでいる光景をよく見かけました。それが治安の良さに関係しているのかもしれません。

みなさんも素朴で優しいレソトの人々に会いに、美しい風景を見にレソトを訪れてみてください。

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